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2007年2月25日 (日)

忙しさが加速する春闘期

「安倍内閣の閣僚は首相に対する尊敬の念がない」と苦言を呈していた森元首相ですが、「安倍さんも人がいいから、素直な“子”なんです」と発言しているご自身の姿がテレビに映し出されていました。自民党の中川幹事長の「忠誠心」発言など、どうも自分を「格上」に見せたがる政治家が多いようです。

そう言えば、石原都知事は「小泉君」と総理大臣をよく君付けしていました。少し話は横道にそれますが、不特定多数の方が閲覧できるブログは公衆の場だと考えています。そのため、政治家のような公人へ批判的な内容を書き込む時も、必ず肩書や敬称を付けるようにしています。相反する考えの方々と真摯な議論を交わすためにも、言葉使いによって不愉快に思われないよう注意してきました。

さて、専従ではない組合役員は二足のワラジをはいているようなものです。組合役員それぞれが職場の仕事を懸命に遂行しながら組合の任務を全うしていくため、より集中力を高め、さらにプライベートな時間も割きながら四苦八苦しています。

私自身、限られた時間を有効に使うため、いろいろ心がけている点があります。朝、突然の渋滞などで遅刻しないよう余裕を持った時間に出勤しています。したがって、8時頃から毎朝約30分間、組合事務所で雑務の整理にあたっています。

昼休みも組合業務をこなす貴重な時間ですが、1分遅くなるだけで職員食堂の行列が極端に長くなります。そのため、できる限り正午のチャイムと同時に食堂へ向かわせてもらっています。担当者自身の段取りで仕事を区切れない窓口業務の方たちには「申し訳ないな」と思いながらも、足早に食堂へ急ぐ日が少なくありません。

委員長になる前は書記長を務めていました。委員長の方が書記長より当然責任は重く、対外的な付き合いの範囲も広がっています。たいへんさの質が明らかに異なりますが、率直なところ時間的な追い立てられ方は書記長時代の方が厳しかったように感じています。委員長職が余裕だと言う訳ではありませんが、離れてみると書記長の職責の重要さを改めて痛感しています。

書記長職は組合運営の実務全般に対する総責任者であり、各職場課題すべてを基本的に把握すべき立場でもあり、サッカーで言えばボランチの役割を求められています。このような重責を担っている現書記長のたいへんさが実感できるため、その労苦に頭が下がりながらも檄を飛ばしがちな自分でした。

とにかく組合役員を務めていると日常的に忙しいようなものですが、この時期、多忙さが特に加速していきます。春闘が本格化する時期であり、民間の組合では新しい年度の賃金水準を左右する闘争の季節となっています。昨年の記事「公務員組合の春闘」のとおり公務員の賃金は春闘期に決まる訳ではありませんが、中央段階では人事院や総務省との交渉が行なわれます。

また、私どもの市の様々な労使課題の決着に向けて、この時期に大きな山場を迎えていきます。職員数の増減や諸制度の見直しなど、いずれも新年度に向け、一定の判断が迫られます。課題によっては3月末ぎりぎりまで協議する場合もありますが、例年、3月上旬を決着する目途としています。

組合要求が実現できるのか、当局提案を受け入れるのか、この時期に労使交渉や組合員との懇談会などが連日行なわれます。その一方、春闘にかかわる各種集会や諸行動も立て込む時期であり、どんどん単組役員の手帳が真っ黒になります。連合や自治労などそれぞれ主催者は別ですが、要請を受ける単組の窓口は一つである悩ましさがあります。

月曜は人事当局交渉、火曜は職場懇談会と教育委員会当局交渉、水曜は連合地区協幹事会と春闘イベント、金曜は自治労都本部の集会、土曜は連合の中央集会…、3月上旬まで手帳の夕方覧は何らかの予定で埋まっていきます。

先週金曜日には連合三多摩の春闘集会があり、連合本部の笹森清前会長の講演を聞くことができました。笹森前会長は「戦後のGHQによる民主化政策は、憲法や教育基本法の制定より先に労働組合法、労働関係調整法、労働基準法を手がけた」とし、労働政策が重要視されてきた歴史の面から話を切り出されていました。

それが現在、アメリカ政府からの「年次改革要望書」にそって労働法制面での規制緩和を進め、外資が雇用しやすい労使関係に改められようとしていると訴えています。今回の記事は講演内容がメインではありませんので、概略にとどめさせていただきますが、このように春闘集会への参加そのものは貴重な機会だったと思っています。

これから予定されている春闘集会も一つ一つが重要であり、意義深いものだろうと受けとめています。したがって、一人でも多くの方の参加が得られるよう広く組合員の皆さんにも呼びかけています。いずれにしても在宅介護の問題が他人事ではなくなった今、例年以上に正直ためいきが出るハードな春闘期を迎えています。

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2007年2月17日 (土)

「非正規」職員から参議院へ

企業利益のうち人件費に回される割合を示す「労働分配率」は、1997年度に66.0%だったのが2005年度には59.8%まで落ち込んでいます。「いざなぎ」景気超えが実感できない大きな理由として、このような賃金抑制による個人消費の伸び悩みなどがあげられています。

2007年春闘はトヨタ自動車労組が昨年より500円上積みした1500円の実質的なベースアップを要求するなど、労働者への配分増を強く訴える組合が増えています。それに対する経営側は「業界一律の賃上げはあり得ない」「設備投資が優先」と抗弁し、例年以上に激しい労使の攻防が見込まれています。

春闘が本格化する一方、この時期に連合本部の高木剛会長と古賀伸明事務局長は東京を離れ、精力的に各県の地方連合会を回っています。今年7月22日の参議院議員選挙に向け、連合は民主党の小沢一郎代表の1人区全国行脚に協力することを合意しています。29ある改選数1の選挙区のうち25の選挙区入りに際し、連合側から必ず高木会長か古賀事務局長が同行する予定です。

前原誠司前代表は「脱労組依存」を掲げましたが、小沢代表は昨年4月の就任後から連合との関係修復に努めています。この小沢代表の1人区行脚に連合会長らが同行することにより、民主党と連合との緊密な支持協力関係を各県の連合組合員へアピールする狙いがあるようです。

この取り組みに対して、民主党内から「労組べったりのイメージがつくと無党派層が逃げるのではないか」と批判する声が上がっています。どのような組織にも執行部の方針と異なる意見や考え方を持つ人たちがいるのは当然であり、そのことを認め合った上で真摯な議論を交わしていけることが健全な組織の姿だと思っています。

しかし、自分たちが選んだリーダーの足を引っ張る批判意見は、できる限りマスコミなど外部に漏れないよう注意する必要があります。その意味で、今の安倍内閣のタガの緩み方は非常にお粗末であり、ぜひ、民主党はそのことを反面教師として学んでいただきたいものです。

とは言え、民主党議員からそのような声が出る背景も見過ごせません。つまり連合との関係をネガティブな「しがらみ」ととらえ、労組を重視する小沢代表の姿勢に不満を持つ議員が多いことは確かです。労組と距離を置こうとする民主党議員は、労組の声イコール特定の利益集団の声とみなし、その声を聞きすぎると無党派層が離れていくものと見ているようです。

また、連合の組合員数は約700万人ですが、3年前の参議院比例選での連合組織内候補の得票は173万票にとどまりました。加えて労組の推定組織率は2006年に18.6%となり、31年連続で低下しています。このように労働組合の社会的影響力は年々弱まっているため、あまり労組に頼ってもプラスではないと考えているようです。

残念ながら否めない現状もありますが、それでも労働者の数が国民の約半数を占めていることに変わりありません。したがって、率直な労働者の声を政治へ反映する重要性は今も昔も変わらないはずです。そのように考えれば、民主党は労働組合と緊密なパイプを持っている貴重さを堂々と宣伝材料にすべきだろうと思っています。

同時に労組側はきめ細かい日常活動を通し、組合員から「政治方針」への信頼を高めながら結束していくことが重要です。さらに組合員以外の未組織労働者や「非正規」労働者の声も代弁できる運動をめざし、その声も合わせて政治の場へ届けることが既存労組の責務だと考えています。

そのような情勢や問題意識を踏まえ、労働組合の代表を直接国会の場へ送り出す意義ははかり知れません。この7月の参議院選挙に向けては、民主党比例代表区に連合組織内候補として8名が擁立される見込みです。そのうちの一人が自治労のあいはらくみこさんです。

あいはらさんは札幌市役所の元国民年金員で、非常勤職員いわゆる「非正規」職員でした。小柄な体からあふれ出る持ち前のバイタリティーで、あいはらさんは非常勤職員の待遇改善に向けた運動を牽引してきました。その間、札幌市役所や北海道本部の役員を経験し、2003年9月から自治労本部の組織局次長を務めています。

参議院選の組織内候補の話が出た時、たいへん悩まれたとお聞きしましたが、今は元気に全国を飛び回られています。夕張市をはじめ疲弊した地方の実情、国主導で進められた市町村合併による弊害、様々な面で圧迫されている自治体職場の実態など、あいはらさんの産地直送ブログから「何とかしなければ」の熱い思いが伝わってきます。

あいはらさんの主張の第一は「すべての労働者に公正労働基準の確立」です。「非正規」職員だったあいはらさんの訴えだからこそ、より切実で重みのある言葉となっています。何としても国会の場で、あいはらさんの声を直接、安倍首相(退任していなければ…?)に聞かせる時が来ることを願っています。

かつては産別労組幹部が政治家へ転身することが多かったようですが、組織内候補の選び方も様変わりしたように感じています。各組合がキャリアや年齢などを問わず、資質や適性を重視し、国政にとっても有用な人材を送り出そうとしています。とりわけ「非正規」労働者の待遇改善も運動の大きな柱としている自治労は、その決意の表れとして、あいはらくみこさんを組織内候補へ擁立したものと受けとめています。

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2007年2月12日 (月)

八代尚宏教授の発言 Part2

柳沢厚生労働大臣の辞任を求めて審議拒否を続けてきた野党が先週水曜、一週間ぶりに国会審議へ復帰しました。その日に開かれた衆院予算委員会は少子化問題に関する集中審議となり、当然、野党の各質問者は柳沢大臣の「女性は子どもを産む機械」発言の問題性を追及しました。

柳沢大臣の米つきバッタのように頭を下げる場面がテレビ映像で流れ、マスコミ報道からは予算委員会の質疑がその問題ばかりに費やしている印象を与えています。そのため、「野党は言葉尻をとらえた質問ばかり繰り返している」「もっと財政再建や外交問題など重要な議論をすべきなのに歳費の無駄使いである」との声も聞こえていました。

しかし、このような声が出るのは話題性重視のニュース作りに偏っている今のマスコミの責任だと感じています。野党の各質問者の持ち時間は1時間から2時間もあります。その持ち時間の中で、柳沢発言に言及するのは当然であり、逆に触れない方が不自然だと思います。

また、決して野党の質問が柳沢発言の問題ばかりに終始していた訳ではありません。便利な時代になっているため、テレビや新聞からの情報に頼らずともインターネットから様々な事実を知ることができます。参考までに国会審議は衆議院TVで質疑内容すべてを見聞することが可能となっています。

衆議院TVまで見なくてもインターネットを通し、野党のトップバッターだった民主党の枝野幸男議員の質問内容が話題になっていることを知りました。YouTubeによって、鋭い切り口で枝野議員が安倍首相や柳沢大臣らを追及している映像も見ることができます。また、枝野議員の質疑は有名な「きっこの日記」や「カナダde日本語」でも取り上げられていました。

枝野議員は行政指導を受けたキヤノンの偽装請負問題に触れた上で、御手洗富士夫キヤノン会長の参考人招致を要求しました。御手洗会長は日本経団連の会長であり、政府の経済財政諮問会議の民間議員も務めています。御手洗会長は経済財政諮問会議の場で、請負法制について「無理がありすぎる」などと現行制度の緩和を求めていました。

「自分の足元で違法行為をしているのに、違法行為が合法となるように何とかしてくださいと言うのは無茶苦茶だ」と予算委員会の中で枝野議員は批判しています。さらに「国際競争力を高めるため」と言いながら労働者の待遇を抑制し、その一方で、キヤノンの役員賞与を数年間で1億3千9百万円から2億2千万円まで引き上げている「モラルのなさ」を指摘しています。

このような人物が経済財政諮問会議の議員である点を枝野議員は安倍首相にただしましたが、質問のポイントを理解していないような意味不明瞭な答弁にとどまっています。いずれにしても経済財政諮問会議が提唱している「労働ビッグバン」は、御手洗会長の事例からも財界の論理が色濃く反映されていることは明らかだと思っています。

ちなみに経済財政諮問会議の民間議員はわずか4名です。御手洗会長の他、伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長、東京大学大学院経済学研究科の伊藤隆敏教授、もう一人が前回記事で取り上げた八代尚宏教授です。したがって、ホワイトカラーエグゼンプション労働契約法の法案化など、八代教授の考え方が強く打ち出されていることは確かです。

前回記事へのコメントで八代教授に対して、hammer69_85さんから「御用学者そのもの」、WontBeLongさんからは「社会科学系学者にありがちな、自分の思いこみを正当化するためにあれこれと理屈をこねまわす人」との見方を伝えていただきました。一方で、ニン麻呂さんからは「労働組合に所属していない大多数の労働者の利益も含めた長期的に望ましい労働市場のあり方を考えていくべき」との八代教授の発言を支持したコメントも寄せられました。

確かに八代教授の発想を全面的に肯定していくのは大きな問題だと思っていますが、頭から否定できない大事な提起を含んでいるものと受けとめています。率直なところ「過労死は自己管理の問題」と発言した人材派遣会社ザ・アールの奥谷禮子社長とは同列に扱えない気がしています。なお、この奥谷発言も水曜の予算委員会で民主党の川内博史議員が取り上げ、改めて注目された問題でした。

「正規」と「非正規」労働者の関係性について、八代教授の問題意識を端的に整理してみます。人件費縮減を主眼に増やしてきた「非正規」労働者を全員「正規」の待遇に改めるのは非現実的、限られた経費の中で「均等待遇」原則を実現するためには「正規」の待遇を切り下げる必要性がある、と主張しています。

その手法を実行するためには労働組合の抵抗や既存の労働法制が障壁になっている、また、雇用の流動化によって多様な働き方の選択肢が広がることは労働者にとっても好ましいことである、との持論を常々展開しているようです。

1年ほど前、当ブログへのコメント欄で八代教授の著書「雇用改革の時代」をご紹介いただき、すぐ手に入れ目を通していました。最近、八代教授が注目を浴びるようになったため、探し出して手元に置きパラパラと頁をめくっています。1999年12月に発刊された著書ですが、八代教授の主張は現在に至るまで一貫している点がよく分かります。

雇用の規制緩和などの是非は置いた上で、日本的雇用慣行の分析などに関して感心した覚えがありました。企業が労働者の長期雇用を保障するのは温情ではなく、企業の教育訓練投資の成果である熟練労働者を重視したものであり、年功賃金と退職金制度は熟練労働者を企業に縛りつける仕組みであると述べていました。

八代教授は日本的雇用慣行の担ってきた役割を一定評価した上で、時代状況の変化からその見直しも必要であると訴えていました。要するに「雇用改革」であり、現在の政府の施策となっている「労働ビッグバン」につながっています。

例えば経済財政諮問会議の中で、八代教授は「派遣労働者の固定化防止のために派遣期間3年の制限が必要であると言うが、その企業でもっと働きたいと思う人が法律によってクビを切られることになる」と発言しています。この発言一つとっても短絡的に判断できるものではなく、頭から否定できない問題提起を含んでいるものと感じています。

賛否が分かれる八代教授の主張に対し、「非正規」労働者の待遇改善に向けた思いは共通する課題だと言い切れます。その上で、労働者側の原則的な要求は「非正規」をより「正規」の待遇に近づける方針であることが重要です。安易にその逆を容認する姿勢を見せた場合、一気に労働者全体の待遇が切り下げられる恐れもあるはずです。違法な「偽装請負」を放置しながらも、役員賞与が2億円を超すキヤノンの例が象徴的は話ではないでしょうか。

このテーマは様々な切り口があり、結論的なまとめは簡単にできません。雑ぱくな記事を長々と綴ってきましたが、最近、耳にした組合員の声を最後にご紹介します。私どもの市役所でも特殊勤務手当の見直しを進めていますが、ある保育士から「保育手当は廃止で結構だから臨時職員保育士の賃金を上げて」との声が印象深く残っています。

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2007年2月 4日 (日)

八代尚宏教授の発言

「女性は産む機械、装置の数は決まっているから、後は一人頭で頑張ってもらうしかない」と発言した柳沢伯夫厚生労働大臣。女性を機械に例えた非常識さ、少子化の問題を個々の女性の生き方へ責任転嫁した不見識さ、少子化対策に責任を持つ厚生労働大臣としては弁明の余地がない致命的な失言でした。

野党が柳沢大臣の辞任を強く求めるのは至極当然なことだと見ていました。しかし、柳沢大臣が辞めるまで一切の国会審議に応じない戦術には正直違和感があります。もともと絶対多数を占めている与党の横暴に対抗するため、局面によっては審議拒否の戦術も必要だと考えています。

今回がその局面だったかどうか、各野党の責任者が判断する問題ですが、個人的にはミスリードの戦術行使だったと感じています。大半の国民が柳沢発言に反発し、与党の中にも公然と批判する声が強まっていました。したがって、国会審議の場を通して不信任決議案などを突き付けた方が、より与党側を揺さぶれたものと思っています。

結果的に柳沢大臣の罷免が実現しなかったとしても、悪役は一貫して柳沢大臣であり、必死に守り通した与党側、ひいては最高責任者の安倍首相となる構図を刻みつけることができたはずです。それにもかかわらず審議拒否戦術を取ったことにより、わざわざ与党側から「職場放棄」と反撃されるスキを与えてしまいました。

さらに権力側になびきたい大手マスコミは、ここぞとばかりに「政権をめざす党」の看板が泣くなどと批判の矛先を野党側へ向けてきました。同様に「審議拒否はけしからん!」と国民の中からも野党の戦術を非難する声が上がり始めています。挙句の果てに愛知県知事選挙と北九州市長選挙の結果が柳沢発言の決着の行方を左右すると言われていますが、そのような話では決してないはずですが…。

さて、記事タイトルと異なる内容を普段以上に長々と書き込んできました。いっそのこと前置きは別タイトルの記事にしようかとも考えましたが、このまま強引な「発言」つながりで続けさせていただきます。

前回記事「問題が多い労働契約法」のコメント欄で、島根県益田市議のニン麻呂さんからたいへん貴重な問題提起を受けています。ニン麻呂さんのブログ「地方議員の本音」は公契約のあり方など非常に勉強になることが多く、更新のたびに読ませていただいています。前回のコメント内容も幅広い提起を含んでいましたが、改めて自問自答する意味合いから今回の記事内容へつなげてみました。

ここで、ようやく今回の記事タイトルにある八代尚宏教授を紹介します。八代教授は国際基督大学教養学部で教鞭をとり、経済財政諮問会議の民間議員として労働市場改革専門調査会の会長を務めています。以前から労働市場の改革を唱え、労働ビッグバンの強力な推進役と見られています。

最近、八代教授の発言を新聞や雑誌などで目にする機会が急増しています。その大胆な発言は物議をかもし、特に労働組合側が強い反発を示しています。「正社員の待遇を非正規社員の水準へ合わせるべき」「非正規社員の雇用が不安定なのは、正社員が過度に守られている裏返し」など、このような端的な言葉に接すれば労働組合側が憤るのも当然です。とは言いながらも、それらの発言に至った八代教授の真意を理解するためには、もう少し詳しい発言内容の紹介が必要かも知れません。

正社員と非正規社員の格差是正のため、1600万人の非正規社員を全員正社員にすることは非現実的である。低成長の上、国際競争力にさらされた企業が総人件費を抑制している中、「同一労働同一賃金」の達成のためには正規と非正規の待遇を双方からすり寄せることが必要である。非正規なりの雇用安定を図る策を考えていくべきである。

つまり八代教授の主張はワークシェアリングの発想であり、前回記事で紹介したオランダの改革に相通じるものが見受けられます。また、八代教授は「労働組合に所属していない大多数の労働者の利益も含めた長期的に望ましい労働市場のあり方を考えていくべき」と述べられています。

このように紹介していくと八代教授の発言は真っ当なものであり、反発する労働組合側が問題だと思われる方が少なくないかも知れません。しかし、一方で「儲け主義の財界の論理に偏っている」との批判や「労働は市場原理に任せるべき」との八代教授の主張に対して「労働は商品ではない」と非難する声が増えていることも事実です。

八代教授の主張に対し、私自身がどう考えているのか、問われることも覚悟しています。「自問自答中」の答えが適当なのかも知れませんが、とにかく正規の待遇を非正規の水準へ切り下げる話は論外だと言い切れます。それこそ経営者側を喜ばす愚挙であり、実は八代教授の発言もそこまで極端ではなかったものと受けとめています。

要するに「双方からのすり寄せ」の度合いが非常に重要だろうと考えています。当然、その「すり寄せ」に際しては、労働者の声を代弁する労働組合との合意形成を絶対欠かせない条件としなければなりません。いずれにしてもニン麻呂さんの提起に対し、明確なお答えを出し切れていませんが、これからも真摯に「自問自答」していく必要がある大事なテーマだと言えます。

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