ソニーを破壊した成果主義
仕事帰りのある日、夕食をとろうと市役所近くの中華料理店に立ち寄りました。すると前任の人事課長にバッタリ会い、同じテーブルで四方山話を交わすことになりました。大方の自治体労使の事務折衝窓口は人事課長と書記長の役割です。
委員長になる前、書記長を5年間担っていました。そのうちの4年半、その課長と労使それぞれの窓口として頻繁に顔を合わせてきました。労働条件の変更は団体交渉での決定が基本です。団体交渉を開く際、事前に事務折衝で議題の設定や進め方を整理しています。そのため、事務折衝は団体交渉より格段に数多く行なわれることになります。
基本的に一対一による事務折衝は、労使課題の結論を出す場ではありません。しかしながら交渉のテーブルに載せる以前に押し返すべき事項、交渉の議題としないで執行委員会へ持ち帰り判断できる事項の見きわめなど、労使協議を円滑に進めるためにも事務折衝の場は非常に重要でした。
書記長時代、その課長とはお互い緊張関係を保ちながら切磋琢磨してきた間柄でした。その日、食べながら雑談する中、ソニーの元常務が『文藝春秋』に成果主義の問題点を書いた記事が出ていることを教わりました。現在は広報を担当している課長ですが、やはり前の役職が長かったため、このような記事に自然と目が行くようでした。
その夜のうちに書店へ立ち寄り、さっそく私も月刊『文藝春秋』新年特別号を購入しました。家に帰り、その頁を開くと「元常務がつづる危機の本質 成果主義がソニーを破壊した 偉大な創業者、井深大の理想はなぜ潰えたのか?」の見出しが目に入りました。
ソニーの元上席常務で現在作家である天外伺朗さんは工学博士の肩書もあり、CDやロボット犬AIBOなどを開発してきた方です。無我夢中で何かを取り組んでいる時の精神状態を心理学で「フロー状態」と呼ぶそうです。天外さんはその状態に社員が入った時こそ、困難な問題に直面しても根を上げずに打ち破り、独創的な仕事を可能とする「燃える集団」になり得るものと見ています。
天外さんは「フロー状態」に入れる条件として、最も重要なのが内発的動機だと述べられています。「自分の力でロボットを作りたい」といった内側から自然にこみ上げてくる衝動であり、その反対が外発的動機とされ、「お金が欲しい」「出世したい」など外部からの報酬を求める心だと分析しています。
現在のソニー社員は大切な内発的動機を失っていると嘆き、天外さんは成果主義の導入を原因にあげています。「業務の成果と金銭的報酬を直接リンクさせれば、社員はより多くの報酬を求めて仕事に没頭するだろう」というのが成果主義です。しかし、目の前にニンジンをぶら下げられたとしても、人が必ずしも仕事をするものではないと天外さんは思っているようです。
アメリカの心理学者チクセントミハイ氏らの研究によって、外発的動機が強くなれば、内発的動機が抑圧されていくことが証明されています。つまり「一生懸命働けば給料を上げる」と言われ続けると仕事を楽しもうという内面の意識が抑圧され、仕事そのものに楽しさを感じることができなくなると言われています。
ソニー創業者の井深さんは「仕事の報酬は仕事」が口癖だったそうです。その言葉が活きていた時代は、良い仕事をしたら次にもっと良い仕事、仕事のおもしろを求めて働いている社員が多かったと天外さんは振り返っています。1995年頃から成果主義が導入され、目先の利益を追求する雰囲気が社内に蔓延し、事業部間の足の引っ張り合いが目立つようになったと見ています。
仕事の成果を簡単に数値化できるものではなく、一般的に目標達成度が評価ポイントとされがちです。その制度が導入されるとソニーに限らず、ほぼ全員が達成できそうな低い目標を掲げるため、挑戦することを止めてしまう傾向があります。多くの企業がコンサルタント会社に莫大な費用を払って評価システムを導入していますが、そのような企業は軒並み業績を落としていると天外さんは見ているようです。
また、アメリカ流の合理主義的な経営理論は、日本中の企業でうつ病などメンタルの問題を抱えた社員を増やしているとも述べられていました。人間は必ずしも合理的に行動する訳ではなく、無理やり型に押し込もうとすれば歪みが出てくるのは当然だとも言い切っています。そして、最後に天外さんは「いつの時代、どこの国であれ、企業は働く人間の内面から湧き出る動機を重視するべきだ」と結んでいます。
ソニー元常務が語る成果主義の主な問題点について、自分自身の感想などは加えず淡々と紹介させていただきました。現在、公務員制度改革の大きな柱として、能力や業績を評価するシステムの強化が取り沙汰されています。誤解がないよう申し添えますが、その動きに断固反対していく意図を持って今回の記事を投稿したものではありません。
特に私どもの市役所の職員に対しても、数年前から人事評価制度のあり方について労使で協議を重ね、年次的な試行段階に入っています。天外さんのお話のとおり人事評価システムの有無に関わらず、「市民から喜ばれる仕事」「自分なりに満足いく充実した仕事」を内発的動機で全職員が取り組んでいる組織が理想です。
その理想に近付く努力を心がける一方で、公平公正な人事評価制度の確立は引き続き重要な課題であることに変わりありません。したがって、より好ましい評価システムを築くためにも、今回の記事で紹介したような視点は欠かせないものと考えていました。ベストな人事評価制度の確立は「永遠の課題」かも知れませんが、私たち公務員も「変わるべき時は変わる」局面を迎えているものと思っています。
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コメント
お邪魔します。
>内面から湧き出る動機を重視するべき
何でもそうですよね。仕事でも教育でも,スポーツでも。
ほめて伸びる人,叱って伸びる人,大人でも様々でしょう。
システマティックに組織を活性化するのは難しいのではないかと思います。
やはり,明確にルール化された評価システムなどより,人が人を育てるのであって,それをやりやすいような環境を整えることが大切なのではないかと思います。
投稿: WontBeLong | 2007年1月16日 (火) 00時34分
WontBeLongさん、コメントありがとうございました。
本当にそうですね。例えばこのブログは内発的動機で始めています。個人の責任で運営していますので、継続した投稿がさほど苦痛になっていません。
数年前、私どもの組合の公式HPの立ち上げを検討したことがありました。しかし、日常的な管理面での負担などを考慮し、結論は先送りになっていました。
そのような時にブログというものを知り、現在に至っています。この話は過去の記事「秋、あれから2か月」(URL下記参照)で書き込んだこともありました。
http://otsu.cocolog-nifty.com/tameiki/2005/10/post_e06c.html
このブログが組合活動の中での役割分担、つまり外発的動機による立場で更新を強いられていたら負担に思うのかも知れません。
今回の例えが適当だったかどうか分かりませんが、本務である仕事や組合活動、改めて内発的動機を重視していこうと考えています。
投稿: OTSU | 2007年1月16日 (火) 05時02分
ご訪問ありがとうございます。管理人からのお知らせです。
ココログのメンテナンスのため、16日午後3時から17日午後3時までコメント投稿ができませんので、よろしくお願いします。
なお、記事の閲覧は普段通りです。
投稿: OTSU | 2007年1月16日 (火) 12時27分
アメリカ流成果主義は短期の成果を要求するため、技術を売りとする製造業には馴染まない傾向は確かにあるようです。ソニーが凋落した原因は、90年代に経営の合理化を図り、優秀なエンジニアを人件費削減のために次々とリストラし、外注化を進めた結果、技術の流出が起こったためだと言われていますね。
しかし、今は日本の企業も多かれ少なかれ成果主義を取り入れております。ソニーは成果主義を取り入れて凋落しましたが、トヨタはどうでしょうか? キヤノンは? 今、日本で優良企業と言える企業は日本流の良さとアメリカ流の良さを取り入れ、独自の企業文化を築くことに成功しています。
公務員は評価されることに慣れていないので成果主義の導入は弊害が多いと言われますが、成果と実力に係わらず一定の勤務年数で昇給していくやり方がベストだとも思えません。内発的な動機付けと、外発的な緊張感を持てるシステム作りが必要ではないでしょうか。
公務員は失敗をしてもクビにならないので、逆にその立場を利用して積極的に民間ではできないことに挑戦することができると思います。
投稿: YARE | 2007年1月16日 (火) 12時29分
YAREさん、コメントありがとうございました。
ココログのメンテナンスが入ったりして、返信が遅れ失礼致しました。
記事本文でも記しましたが、評価システムの一定の整備は必要だろうと思っています。したがって、YAREさんが言われるとおり「内発的な動機付けと、外発的な緊張感を持てるシステム作り」は非常に重要な点です。
とにかく働く者のモチベーションを高めていく人事制度の確立に向け、幅広い情報や様々な実態を検証していくつもりです。ぜひ、また貴重なご意見をよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2007年1月18日 (木) 20時25分
最近成果主義を導入して基本給を下げたり気に入らない人間の
排除を試みるため、もしくは都合の良い派閥形成に利用するために
濫用しようとしている組織が官民問わず増えているようだ。これらは
大阪の似非維新の会ハシゲと小泉改悪で今の不況の現況を作ったあの
竹中辺りの策謀であることは誰でも気付いてはいることだろう。
多くの企業では弁護士もコンサルも知識が無いのか、こうした濫用
しやすい人事評価を規程を設けたからすぐ実行する、嫌なら去れ、という
態度でごり押ししていても実際裁判で訴えられるとあからさまな差別的
ターゲットによる不当評価であり無効と言う訴えによって敗れるケースを
理解の問題でなく単純に知らないと言うものだ。大体こういうアホなことを
考えそうな連中と言うのはミトコンドリア(母方からのみ)DNAで”日本人”
を定義したがるどっかの連中であり、それを狂気によって押し進めるのは
今の現総理大臣でもあるからこうした嘘の押し付けに都合の良い派閥形成
のダシに組織内成果主義というのは非常に都合が良いだけのことである。
大体欧米に習って成果主義をと言う前提からして間違っているのだ。
米国では解雇自由の原則の建前、差別や内部告発、労働争議を元にして解雇したり、
こうした日本の企業内派閥形成の為のバカ評価主義、バカ減棒制度は
州法で禁止、各ユニオンからの厳しい弾劾にさらされるなど、過剰な自由
に対するストッパーが至る所で働いている訳である。若者がよく騙される
手口なのはそうした解雇に反対する勢力がいるから国際競争力が~とかいう
竹中辺りが考えそうな方便だが、その前提が既に間違っているのだ。
労働者の雇用条件と会社の利益が直接結びつくようなケースは例えば
製造業で物作って営業がそれを売りに行って前年比が~などという問題の場合
単純な成果主義で全社の売り上げが大きく打撃を受けたりすることは
有り得ない。一人だけ異常にできない者が仮に存在した場合往々にして
そういうのは意図的な計算ミス等によるものであり、結局企業体で同一
製品を扱っている程度の問題、所謂社内競争が社外、しかも国際競争にまで大きな影響を
与えることはスケール的に有り得ないのである。
大体国際競争力が減って来ているのであれば
当然全社平等に条件は向かい風になる。普通なら全員が最低評価だ。
そして仮に追い風でも例外的に能力不足な者ならば他者より仕事の出来は低かろうが
その一人の穴ぐらいで一企業が吹き飛ぶなど有り得ない。定評価に追い込みたいのは
単なる小学生レベルの言い訳、好き嫌いであり、ピーマン食えないと同レベルの理由だ。
まともに物を考えている者であればこうしたアホ工作に騙されるはずはないのだ。
しかし、ここにも問題があり、そうした内容を考えない人間を意識的に集める組織体
の場合、年齢の割りに仕事業務以外何も考えない知能の抜けた者達を集める為
(いたら洗脳するが)、よく言われることだが竹中のB層狙いで適当なことを吹き
込めば~と言うことになるのだ。
ワタミが調子こいていられるのもその辺りが主な原因だろう。よく見掛ける
私立文系が裸踊りやるのも上司の小便飲んで評価を上げて生き残ろうとする行為も結局
こうした大きな前提を踏まえない企業の間違い、もしくは狂っているという
ことに気付けないことに起因するわけである。これは安倍信者の労働組合への
蔑視にも繋がる要因ともなっており、とにかく数が多いほうが正義、どんな
理由があろうが少数派なら文句言えなくて当然、という組織形態が官民問わず
そして上下関係問わず形成されることが今日の日本の成果主義の濫用で
本末転倒な国際競争力低下を招いているのだ。本来の成果主義じゃないから~とかいう
アホがいるが本質は何も変わらない。
そしてその原因はそうした集団的
思考停止工作と組織側の個別分断工作を狂ってる!という者が“いない”
ために野放しになっていることにある。これが例えば戦争であれば評価が
一番低い兵隊から順に処刑されることになるのだが、実際にそういう軍隊が
他国に勝てるかと言うとはっきり言ってぼろ負けである。滅びかけの中国王朝とか
日本に併合された韓国みたいな状態になるのは目に見えているが、実際牟田口に
騙された日本がこれを喰らった。ベトコンみたいな官民一致が我々にはできないのだが、
未だに帰還兵をバカにするアメリカにさえ、そのような兆候が見られる。敵に勝つより
仲間を苛める軍隊になるのだから弱小韓国の噂なら誰でも知るだろう?勝てないのである。
苛められる奴自体仲間じゃないしとか名古屋のアホ辺りが言いそうだが、こいつらは
ブラジルにでも売り飛ばせばよい。
故にこの国における、実際は外資が持ち込んだかと言われるこのバカ成果主義
制度は正しく暴走トラック、暴走バスそのものであり、能力云々よりも上司の
小便を飲めるかレベルの狂気のコミュニケーション主義が権力、評価を濫用し、
勝てない組織の増産に結果的に努めてしまうことになるのだ。
サッカーのJ1J2の
降格昇格みたいにすれば~と安直に考えたどっかの似非維新の会辺りのアホが組織的特性を
よく考えず、(大体こういうのは特定管理職より上の連中は放っといても好評価
になるのだが、)後先構わず導入を急ぎ、文句を言うやつは産業医で精神病
認定にでもしてそのまま追い出す等の行為を大阪辺りで進めているのは
こうした背景にもよる。大阪でこれなのだからより西日本になればなるほど
こうした真似はもっとひどくなることだろう。と言うのは大体朝鮮半島に近い所ほどこういう
馬鹿な真似をやりたがる者が増えると言うのは何も松本龍が東北差別に
普請している為だけではなく、文系の学問が初めからそういう建前で教科書に組み込まれ、
似非考古学、似非歴史学と言った偽造歴史が繰り広げられてきたことにもよるためだ。
特に広島大や九州大の文系辺りはこの韓国に媚びる内容があからさまにひどく、東大で
裏切り工作に勤しむ者達も大体はこの辺の土地柄出身のものが多いのは調べれば直ぐ分かる。
前述の話に戻るが西日本、と言うより朝鮮半島
に近い日本の地域になればなるほどミトコンドリアによって古い日本人は
アイヌみたいにほとんど消え、今では新日本人は実質韓国人かもしれない~
的なことを単純に組織ぐるみで進めようとするバカがいるからこうしたまさに韓国が
導入しているバカ成果主義を大阪のハシゲが直輸入し、そこらでばら撒いて
多くの善良なる労働者(特に日本人)を恐怖の淵に叩き込む暴政の温床になっている
ことを知らねばならない。安倍の暴走(野放し)はそのままハシゲの暴走でもあるのだ。
名古屋で怪しいセシウム米等~と抜かしていたアホ(東海テレビ?)も東北差別に絡めて
嘘のごり押しを果たそうとしている者達だらけなのである。
組織におけるこうした腐りきった似非成果主義、強制村八分制度等という
韓国にそっくりな外道な行為に対し、我々は政治的な枠組みを最早乗り越えて
一致団結して跳ね除けねばならない。
これらは左翼的、共産主義的な訴え
ではなく偽装右翼に見せかけた似非民族主義であり、日本人と朝鮮人を
取り替えたい悪意を持った連中の工作であることを看破されたい。
安倍には首輪が必要であったのである。しかし今や関西のハシゲが横暴を
そこら中に撒き散らし自体の収集が困難を極めるようになってきているのだ。
在日はそもそも日本人に成り代わりたいからこうした制度の悪用を推進
して来ているのであり、結局日本人の遺伝子を守れるのは我々しかいないの
である。狂気の成果主義工作は結局戦争に勝てない軍隊を生み出すのだ。
多くの組織はサッカーの様に選手を取り替えれば上手く廻るほど単純で
ないことは明らかである!左翼レッテルを貼り煙幕で誤魔化そうとしてくる
だろうが似非右翼で実態は在日置換主義者によるミンジョク主義であること
をいち早く見破らなければならない。連中が容赦しないことは我々は知っている。
ならば我々も在どもに容赦する必要も無い。安部にもだ。
投稿: くたばれ成果主義 | 2014年7月 1日 (火) 22時35分