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2007年1月27日 (土)

問題が多い労働契約法

「書くネタに困りませんか」と尋ねられる時がありますが、「そのようなことはありませんね」と自信満々(?)にお答えしています。特に最近は週一回の投稿ペースとなっているため、ブログで取り上げたい題材に事欠くことはありません。

例えば先週木曜日、休暇を取って自治労都本部の春闘討論集会に参加しました。労働基本権のあり方などを議論する場として行政改革推進本部の下に専門調査会が設置されています。その委員である岡部謙治自治労中央本部委員長から都本部への挨拶と合わせ、専門調査会の議論内容などの報告を受けました。

続いて情報誌「インサイダー」編集長の高野孟さんから「ユーラシアの世紀と日本の進路」と題した記念講演があり、午後には岩波新書「労働ダンピング」の著者である弁護士の中野麻美さんからもお話を伺う機会を得ました。

その夜は連合地区協議会の新春講演会兼旗開きもあり、中野から昭島まで移動し、地元選出の衆議院議員である民主党の長島昭久さんから最新の政治情勢などのお話を伺いました。質疑の時間、私から「民主党は連合との信頼関係があることを強みにして欲しい」と要望させていただきました。それに対し、長島さんはオランダのワッセナー合意の例などをあげながら、自民党の「3本の矢」に撃ち抜かれない旨の心強い立場を示していただきました。

特にその木曜日は密度の濃い一日となりましたが、それぞれの講演一つ一つがブログの記事本文で掘り下げたい興味深い内容でした。さらにその日、第166回通常国会が150日間の会期で始まりました。安倍首相は施政方針演説で憲法改正や教育再生を柱としていますが、野党側は「格差是正」を今国会での最重要課題に位置付けています。

また、今国会は「雇用国会」とも呼ばれるほど労働法制の見直し法案が目白押しです。最近の記事では「ホワイトカラーエグゼンプション」「労働ビッグバン」について取り上げてきました。その一連の流れから考え、今回は法案提出が予定されている「労働契約法」にスポットを当てることにしました。

現行の労働基準法による就業規則は労働者の合意がなくても意見聴取を行なえば、使用者が作成変更できるようになっています。しかし、賃下げなど労働者に不利な変更を制限する規定がなく、労働者が訴えて変更の有効性を争う裁判が相次いできました。

今国会へ提出される「労働契約法」とは採用から解雇まで、使用者と従業員の雇用ルールを定める新法となります。なお、賃金制度や勤務時間などの就業規則が労働者にとって不利な変更となる場合、「労働者との合意」を前提とするよう明記しています。

労働側に一定の配慮を示した一方、「不利益の程度」などに合理性が認められれば、合意なしに就業規則を変更できる例外も設けています。合理的かどうかの判断基準として、これまでの判例をもとに①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の内容の相当性、④労働組合などとの交渉状況の4点があげられています。

そのため、変更が合理的かどうかの実際の判断は、今後も個別の裁判に委ねられるものと見られています。つまり労働契約法の制定が、労使紛争の未然防止に役立つかどうかは不透明なままです。

以前から連合は増加する個別労働紛争の予防や解決を目的とし、民法の特別法として「労働契約法」の制定を求めてきました。しかし、使用者が一方的に作成変更できる就業規則を労働契約の成立や変更の中心手段とした点について、連合は拙速な結論だったと異議を唱えています。さらに「均等待遇」原則が盛り込まれず、就業形態が多様化する時代のルールとしても不充分であると訴えています。

ちなみにホワイトカラーエグゼンプションには諸手をあげて賛成していた経団連も「労基法制定当時とは異なり、労働者は必ずしも社会的弱者ではない。したがって、法律で労働者が専ら経済的弱者であるとの前提で、使用者のみに義務を課すことは妥当でない」とし、この法案には消極姿勢を示していました。その声を無視できず、結果として不利益変更の例外規定が設けられたのだろうと容易に想像できます。

実は当初の答申案では、労働組合の団体交渉権を組織率が一定割合以上の組合に限定することが検討されていました。しかし、最高裁も「例え一人しか組合員がいなくても使用者は等しく団体交渉の義務を負うこと」を認めているため、法案の段階で憲法違反のおそれがある内容は外されました。

しかしながら「少数派組合と交渉しても何も決まらず、時間の無駄で非効率」との声もあり、今後、このような乱暴な案が再浮上する可能性も消し切れません。特に「組合員の獲得に努力しなくても団体交渉権を入手できる現行システムこそ異常であり、結局のところ労働組合の弱体化を招く」と発言する学者がいることにも驚かされます。

その一方で昨年末、自民党は労働問題全般を議論する「雇用・生活調査会」を立ち上げました。その会議に出席した国会議員から「諮問会議の労働ビッグバンは儲け主義の財界の論理が強すぎる」と警戒する意見が相次いだようです。本来、財界寄りであるはずの自民党側がこのような批判を行なうほど、現在進んでいる労働法制見直しに数多くの欠陥がある証拠だと言えます。

矢継ぎ早に法案が示され、労働組合側が守勢であるような構図ですが、ホワイトカラーエグゼンプションの問題が示したとおり反撃する材料も事欠きません。この「雇用国会」での論戦を踏まえながら連合が先頭になって、労働組合の存在を広くアピールする絶好のチャンスだと見ている今日この頃です。

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2007年1月21日 (日)

労働ビッグバンに対し、連合への期待

不払い残業の合法化と批判された「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入は見送られることになりました。安倍首相は「国民の理解が得られていない」と述べ、今月25日から始まる通常国会へ提出する労基法改正案に盛りこむことを断念しました。

厚労省が率先して法案の提出に固執していましたが、「参議院選挙を戦えない」と考える与党の圧力に屈した結果でした。同じように日銀の利上げ見送りも自民党からの強烈な圧力を無視できなかったように見られています。

安倍首相は「政治的圧力はまったくない」と釈明していますが、自民党の「ダブル中川」幹事長と政調会長は「当然の判断だ」と誇らしげに発言しています。さらに「利上げで景気が悪化すれば、夏の参院選は逆風選挙になる」と神経をとがらしていた与党幹部の声もあり、ここでも参院選をどう乗り切るかという姑息な自民党の姿勢が目立っています。

加えて二つの問題で共通しているのは自民党とりわけ中川幹事長の存在感が増し、官邸サイドと与党との力関係が逆転している点です。小泉前首相の時は与党を軽視し、すべての政策判断を官邸主導で下していたように思えます。必然的に当時の自民党幹事長は「お飾り」的なものとなり、本人自ら「偉大なるイエスマン」と称した武部前幹事長などは象徴的な存在でした。

対照的に頼りなさが際立ってきた安倍首相の影の薄さや立て続けに発覚する現職閣僚らのスキャンダルによって、内閣支持率は急激に低下しています。しかしながら民主党側も事務所費問題や角田参議院副議長の献金問題が取り沙汰され、追及する拳の振り上げ方が今一つ鈍いようです。

さて、このような政治情勢の中、2007年の春闘を迎えます。格差是正やワーキングプアの問題などが注目され、労働ビッグバンと呼ばれるほど従来の働き方を大きく見直す動きが強まっています。労働ビッグバンとは政府の経済財政諮問会議で提言されている労働市場改革の呼称であり、労働力人口の確保や労働時間の裁量化などをめざしています。

その方針に沿ってホワイトカラーエグゼンプション導入の話が浮上するなど、労働ビッグバンは経済界の意向が色濃く反映しているものと見られています。要するに企業利益確保のため、低賃金労働者の確保を目的とした労働法制改悪だと言い切れます。

したがって、今こそ労働組合の存在感を発揮すべき局面であり、700万人近くの組合員を擁する連合の役割と責任は非常に重要です。ホワイトカラーエグゼンプションの導入に対し、連合は反対の立場を明らかにしながら強く批判する意見を発信していました。このような連合の働きが功を奏し、法案提出見送りの流れを作り出したことも確かです。

一方で、ホワイトカラーエグゼンプションの問題を取り上げたテレビやラジオの番組で「なぜ、もっと労働組合は反対しないのか」と言われた時がありました。「ピンチはチャンス」との言葉があるように連合の存在感を一気に高める絶好の機会だったかも知れません。連合として最善を尽くしたものと思いますが、結果的には国民全体へのアピールが今一つ不足していたことになります。

傍目八目の立場であるため、勝手な意見を述べていますが、決して連合の動きを批判している訳ではありません。この間、高木剛連合会長は積極的にマスコミのインタビューなどに応じているようです。特に日経ビジネスオンラインの中で「アメリカスタンダードは世界標準にあらず」との発言は非常に印象深く、日本の労働者を勇気付ける言葉となり得るはずです。

ホワイトカラーエグゼンプションの問題で浮き彫りになりましたが、何でもアメリカ型を志向している政治に多くの国民が疑念を抱き始めています。また、アメリカ資本が好むような社会経済に変えられていく構図に危機意識を持つ人も増えています。このような国民の思いを連合が着実につかみ、よりいっそう社会的影響力を発揮できるよう願っているからこそ、ハードルを高くした期待感を託しているつもりです。

蛇足となりますが、私どもの組合の先輩が連合本部の副事務局長を務めています。先日、久しぶりにゴルフを一緒に楽しみました。土砂降りの中でしたので、スコアは二の次となりましたが、合間の雑談でいろいろ興味深い話を聞くことができました。日夜奮闘している連合本部役員の苦労を改めて感じ取った貴重な機会となりました。

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2007年1月14日 (日)

ソニーを破壊した成果主義

仕事帰りのある日、夕食をとろうと市役所近くの中華料理店に立ち寄りました。すると前任の人事課長にバッタリ会い、同じテーブルで四方山話を交わすことになりました。大方の自治体労使の事務折衝窓口は人事課長と書記長の役割です。

委員長になる前、書記長を5年間担っていました。そのうちの4年半、その課長と労使それぞれの窓口として頻繁に顔を合わせてきました。労働条件の変更は団体交渉での決定が基本です。団体交渉を開く際、事前に事務折衝で議題の設定や進め方を整理しています。そのため、事務折衝は団体交渉より格段に数多く行なわれることになります。

基本的に一対一による事務折衝は、労使課題の結論を出す場ではありません。しかしながら交渉のテーブルに載せる以前に押し返すべき事項、交渉の議題としないで執行委員会へ持ち帰り判断できる事項の見きわめなど、労使協議を円滑に進めるためにも事務折衝の場は非常に重要でした。

書記長時代、その課長とはお互い緊張関係を保ちながら切磋琢磨してきた間柄でした。その日、食べながら雑談する中、ソニーの元常務が『文藝春秋』に成果主義の問題点を書いた記事が出ていることを教わりました。現在は広報を担当している課長ですが、やはり前の役職が長かったため、このような記事に自然と目が行くようでした。

その夜のうちに書店へ立ち寄り、さっそく私も月刊『文藝春秋』新年特別号を購入しました。家に帰り、その頁を開くと「元常務がつづる危機の本質 成果主義がソニーを破壊した 偉大な創業者、井深大の理想はなぜ潰えたのか?」の見出しが目に入りました。

ソニーの元上席常務で現在作家である天外伺朗さんは工学博士の肩書もあり、CDやロボット犬AIBOなどを開発してきた方です。無我夢中で何かを取り組んでいる時の精神状態を心理学で「フロー状態」と呼ぶそうです。天外さんはその状態に社員が入った時こそ、困難な問題に直面しても根を上げずに打ち破り、独創的な仕事を可能とする「燃える集団」になり得るものと見ています。

天外さんは「フロー状態」に入れる条件として、最も重要なのが内発的動機だと述べられています。「自分の力でロボットを作りたい」といった内側から自然にこみ上げてくる衝動であり、その反対が外発的動機とされ、「お金が欲しい」「出世したい」など外部からの報酬を求める心だと分析しています。

現在のソニー社員は大切な内発的動機を失っていると嘆き、天外さんは成果主義の導入を原因にあげています。「業務の成果と金銭的報酬を直接リンクさせれば、社員はより多くの報酬を求めて仕事に没頭するだろう」というのが成果主義です。しかし、目の前にニンジンをぶら下げられたとしても、人が必ずしも仕事をするものではないと天外さんは思っているようです。

アメリカの心理学者チクセントミハイ氏らの研究によって、外発的動機が強くなれば、内発的動機が抑圧されていくことが証明されています。つまり「一生懸命働けば給料を上げる」と言われ続けると仕事を楽しもうという内面の意識が抑圧され、仕事そのものに楽しさを感じることができなくなると言われています。

ソニー創業者の井深さんは「仕事の報酬は仕事」が口癖だったそうです。その言葉が活きていた時代は、良い仕事をしたら次にもっと良い仕事、仕事のおもしろを求めて働いている社員が多かったと天外さんは振り返っています。1995年頃から成果主義が導入され、目先の利益を追求する雰囲気が社内に蔓延し、事業部間の足の引っ張り合いが目立つようになったと見ています。

仕事の成果を簡単に数値化できるものではなく、一般的に目標達成度が評価ポイントとされがちです。その制度が導入されるとソニーに限らず、ほぼ全員が達成できそうな低い目標を掲げるため、挑戦することを止めてしまう傾向があります。多くの企業がコンサルタント会社に莫大な費用を払って評価システムを導入していますが、そのような企業は軒並み業績を落としていると天外さんは見ているようです。

また、アメリカ流の合理主義的な経営理論は、日本中の企業でうつ病などメンタルの問題を抱えた社員を増やしているとも述べられていました。人間は必ずしも合理的に行動する訳ではなく、無理やり型に押し込もうとすれば歪みが出てくるのは当然だとも言い切っています。そして、最後に天外さんは「いつの時代、どこの国であれ、企業は働く人間の内面から湧き出る動機を重視するべきだ」と結んでいます。

ソニー元常務が語る成果主義の主な問題点について、自分自身の感想などは加えず淡々と紹介させていただきました。現在、公務員制度改革の大きな柱として、能力や業績を評価するシステムの強化が取り沙汰されています。誤解がないよう申し添えますが、その動きに断固反対していく意図を持って今回の記事を投稿したものではありません。

特に私どもの市役所の職員に対しても、数年前から人事評価制度のあり方について労使で協議を重ね、年次的な試行段階に入っています。天外さんのお話のとおり人事評価システムの有無に関わらず、「市民から喜ばれる仕事」「自分なりに満足いく充実した仕事」を内発的動機で全職員が取り組んでいる組織が理想です。

その理想に近付く努力を心がける一方で、公平公正な人事評価制度の確立は引き続き重要な課題であることに変わりありません。したがって、より好ましい評価システムを築くためにも、今回の記事で紹介したような視点は欠かせないものと考えていました。ベストな人事評価制度の確立は「永遠の課題」かも知れませんが、私たち公務員も「変わるべき時は変わる」局面を迎えているものと思っています。

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2007年1月 8日 (月)

ホワイトカラーエグゼンプション

特に安倍首相の粗探しをしている訳ではありませんが、またまた「?」マーク付きの発言が報道されました。今、話題となっているホワイトカラーエグゼンプションに関し、安倍首相は「残業をしないことは働きすぎの日本人が家庭で過ごす時間を取り戻し、少子化対策にもつながる」と述べたようです。

ホワイトカラーエグゼンプションの内容や騒がれている問題点を政府の最高責任者が把握していないような発言内容でした。知っていて煙に巻いたのか、それとも「育ちの良さ」から庶民の気持ちが実感できないため、本気で「残業がなくなる」法案だと思っているのでしょうか。

ところで前回記事「2007年、しなやかに猪突猛進」へ、本当に多くの方からコメントをいただきました。改めてありがとうございました。様々な切り口から貴重な提起をいただきましたが、その中で今回の記事では注目度が高まっているホワイトカラーエグゼンプションについて取り上げてみます。

今月25日から始まる通常国会への法案提出が予定されている日本版ホワイトカラーエグゼンプションとは、管理職の一歩手前の事務職(ホワイトカラー)のサラリーマンを労働基準法の労働時間規制から除外(エグゼンプション)する制度です。

対象者の条件として、労働時間の長さで成果を評価できない、重要な権限や責任を相当程度伴う地位にある、業務の手段や時間配分を経営側から具体的な指示を受けない、年収が相当程度高い(800万から900万円以上を想定)、以上の4項目が示されています。

企業が導入する場合、事前に労使で協議し、労働者側の同意を必要とします。この制度の対象とされた労働者は、1日8時間、週40時間の法定労働時間規制から外れ、自分の判断で出社退社時刻など日々の労働時間を調整できるようになります。その一方、残業手当は支給されず、仕事の成果で給料が決まることになります。

「頭脳労働では調子が上向いた時、集中的に働く方が効率的。集中して働き、時間に余裕がある時は休暇を取ったり、労働時間を短くできる」と日本経団連は新しい働き方の理想像を提言しています。安倍首相をレクチャーしている厚生労働省は「自分の仕事を片付ければ、後は自由。早く帰って子育てもできる。仕事と生活の調和がはかれる」とメリットを強調しています。

しかし、労働組合側はサービス残業を追認する「過労死促進法」と呼び、猛反発しています。週休2日に相当する年104日の休日確保を企業側に義務付けるようですが、裏を返せば年休や祝日分などは保障されず、261日間、どれだけ働かせても良いと企業側にお墨付きを与えるものだと言えます。

時間外勤務の場合、通常25%、休日出勤で35%の割増賃金を支払うことが労基法で定められています。今回の法改正に向け、経済界や厚生労働省がどのような美辞麗句で説明を加えたとしても人件費削減の便法であることは明らかです。残念なことに「国際的な競争力を高めるため」と言われ、労働者をコスト面からとらえる悪しき風潮が強まっています。

このブログを始めた頃の記事「なぜ、労使対等なのか?」の中で、「国家としても国民の多数を占める労働者が豊かにならなければ、社会や経済の健全な発展ができないことに気付きました」と記しました。要するに数多くある労働法制は決して権力側の「お情け」で与えられているものではありません。それにもかかわらず、最近の経営者側の姿勢、それを短絡的に代弁する自民党、本当に腹立たしく思います。

なお、エニグマさんから公務員にも適用されるかどうかのご質問がありました。次の国会へ提出される法案は労基法の改正を中心としたものであり、原則として公務員は労基法の対象外とされています。したがって、不明確な点も残っていますが、公務員には適用されない見方が強いようです。

しかしながら実際にホワイトカラーエグゼンプションが導入された場合、公務員も例外とせず、近いうちに必ず地方公務員法などが改正されるはずです。ホワイトカラーエグゼンプションを民間先行で導入する点について、公務員と民間労働者の足並を乱す意図まで感じ取るのは少し考えすぎでしょうか。

とにかく最近、安倍政権のお粗末さや迷走ぶりが際立ってきました。公明党の太田代表は早くから反対の意向を示し、自民党の中川幹事長と丹羽総務会長も「法案の提出見送り」の考え方を明らかにしました。一方、柳沢厚生労働相は依然提出に前向きなようであり、内閣と与党の連携の不充分さや統率のなさが浮き彫りになっています。

法案が白紙撤回されるのでしたら大歓迎ですが、サラリーマンの怒りの声にひるみ、「統一自治体選挙や参議院選挙が戦えない」とし、単なる先送りだとすれば冗談ではありません。不利になる争点を隠し、選挙が終わったら経済界の顔を立て、改めてホワイトカラーエグゼンプションの導入をめざすシナリオであれば、有権者を侮った姑息な話だと言わざるを得ません。

いずれにしても国民の中で多数を占める労働者が一枚岩になって、アメリカ的な発想の労働法制改悪の動きに歯止めをかけていく必要があります。そのためにも既存の労働組合が組合員や未組織労働者の声を適確につかみ、よりいっそう働く者の切実な思いを代弁していく役割が期待されているはずです。自分の所属する組合の中で、自治労の中で、連合地区協の中で、そのような視点を重視しながら改めて頑張っていこうと考えています。

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2007年1月 1日 (月)

2007年、しなやかに猪突猛進

Inosisi

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

このブログ「公務員のためいき」を始めたのが一昨年の8月、今回の記事が164タイトル目となります。アクセスの累計は12万件を超え、延べ6万人以上の方にご訪問いただいています。数多くのコメントやトラックバックもお寄せいただき、それらが大きな励みとなり、ここまで投稿を重ねてくることができました。心からお礼申し上げます。ありがとうございました。

2007年は亥年であり、「猪突猛進」という言葉が思い浮かびます。この言葉には「まっしぐらに突き進む」という前向きな面と合わせ、「後先のことも考えずに」という少しネガティブな意味が含まれています。そのため、今回の記事タイトルには「しなやかに」という形容詞を付けることにしました。

「しなやか」という言葉を手元にある電子辞書で調べると「柔軟で、弾力に富んでいるさま」と書いてあります。相反する意味の言葉を並べたことになりますが、年頭にあたって新たな年に向けた私なりの思いを「しなやかに猪突猛進」のタイトルへ込めてみました。

私たち公務員やその職員労働組合をとりまく情勢は昨年以上に厳しくなる見込みです。今年7月22日に予定されている参議院議員選挙に向け、自民党は「3本の矢」を政権公約の柱としています。自治労や日教組などの反発が予想される公務員制度改革、教育改革、社会保険庁改革を掲げ、支援を受ける野党を「抵抗勢力」と位置付けて揺さぶる狙いがあるようです。

一昨年9月の総選挙圧勝に味をしめた二番煎じ的な戦略であり、柳の下にいつもドジョウはいない諺を失念しているのでしょうか。前回記事「社会保険庁の解体、自治労の正念場」でも記しましたが、今の自民党の戦略からは本質的な問題のすり替えや矮小化していく意図を感じ取ってしまいます。

景気拡大は「いざなぎ超え」しましたが、大半の国民は景気回復を実感できていません。賃金水準は依然抑制気味であり、定率減税の廃止や年金保険料の引き上げなどによって国民生活を圧迫しているからです。その一方で、メガバンクや大企業には一貫して税制面などの優遇策を続けています。

「一握りの勝ち組が国を強くする」としたアメリカ社会を模倣し、国際的には周回遅れとなっている新自由主義的な発想で小泉・竹中ラインは市場原理主義経済を強め、様々な分野での規制緩和を進めてきました。確かに小泉前首相は「改革には痛みが伴う」と正直に述べていました。そして、いつ痛みが和らぐのかも明らかにしていませんでした。

現在、問題視されている極端な「格差社会」は政策の手違いで生み出された訳ではありません。「小泉構造改革」路線の結果、折り込み済みの終着点もしくは通過点だと言えます。安倍首相は「再チャレンジ」などと唱えていますが、基本的に小泉政治の継承者に過ぎません。

多くの国民が「私たちの生活が犠牲になっても国さえ強ければ良い」と思うのでしたら、この路線も一つの選択肢だろうと考えています。しかし、このような選択肢が一昨年の総選挙で示された訳ではありません。郵政民営化の是非に集約され、結果として「民でできることは民で」の言葉が多くの国民の支持を得ることになりました。

その言葉が受け入れられた背景として、公務員に対する不信や不満が国民の間に広まっていた点を忘れてはなりません。したがって、公務員である私が「批判の矛先が政権与党へ向かないよう公務員は絶好の標的にされている」などと言い切るだけでは反発を招きかねません。意図的な公務員バッシングもあるかも知れませんが、岐阜県庁の裏金問題などは釈明の余地がない不祥事でした。

様々な不祥事が明らかになるたび、公務員全体が害悪であるような印象を持たれることは悩ましく感じています。それでも多くの方が公務員に対して不満を抱いている現状は直視すべき重要な点です。私たち公務員側は一連の不祥事を「他山の石」とし、謙虚な態度で正すべき襟を正す機会としなければなりません。

その上で、住民から厚く信頼を寄せられる行政運営に努め、内外から共感を得られる組合運動を築く必要性に迫られています。そのような信頼関係がなければ、いくら公務員側が正当な主張を発信しても耳を傾けてもらえないものと思っています。

特に自治労が自分たちの運動の方向性に自信を持っていても、その運動の良さを理解してもらえない限り、独りよがりなものにとどまってしまいます。その意味で、自治労も結集している公務労協が労組批判に対抗するため、今年2月から全国各地で公開討論集会を開くようであり、たいへん意義深い試みだと受けとめています。

自民党の中川秀直幹事長をはじめ、公務員労組に批判的な政治家らとの公開討論を求めていく計画です。ぜひ、野党との連携やマスコミ対策も充分はかり、効果的な取り組みとなることを強く期待しています。その際、「やらせ」ではない自発的な意思として、力になれることは精一杯応援したいものと考えています。

以上のような情勢を踏まえた「しなやかに猪突猛進」の思いは、積極的に前へ進むための汗をかきながらも、「運動のための運動」とならないよう知恵も絞りながら適確な「答え」をめざしていく決意を表しています。

新年早々、長々とした話にお付き合いいただき、たいへん恐縮です。そのような思いを託した一つのツールとして、今年もこのブログの投稿を続けていきます。ブログの利点は不特定多数の方と率直な意見交換がはかれることであり、幅広い立場の方からご意見を伺える非常に貴重な場となっています。

当然、厳しいご意見が寄せられることも覚悟しています。いずれにしても一公務員のブログに対し、お時間を割いてコメントくださった方には本当に感謝しています。ぜひ、これからも多くの方からのコメントをお待ちしています。よろしくお願いします。

《お願い》コメントを投稿される際、意見交換をスムーズに行なうため、名前欄にハンドルネームだけはご記入ください。合わせて、ブログは誰もが閲覧できる公衆の場ですので、誹謗中傷や不適切な表現方法は慎んでください。また、スパム・コメントを防ぐココログの管理機能として、投稿直前に数字やアルファベットを入力する画面が出る時もあります。その際は半角文字で、指定された文字や数字をご記入ください。

    ☆新春特別付録☆ 「2006年ブログ記事回想記」

ブログを開設した当初は毎日のように更新していました。それが週2、3回となり、最近は週1回のペースが定着しています。平日に投稿するための時間が一切取れない訳ではありませんが、何となく記事本文を書くことに対しては身構えるようになってきました。

いただいたコメントへの返信は迅速に対応し、時には一般的な日記風ブログをはるかにしのぐ字数のコメントを書き込んできました。したがって、自分で言うのも何ですが決して遅筆になってしまった訳ではありません。

書きたい題材が不足している訳でもありません。逆に「ホワイトカラーエグゼンプション」やソニーの元常務が語っている成果主義の問題点など、取り上げたい記事内容に事欠きません。

実はココログのアクセス解析機能が充実し、検索ワードのリンク元などが分かるようになっています。自分でも驚く時がありますが、例えば「公務員の年金」とヤフーで検索した際、このブログが130万件中の1頁4番目にヒットしています。

加えて、このブログをご注目くださる方が増えている中、しっかりした記事を投稿しようと思う気持ちが以前より強まっています。そのため、つい新規記事の投稿は週末に限られるようになってきました。

一方で書きたい話題が数多くあるため、週一の記事に時事ネタなどを詰め込みすぎてしまい、ますます長文のブログになりがちでした。文章ばかりで読み流されている場合が多いかも知れませんが、このスタイルで当分続けていくつもりです。

自分自身、ブログ記事を投稿しながら様々な情報の整理や勉強の機会としています。したがって、お読みいただいた方にも「豆知識的な情報を得られた」と思ってもらえるような点にも心がけています。

さて、まめに更新しているブログならば「2006年ブログ記事回想記」など年末に投稿すべき記事かも知れません。この際、あまり堅苦しく考えず、元旦に投稿した記事の特別付録として、2006年のブログ記事を振り返ってみました。

それぞれ紹介した記事本文へのリンクをはってありますので、お時間が許す方は改めてご覧いただければ幸です。

  1. 逆風にひるまず、謹賀新年 ⇒ 年賀状バージョンとして、それまでに投稿した69タイトルの中から読んでいただきたい記事20タイトルを紹介しています。
  2. 公務員は働いていない!? ⇒ コメントをくださる常連の方たちが一気に増えた時期でした。このテーマはPart4まで重ね、多く方と熱い議論を交わしました。
  3. ダメ職員を守る組合? ⇒ 深刻な職場実態を訴えたコメントを受けとめ、労働組合の役割について議論を重ねた時期の記事でした。
  4. 平和な社会を築くために組合も ⇒ なぜ、組合が平和運動に取り組むのか、よく示される疑問です。その問いかけにお答えした記事の一つでした。
  5. 組合に入らないデメリットは? ⇒ そのものズバリの質問に対して、私なりの思いを綴った記事でした。
  6. 思い起こすのが「国旗」「国歌」法 ⇒ 憲法記念日に思うことを投稿した以降、共謀罪や愛国心の問題などがテーマとなり、率直な議論を交わしていました。
  7. 頭の中は市議選モード ⇒ 私どもの市の議員選挙があり、推薦した候補者の勝利を全力でめざしていた時期の記事です。
  8. チェルノブイリの祈り ⇒ 地域の労働組合の皆さんと実行委員会を発足し、催した神田香織さんの立体講談の報告記事で、原発の危険性を訴えました。
  9. ブログ開設から一年、されど靖国神社 ⇒ 小泉前首相の靖国参拝問題をテーマに数多くコメントが寄せられ、熱い論戦を交わしました。
  10. 飲酒運転の撲滅へ ⇒ 福岡市の事故を機に高まった飲酒運転の問題、懲戒処分のあり方について本当に激しい議論を重ねました。Part3まで続きました。
  11. 「美しい国へ」から感じたこと ⇒ 安倍首相が誕生し、その著書への批評を中心に書き込んだ記事でした。
  12. 組合委員長のためいき ⇒ 身近な組合活動の悩みを綴った記事でしたが、コメント欄は予想外の広がりを見せた議論が交わされました。

一年を振り返るにあたり、ポイントとなる記事を選びました。特にコメント欄が盛り上がった記事を中心に絞ってみました。選びながら「この記事も紹介したい」と思ったものが多くありました。右サイドバーのバックナンバーをクリックすると、その月すべての記事が閲覧できます。ぜひ、お時間がある時、その他の記事もご覧いただけたら誠に幸です。

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