社会保険庁の解体、自治労の正念場
毎朝、出勤前につけているテレビチャンネルは「朝ズバッ!」です。先月、毎週21時間42分の生放送出演がギネスブック世界記録に認定されたみのもんたさん司会の番組です。主婦層に絶大な人気を誇るみのさんが歯に衣着せぬ批評を行ない、たびたび公務員が批判の矢面に立たされています。
みのさんの一言一言の影響力はたいへん大きく、高い見識や政治的な中立性を強く意識して欲しいものと思っています。しかしながら政府税制調査会の本間正明会長が官舎問題で辞任した際、みのさんは「安倍さんに任命責任はない」としきりに安倍首相を擁護していました。
このような発言を聞かされると物怖じしない言葉の裏腹に案外、強い者には逆らわない日和見的な人物であるような気がします。このみのさんが年金の問題を語る時、必ず社会保険庁が諸悪の根源のような厳しい批判を加えています。「社会保険庁は解体しなくては駄目!」といつも声を荒げています。
今年の通常国会に提出されていた社会保険庁を「ねんきん事業機構」に改める法案の成立は見送られました。自民党の中川秀直幹事長らが「社会保険庁職員を国家公務員のまま存続させる案では解体的な出直しにならない」と主張したため、来年1月25日開会予定の通常国会に向け、職員の非公務員化を軸にした新たな法案の準備が進められています。
以前の記事「社会保険庁の不祥事」で記しましたが、年金保険料の不正免除など確かに社会保険庁の組織全体で責任を痛感すべき問題が少なくありません。当然、職員一人ひとりが反省し、その職員組合である自治労国費評議会としての厳しい総括も必要でした。一方、年金制度が行き詰まっている責任を社会保険庁という組織や働いている職員だけに負わせるべきものでしょうか。
先日公表された出生率は1.26で、2004年の年金改革で見込んだ1.39が大幅に下方修正された数字でした。日本の人口は2055年には8,993万人まで減少する予測も同時に示されました。年金財政健全化の大きな障壁となるのは、このように深刻な少子高齢社会が根本的な課題であることは間違いありません。
また、フリーターやニートの増加などが国民年金の財政を圧迫しているはずです。将来的な見通しを立てて公的年金の給付水準など枠組みを決めるのは国会であり、極端な格差社会を生じさせたのは紛れもなく政治の責任です。どう社会保険庁が努力しても責任を持てる領域でないことは明らかです。
社会保険庁が直接担ってきた年金保険料の運用の問題ですが、充分運用益を出せなくなったのはバブル経済の崩壊などで日本全体が背負った課題でした。保険料納付率の低迷も社会保険庁の直接的な責任ですが、税金と同様な強制徴収ができないなど法的な制約面も酌量すべきものだろうと思っていました。
ただ以上のような言い分は、バブル崩壊後も歯を食いしばって頑張ってきた民間の方々、よくコメントをいただけるエニグマさんらから「甘い!」とお叱りを受けるかも知れません。それでも私自身が社会保険庁の職員ではありませんので、もっと改善できる余地があったのかどうかの論評は避けなくてはなりません。
もう一つ、いろいろ取り沙汰された問題がありました。社会保険庁の事務費は元々税財源でしたが、国の厳しい財政状況を理由に財政構造改革法で1998年度から特例措置として事務費への保険料の充当を認めていました。そのため、職員の練習用ゴルフボール代にまで保険料が使われているとの強い批判を浴びることになりました。
2005年度から宿舎や公用車の費用は税負担に戻していますが、引き続き保険料徴収費など純粋な事務費は保険料を充てています。ちなみに厚生労働省は2008年度から恒久的に充当できる法案を来年の通常国会に提出するようです。
このように特例措置を決めてきたのは国会ですが、社会保険庁職員の福利厚生によって年金が無駄使いされているような批判も強まりました。批判の矛先は職員へ、その職員を組織化している自治労国費評議会へ向いていきました。中には国民から理解を得られにくい、行き過ぎた福利厚生や労働条件面の問題もあったかも知れません。
それでも当該の組合が要求し、労使交渉の結果、定めてきた待遇だったはずです。それらを頭から全否定されていく動きは、ある意味で正当な労使交渉の結果をないがしろにするものだと感じていました。一つ一つの事例を取り出すと突飛に思われる話も、すべて必要とした背景や理由があったものと考えています。
いろいろ述べてきましたが、社会保険庁の解体は本質的な年金問題のすり替えであり、批判の矛先が政治の怠慢さへ向かないよう社会保険庁は絶好の標的にされたように感じています。実際、国会の代表質問で中川幹事長は「問題の根底にあるのは、社会保険庁職員の大多数が参加する労働組合、自治労国費評議会の問題であることは周知の事実」とまで言い切っています。
小選挙区制となり、より過酷なサバイバル戦を勝ち抜くため、自民党は何でもありの必死さで民主党の弱体化を狙っているようです。社会保険庁の解体は自治労の中核部隊である国費評議会つぶしとなり、民主党の支援組織の一つである自治労の弱体化を目論む自民党側の一石二鳥の戦略だろうと思っています。
少し過剰な評価だとも感じていますが、先日、産経新聞のインタビューで森元首相は「日教組、自治労を壊滅できるかどうかということが次の参院選の争点だろうね」とまで話しています。このような厳しい局面は自治労の正念場であり、より緻密な対抗策を講じなければ本当に叩きつぶされてしまうかも知れません。
ホリエモン、亀田兄弟など、最近の世論は極端な移り気を見せる時があります。安倍首相と石原都知事の人気も急落モードに切り替わるのか、微妙な風が吹いてきたものと思っています。もともと自治労の世間評価は決して高くありませんが、住民の皆さんから信頼されるよう努力を尽くすことで一気に上昇モードへ転じる可能性もあり得るはずです。
話が拡散して恐縮でしたが、これからも単組として頑張れることは頑張ります。自治労本部でしか頑張れないことは、ぜひ、より効果的な頑張りを期待しています。いずれにしても連合の中での絆を大切にし、支持協力関係がある民主党とは中央レベルでの連携を強めて欲しいものと思っています。くれぐれも前原前代表の就任時のような突き放され方は論外であり、組合員から誤解されないような信頼関係が維持できることを強く願っています。
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