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2006年11月25日 (土)

人事院調査、公務員の年金は少ない

さわやかな秋の空気を感じた土曜日、連合地区協議会のクリーンキャンペーンに参加してきました。この行動の趣旨や位置付けなどは昨年の記事でお伝えしました。恒例行事として一定の評価を得ていますが、来年以降、企画そのものを一新することも直近の幹事会の中で検討対象となっていました。

さて、前回記事「予想外に難航した賃金交渉」の最後で、今回の内容を予告させていただきました。もともと前回記事は賃金交渉の報告と合わせ、人事院の年金調査の結果を取り上げるつもりでした。さすがに賃金確定闘争の課題は重いものがあり、書き込む内容も予想外(?)に多くなり、年金調査の話は先送りすることにしました。

徹夜交渉明けの朝、組合事務所に届けられた新聞記事中の一つの見出しが目に入りました。「人事院、公務員年金少ない」との見出しでした。11月16日に人事院は、民間企業のサラリーマンと国家公務員が生涯に受け取る上乗せ年金(退職金含む)額を比較した実態調査の報告書を塩崎官房長官へ提出しました。

厚生年金と共済年金の一元化後は公務員がサラリーマンよりも241万6千円(8.82%)少ない調査結果を示し、「民間との格差を埋める新年金制度が必要」と結論付けていました。さらに一元化前の現行制度でも公務員は民間より20万1千円少ない調査結果でした。

公務員の労働基本権制約の代償機能として、人事院は本来、中立の立場であることが求められています。その人事院は、昨年が地域給の導入、今年が官民比較方式の見直しと矢継ぎ早に「公務員の総人件費削減ありき」の制度変更を強行してきました。人事院側は主体的な判断によるものだと釈明しているようですが、政治的な圧力に「配慮」したことも確かだろうと思います。

したがって、今回の新聞記事で特に注目した点は、久しぶりに人事院の中立性を感じ取れたことでした。客観的な調査結果をありのままに報告する、ある意味で当たり前のことですが、このところの人事院の及び腰からすると今回に関しては毅然とした公表だったと見直したところでした。

その記事は調査結果の内容と合わせ、「一元化が目指す公務員の優遇の解消の流れに逆行する」「国家公務員に関する人事院の結果であり、人数の多い地方公務員に一律適用するのは問題がある」など批判的な声も掲載していました。あくまでも公務員の待遇は恵まれていて、財政再建に向けた事情から「総人件費削減ありき」の流れを壊したくない政府・与党におもねる大手新聞社の姿勢も垣間見た気がします。

すると翌朝の新聞記事には「政府・与党 調査に疑問」の見出しが踊っていました。年金の公務員優遇の存在を事実上否定した内容だったため、政府・与党から批判や疑問の声が噴出したようです。自民党の中川幹事長は「対象企業全体の約1割しか調べていない」など、人事院の調査結果を厳しく批判し、政府に対して追加調査やデータを要求する考えを示しました。

政府側の塩崎官房長官は「政府としてよく結果を分析、検討する必要がある」と述べ、柳沢厚生労働大臣は「一つの資料だけで何か(改革を)するということにならない」と調査結果を軽視する発言に終始しています。

政府は公務員の年金「優遇」の是正を主目的とした厚生・共済年金一元化関連法案を来年の通常国会へ提出する方針です。法案作成にあたり、政府は内閣から独立した人事院に調査を依頼することで「公平・公正な官民比較」を期待していたと新聞記事は結んでいました。

要するに意図していた結果が出なかったため、人事院は公平・公正な中立機関ではないと決め付けているようなものであり、政府・与党の理不尽な姿が浮き彫りになったと思っています。年金制度のあり方については多面的な議論が欠かせないはずですが、このような政治的な構図の中で厚生・共済年金一元化が進んでいくことに憤りを覚えます。

同じ給与ならば、同じ保険料、同じ年金給付額となるよう2010年を目途に共済年金が廃止され、公務員も厚生年金に加入させる政府・与党の方針が示されています。さらに公務員の保険料を民間サラリーマンよりも大きな幅で段階的に引き上げ、2018年には官民ともに18.3%に統一する計画です。

その発想の前提は「共済年金が存続する限り、公務員優遇は解消されない」とする決め付けでした。今回の人事院の調査結果は、その前提が大きな誤りだと認めざるを得ない重要なメッセージだったはずです。それにも関わらず、政府・与党は人事院に再調査を求めるどころか、調査結果そのものを無視したようです。

官民の差を埋める公務員向けの上乗せ年金制度について、厚生・共済年金一元化関連法案に盛り込まない方向で調整に入ったことが明らかになりました。既存の制度やルールを捻じ曲げようとも、「公務員は恵まれている、だから切り下げる」と言い続けたい硬直した姿勢だと批判せざるを得ません。

ちなみに調査対象は50人以上の企業規模だったようですが、昨年までの基本ルールは100人以上の企業規模が調査対象でした。その基準で考えれば、年金額の官民格差はもっと開いていたことになります。

最後に前回記事へのコメントとして、とおるさんから“勿凝学問53 国家公務員と新聞記者の仕事、どっちの方が高い報酬で報われるべきなんだろうか? ―人事院「民間企業の退職給付等の調査結果」はおもしろい― ”をご紹介いただきました。ぜひ、参考までにご覧になってください。

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コメント

こんばんは。

いや~、ひどい話ですね。
調査結果を無視するのはNGですよ。本来、あるべき姿に戻すために有無を言わさず大ナタを振るうのは賛成ですが事実を捻じ曲げるのはとんでもない愚行です。
国家が行うリサーチとして対象企業の一割しか調査していないというのは民間のサラリーマンとして確かにサンプリング対象が少ないというのは感じます。重要なことを決めるためのリサーチならせめて三割から五割はサンプリングを抽出すべきと思います。その点については私は与党と同じ考えですね。それで調査した結果、開きが大きくなるなら与党も否定はできないかと思います。
共済年金についてほとんど知らないのですが、OTSUさんは現行の共済年金制度は問題ないと思われますか?

OTSUさんの今回の記事を読んでいて思ったのですがOTSUさんの憤りはバブル崩壊後の民間サラリーマンのそれと同じように思えました。
そんな表現は正しくない!と仰られるかもしれませんが、今がまさに公務員にとってのバブルが崩壊しているのかもしれないと私には思えてなりません。
OTSUさんの記事どおりなら今回の件に関して言えば私は公務員寄りの考えですね。頑張ってください。

投稿: エニグマ | 2006年11月26日 (日) 21時53分

エニグマさん、コメントありがとうございました。
いつも公務員を厳しく評価されているエニグマさんから励ましとなるご意見をいただき、たいへん心強く思いました。同時に多様な視点での主張を発信していけるブログの貴重さも改めて感じることができています。
また、公務員数が国地方ともに大幅に削減されていく動きの中、共済年金と厚生年金の統合は必然的な流れなのかも知れません。総論として同じ給与ならば、同じ保険料、同じ年金給付額も妥当な方針だと思っています。その上で、公務員の年金削減だけが主目的となる政治的な思惑だけは容認できず、今回のような記事を投稿させていただきました。

投稿: OTSU | 2006年11月26日 (日) 22時43分

勿凝学問53 国家公務員と新聞記者の仕事、どっちの方が高い報酬で報われるべきなんだろうか? ―人事院「民間企業の退職給付等の調査結果」はおもしろい―

私も読ませていただきました。実に興味深い内容ですね。
以前より、同様の話は聞いていましたが、今のままでは本当に公務員の人材確保は難しくなるでしょうね。
一昨日、私どもの自治体でも採用試験の2次試験が行われたようですが、欠席者が1/5が欠席!!
今のように公務員攻撃が続いていれば当然ですかね?

投稿: shima | 2006年11月27日 (月) 12時45分

shimaさん、コメントありがとうございました。
役所に限らず組織の中で、人材は財産であり、「人財」と書かれる時があります。「人財」を確保し、育てることで行政サービスが向上する、そのような点も住民の皆さんから理解いただけたらなあと思っています。
合わせて現役公務員が「人罪」と言われないよう頑張っていくことも大事ですが…。

投稿: OTSU | 2006年11月27日 (月) 20時47分

OTUSさん、お疲れさまです。
夕張市の問題はいかがお考えでしょうか?
取り分け、職員の処遇について・・・。
公務員は、雇用保険の加入をしていませんから、当然に失業給付(失業保険)を受けることはできません。そのような中での「生首飛ばし!」本当に、いいのか?
「あいはらくみこ」は北海道ですよね!この問題をどう捉え、どう対応するのか?一地方の委員長ですが、注視しています。
自治労的に総括できるのかな?
新聞報道のような内容なら、夕張市はおそらくゴーストタウンになっちゃうよ!

投稿: shima | 2006年11月27日 (月) 22時21分

shimaさん、こんばんは。いつもご注目いただき、本当にありがとうございます。

2006年7月5日の記事「財政破綻した夕張市」で、組合としての立場の悩ましさを綴ってきました。その一文をご紹介させていただきます。

「自治体や会社がつぶれてしまったら元も子もないだろう」と言われる時がありますが、その論調に組合が乗ってしまうと働く側に安直なしわ寄せが行きがちです。一方で、組合が自分の市の財政状況をまったく把握しないで労使交渉に臨むのも論外だと思っています。万が一、夕張市のように財政再建団体に追い込まれた場合、労使で自主的に交渉していく幅は吹き飛んでしまいます。何よりも市民の方々へ大きなしわ寄せが行く最悪な事態は全力で避けなくてはなりません。

以上のような考え方で、個人的に日々葛藤しているところです。

夕張市の人員削減は、あくまでも自主的な退職の申し出を募っているように聞いています。賃金カットの割合も労使交渉を通して決まっているようです。ほぼ形式的なものかも知れませんが…。

相原さんの問題は切り分けて考えたとしても、確かに自治労としての見解や総括は明確にすべきでしょうね。

投稿: OTSU | 2006年11月27日 (月) 22時49分

皆さん下っ端刑務官の告発・愚痴を聞いて下さい。
関東某c刑務所のh看守長は、長髪をポマードはてまたはジェルでギラギラに固め勤務に就いています。公安職(だけではないのですが)・・・端正な容姿、厳正な指揮命令系統・・・当然の常識です。にも拘らず、「家のかみさんがこの髪型好きで切らせてくれないんだよ。」などといいつつ、職に誇りと信頼を持って頑張っている若年職員には「指導シート(いわば始末書みたいなものです)持って来い。」「お前!テメー!」などの人権蹂躙をし、女性職員には鼻の下をのばし、俺の女達と言わんばかりに談笑を求める。
 こうして塀の中の小さな世界の幹部が、どの公務員よりも、私たちの父母よりも偉いと勘違いを起こし半分神になったような恍惚のなかから矛盾を孕んだ絶対の命令を発しています。首席!処遇部長!所長さんよ!あんたらはこういったパワーハラスメントを許すのかっ!受刑者の被害者の皆様がたに申し訳が立たないではないか!刑務所がこんな調子では!
 どうか力のある方、事実でありますので、我々をこういった矛盾から生じる怒りから救ってやってください。

投稿: 千葉太郎 | 2006年12月25日 (月) 21時38分

千葉太郎さん、コメントありがとうございます。
部下に対するパワハラ、セクハラがあるようでしたら見過ごせる話ではありません。そのような時、労働組合がありましたら、ぜひ、相談されることをお勧めします。
組合がないようでしたら、このブログの右サイドバーの「用語解説リンク」から自治労や連合のHPへ飛べるようになっています。それらのHPで連絡先等を把握し、よろしかったら相談を受けてください。
直接力を貸すことができませんが、このブログのコメント欄が少しでもお役に立つようでしたら、これからもご利用ください。

投稿: OTSU | 2006年12月25日 (月) 22時31分

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