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2006年10月22日 (日)

危機的な自治労への逆風

公務員への逆風、最近は特に自治労への風当たりの強さが際立ってきました。この「公務員のためいき」へ多くの方からコメントをお寄せいただいていますが、そのことを実感する厳しいご意見や自治労への苛立ちの声などが増えています。

組合員の利益を大事にするのが官民問わず労働組合の使命であり、そのことに力を注ぐことで自治労の存在がガンであるような決め付け方には切ない思いを感じています。また、前回の記事中のごく少数の「勝ち組」は大企業やヒルズ族らを想定していました。ただ非正規雇用の労働者の増加などにより、公務員が相対的な「勝ち組」に見られ始めている現状も否めません。

「新自由主義的な政治経済路線は、より大きな構造的な不平等をもたらす」「公務員賃金の水準維持が社会的な底上げにつながる」などと公務員側が声高に叫んでも、自分たちの既得権を守りたいための論点のすり替えだと言われがちです。「政府与党の意図的な公務員攻撃があり、マスコミも追随している」などと愚痴れば、厳しい批判にさらされることを覚悟しなければなりません。

厚遇問題、裏金、談合、飲酒運転など不正な事件や不祥事の数々が明らかになり、残念ながら公務員への信頼は最悪なものとなっています。真面目に一生懸命、働いている職員が大多数であると言わせていただきますが、公務員はその待遇に見合った働きぶりではないと決め付けられている気がしています。

このような悪化した信頼関係の中で、公務員の目線や発想で物事を主張しても問題意識が共有化できないのは当然だろうと思います。多くの地方公務員を組織化している自治労は、この現実を深刻に直視しなければなりません。いろいろな意味で危機意識を強く持ち、反省すべき点は真摯に反省し、多くの国民の方から共感される方針を確立することが急務だと痛感しています。

本日、神奈川16区と大阪9区で衆院補選が行なわれ、それぞれ自民党の候補者が勝利しました。その補選の応援演説で安倍首相は「改革に取り組むのは自民党で、組合に支えられた民主党ではない」と訴えていました。自民党の中川幹事長は民主党を「公務員天国、労働貴族の党」とまで揶揄していたようです。

このようなアピールが多くの方から共感を得られがちな構図は昨年9月の総選挙の時と同様、もしくはそれ以上の局面を迎えているのかも知れません。民主党の前原前代表は就任当初、「労働組合とのしがらみを絶ちたい」とフライング気味の発言を繰り返しましたが、小沢代表は改めて連合との信頼関係を築こうと努力されているようです。

いずれにしても自民党の攻撃材料にされる労働組合との関係性を民主党は、ぜひ、逆手にとって反撃してもらいたいものです。例えば「自治労との信頼関係がある民主党だから的確な公務員改革が進められる」と反論し、詭弁と言われないよう自治労側も従来の発想に固執しない対応をはかる、難しい話でしょうか。

具体的な例として、これから年末にかけて各自治体で賃金交渉が進められていきます。以前の記事「プラマイゼロの人事院勧告」のとおり国家公務員の今年度の賃金水準は据え置きとなる運びです。一方、独自な人事委員会を持たない私どもの市の賃金改定は東京都人事委員会の勧告内容が基本となります。

その都人勧が10月13日に示されました。比較対象の企業規模が100人以上から50人以上に広がった影響を受け、「国より厳しかった都人勧」だった昨年同様、都職員に対しては0.31%(1,357円)の賃金引き下げが勧告されました。労働組合側との充分な交渉がなく、一方的に比較対象が見直されたことは改めて問題だったと言わざるを得ません。

それでも比較対象のルールは政労トップ交渉で決められた経緯がありますので、労働組合側と合意形成をはかる余地はあったはずです。政府与党との信頼関係があり、公務員組合側が大局的な見地から決断する、充分想定できるシナリオでした。

今後、現実的な問題として、組合員にとって当面するマイナスも将来的な意味でプラスとなる確信を持って、組合側が決断する場面が重要になるだろうと思っています。その意味でも都人勧で示された賃下げは粛々と受け入れた上で、メリハリを付けた賃金闘争が必要だと考えています。

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コメント

自治労や自治体が自分たちで膿を出せるようにならないと何を言っても国民には通じないのではないでしょうか?
連日、非常識な公務員の勤労ぶりが報道されております。これもマスコミの意図的な扇動とおっしゃられますか?
それとも「あれ」を見本にしろと声高らかに言っているのでしょうか、公務員の方々は?
ちなみに「あれ」ってなんのことかおわかりになりますか?

賃金闘争よりも自浄能力を身につけるのが先ですね。
でも、無理か・・・公務員の事なかれ主義体質じゃ。

投稿: エニグマ | 2006年10月24日 (火) 01時31分

エニグマさん、コメントありがとうございました。
今回の記事は、エニグマさんのようなお考えの方が多いことをかみしめながら投稿したつもりです。与党やマスコミの話は、公務員側はそのような考えを持つべきではなく、真摯に、かつ謙虚に自分たちの足元を見つめ直すべきとの思いを託しています。
なお、「あれ」は特定できません。何を指しているのでしょうか。

投稿: OTSU | 2006年10月24日 (火) 07時24分

OTSUさん、お疲れさまです。
私は「自治労や自治体が自分たちで膿を出せるようにならないと何を言っても国民に通じないのではないでしょうか?」というご意見には賛成です。
自らが「公正・公平」でなければ、他に求めることはできないと思います。
OTSUさんも、同様の思いでおられると思います。
連日続く、非常識な公務員の実態に同じ地方公務員として不快感というより、嫌悪感を覚えます。
いまだに訳の分からない裏金や非常識な勤務実態など「一部」自治体のために多くのまじめな職員がたいへんな迷惑を被ることが許せません。
これは、自治体当局の管理責任が一番大きな問題でしょうが、そのことに労働組合・自治労が関与していることはきちんと総括し、反省、是正しなければならないと考えます。
奈良の件などは、労働組合がどのような係わりかは知りえませんが、少なくとも私の単組では考えられないことです。
職場、組合は、当該職員に対してどのような指導を行ったのか?
権利行使として当然のことと考えているのか?
一部の明らかな制度悪用を容認すれば本当に必要とする人が本来の権利行使として制度を利用し難くなるとは考えなかったのか?

ちなみに私どもの単組では、病休期間は一般疾病90日、特定疾患は最長180日を定めていますが、同時に復職から暦年で1年の勤務を経過しなければ、通算されることとしています。(病休をリセットするには1年以上の勤務実績が必要)

労組には闇雲な権利擁護ばかりでなく、公正・公平に制度運用が図られているかをチェックする責任もあると考えます。

投稿: shima | 2006年10月24日 (火) 12時43分

shimaさん、コメントありがとうございました。
確かに今回の記事は、自治労が大胆な発想転換すべき危機的な局面だと思いながら投稿しました。労働組合の役割として、組合員の賃金引上げや権利擁護の運動は重要です。同時に組合員の働き甲斐や職務への誇りを守る運動も大事だと考えています。
賃金闘争などを一切否定する極端な気持ちにまで至っていませんが、限られた財源の中で工夫や協力する発想も必要だろうと感じています。当然、従来と異なる方針を掲げる場合、組合員との合意形成や信頼関係が欠かせないことは言うまでもありません。
自治労や公務員に対する好感度や信頼が高まることを目的とした運動は、長い意味で組合員一人ひとりのためになるものと思っています。回りくどい言い方で、たいへん申し訳ありませんが、少しでも私自身の問題意識を受けとめていただければ幸です。

投稿: OTSU | 2006年10月24日 (火) 23時04分

たびたび拝見いたしております。
OTSUさんは建設的な意見の持ち主として大変好感を抱いております。誹謗とも中傷ともとれるような意見や、自治労に対する厳しいご指摘を受けた際にも真摯に向き合っており、貴職労は大変すばらしい執行委員長をもったものだなと感心しております。
がしかし、↑のコメントはいただけません。
自治労に対する好感度があがるに超したことはありませんが、今は公務員バッシングに毅然と立ち向かうべきではありませんか?
もちろん、奈良のような非常識な実態は糾弾すべきことでしょう。しかしながらこれまで先輩が勝ち取ってきた権利を「膿」扱いされる昨今の風潮はどう考えてもおかしいのではないでしょうか。
労働組合は常に組合員と同じ目線で活動しなければなりません。そして今はどんなに罵声を浴びても、どんなに糞を投げられても、組合員の先頭でそれをはじき飛ばすべきです。耐えるべきです。
それができない風見鶏的な組合なら「御用組合」と揶揄されても仕方ありません。

投稿: DJまいうー | 2006年10月25日 (水) 09時07分

DJまいうーさん、はじめまして。コメントありがとうございました。
コメント欄での話の流れと私の回りくどい言い方で、ご心配をおかけしているようで申し訳ありません。決して先輩たちが勝ち取ってきた権利すべてを否定的に見ている訳ではありません。時代状況の変化の中で、正すべき襟は正しながら譲れない一線は断固として譲らず、主張すべき点は毅然と主張すべきだとの考え方は今も変わりません。
その上で、自治労運動がオールorナッシングで批判されないためにも、メリハリを付けた運動が必要だろうと思い起こしているところです。したがって、短期的な局面では後退することも決断し、長期的な運動の展望を重視していく発想の転換が大事だろうと提起しているつもりです。
重要な課題ですので、改めて記事本文でも取り上げたいと考えています。ぜひ、これからもご注目ください。

投稿: OTSU | 2006年10月25日 (水) 12時56分

そもそも論ですが、なぜ公務員に労働組合が必要なのですか?
公務員という時点で、既に民間では有り得ない優遇を得ているのですが。

投稿: nikki | 2006年10月26日 (木) 23時39分

こんばんは。

「あれ」はshimaさんが述べてくれていますね。

奈良の「腐れ公務員」の件は警察が調査を始めたようですね。
懲戒免職だけでは甘すぎですから、正直気分いいです。
5年で8日って私の有休消化率と同じなのが笑えました。
しかし、疑問なのはこういう「腐れ」が平気で庁舎に出入りしてても誰も何も言わなかったのでしょうか。
休職している人間が自分の家族の会社への随意発注を同僚に働きかけに庁舎に来てるのを誰も咎めないのが不思議ですね。
やはり、なかなか、自力で膿は出せそうにないですね。
ちなみに私の言う膿をちょっと誤解されている方もいるようですね。私のいう膿は「人罪」な職員や違法行為の事です。
およそ民間には存在しない非常識な既得権益、その上、財源無くしてどのように維持すればよいのでしょうか?
地方財政が破綻しかかっているということをどれほどの公務員が認識しているのでしょうか・・・。
コスト感覚、公務員に一番身に着けていただきたいセンスです。

投稿: エニグマ | 2006年10月27日 (金) 00時35分

nikki さん、エニグマさん、コメントありがとうございました。
それぞれ貴重な問題提起であり、コメント欄でお答えするよりも記事本文を通して私なりの考え方を改めて述べさせていただきます。短い言葉で充分真意が伝わらないといけませんので、日曜までには投稿予定の次回記事をご覧いただけるようよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2006年10月27日 (金) 07時27分

 いつも誠意ある回答有難うございます。
 自治労とは若干離れる事柄で申し訳ありません。(でも、実はいずれ、自治労も直接的に大いに関わる事になるであろう問題について。)
 今、私が住む横浜市では、交通局の路線バス(いわゆる市営バス)の行方が重大な問題になっています。9の系統の民営譲渡、18の系統の部分廃止、31の系統の全面廃止という再編成計画があるのですが、これについての地元説明会が各地で紛糾し、加えて市営バスでも会計の不正や不適切な運行などの不祥事が相次いで発覚した事もあって、混乱に陥っているというものです。
(再編成計画以前に既に廃止・民営譲渡された系統が多数あり、営業所も1ヶ所廃止されています。)
 この事自体については、また厳しい意見も多数寄せられるだろうから、とりあえず私は何も言いません。ただ別の点で問題があります。横浜市交通局には「横浜交通労働組合」というものがありまして、ホームページも公開しています。ところが、その最終更新日が2004年3月17日、なんと2年以上も前なのです。自分たちの職場に直接関わる大問題なのに、自らが何一つ発言を断ち切り、沈黙のままなのはなぜですか?ほんの数年前だったら「市民の足を奪う再編成計画絶対反対!」とでも叫ぶような出来事でしょう?
 以前投稿した岐阜県の問題の時も感じましたが、今の日本の労働組合は(官も民も)、当事者能力というものを失いつつあるのではないかと思えてなりません。なのに自らが置かれた社会的な立場がわかっていないまま、政治的な運動に現を抜かしても、自らを守る事にはならないのではありませんか?
 横浜市では来年の統一地方選で市議会選挙があり、市営バス問題が最大の争点になると思われますが、さて、特に民主党を初めとする野党はどのような態度を取るのでしょうか?交通局の財政が危機的なのは事実だし、もはや公営と言えども採算度外視なんて許されないですから。そして労働組合は、選挙を利用し、政治的な影響力で自らの地位を確保するというやり方は、もはや通用しなくなるでしょう。選挙の結果を踏まえ、どのような姿勢で自らの問題と向き合う事になるのでしょうか。

 OTSUさんは民主党に、自治労との繋がりを逆手にとって改革をアピールし、反攻の材料にしてほしいと考えておられるようですが、やはり何より自らの足元をきちんと見て、まじめに働いて世論の信頼を勝ち取る事の方が先決でしょう。でないと、民主党だって自治労の支援を得る事はためらってしまうのではないですか?
 (OTSUさんは前原前代表の自治労に対する態度を嘆いていましたが、常識的に考えれば、世論の支持を失った組織の支援を得る訳にはいかない、というのは当然の論理でしょう。)
 しつこいですが、政治闘争とか、平和運動なんて後回しでいいです。それらは労働組合でなくてもできる事です。まずはきちんと働きましょう。働いてこその労働者であり、それを世論は求めているのですから。
 また支離滅裂な投稿で申し訳ありませんでした。

投稿: 菊池 正人 | 2006年10月27日 (金) 08時36分

菊池さん、いつもコメントありがとうございます。
ご指摘のとおり自分たちの働き方について、私たち公務員は真摯に見つめ直していく努力が欠かせない局面を迎えているものと思っています。その中で労働組合は、組合員の労働条件も大事にしながら市民から信頼を得られる公務のあり方について、前向きに検討していくことが重要です。
また、政党との支持協力関係は、ある程度必要だろうと考えています。その上で、お互いが緊張感と立場性の違いを認め合って、より良い政治や社会の実現に向けて貢献できることが理想だろうと考えています。
このようなことを言葉ではきれいに表せても、具体的な選択肢においては暗中模索となる場面が多いのも現状です。まとまりのない返信コメントで恐縮ですが、次回記事でもう少し掘り下げ、悩んでみようと思っています。

投稿: OTSU | 2006年10月27日 (金) 22時40分

 書き込みしたいことはたくさんあるけど、自治労傘下の下部組織の体質も千差万別だし、もちろん公務員の個体差はあるんで、ついつい書き込みが億劫になりますね^^;

 なにしろ、組織が大きすぎるんじゃありませんか?道州制への移行時に整理して出直した方がいいような気がします。

 色々次から次に不祥事が出てきますが、どれも労使の合意がなければ起こりえないものがほとんどですよ!
 この際、「闇利権」を表に出して、出直す以外にないんじゃありませんかねぇ・・・もちろん、行政組織も含めて!

投稿: ニン麻呂 | 2006年10月29日 (日) 11時24分

ニン麻呂さん、コメントありがとうございます。
短いご指摘でしたが、言われているお気持ちが充分理解できます。ストレートなお答えになるかどうか自信ありませんが、今夜、新規記事を投稿する予定です。
ぜひ、また気に留まった点などがありましたら、よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2006年10月29日 (日) 16時59分

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