責任の処し方、あれこれ
2016年の夏季オリンピック国内立候補都市が東京都に決まりました。JOCの選定委員会で、33対22の11票差で福岡市を退けました。個人的には東京での開催に反対であり、どちらかと言えば地方活性化の一環から福岡市の方が好ましいと思っていました。
また、私の住む三多摩は東京ですが、職場で話題にさえならないほど関心が薄いニュースでした。そもそも石原都知事にとって「東京」とは23区のみを指し、今回の計画そのものも三多摩地域での競技開催は予定されていません。
さらに今年5月、瑞穂町議会では五輪招致決議案を否決しました。その際、石原都知事は「なんで反対なのか、よく分からん。頭を冷やした方がいい」と痛烈に瑞穂町を批判していました。日頃から市町村を見下している都知事の高慢さが浮き彫りになった発言でした。
いつものことながら記事タイトルと異なる話にそれがちで、たいへん恐縮です。さて今回、責任の処し方について取り上げてみました。責任の取り方、その対象となる範囲など、ケース・バイ・ケース、千差万別、あれこれあり、正解を出すことは難しいものと思います。そのことを踏まえながら最近の具体的な事例を振り返ってみます。
福岡市の五輪招致が東京に敗れる数日前、酒酔い運転した福岡市職員が重大事故を起こしていました。3人の幼い命が奪われた悲惨な事件でした。殺人同然の無謀な過ちを犯した職員の管理監督責任が問われるのは当然です。人口150万の政令市ですので、山崎市長はその職員の顔も見たことがないかも知れません。それでも自治体の最高責任者として深く陳謝し、徹底した再発防止策を示すのは妥当な責任の処し方だと思います。
一部では、この事故の責任を取って「福岡市は五輪招致の立候補を辞退すべき」との声まで上がっていました。確かに取り返しのつかない事故でしたが、そこまで波及させるのはどうだろうかと私自身は感じていました。もっと大差で福岡市を破る票読みだったと聞いていますので、結果としてJOCの委員の判断に事故はあまり影響を与えなかったようです。
このブログの前回記事「さいたま市で自治労大会」のコメント欄へ、福岡市の悲惨な事故に対する怒りの声が立て続けに寄せられました。公務員が犯した事故への憤りを公務員のブログへぶつけるお気持ち、忸怩たる思いで受けとめました。この事件を痛ましい教訓とし、いっそう公務員の立場や自覚を強める決意だとお答えさせていただきました。
憤りのコメントが続いた一方、エニグマさん、カフェオレさん、ニン麻呂さんからは、今回の事故の責任を公務員全体に問うのは不適切であるとの趣旨のコメントをいただきました。ご指摘のとおり飲酒運転の問題は公務員も民間も問わず、改めて絶対厳禁の戒めにしなければなりません。その上で、何かひとたび事件を起こした時、風当たりは民間の方より断然厳しい点も公務員全員が自覚すべきだろうと考えています。
一昨日、岐阜県庁の裏金(最近の記事参照)は17億円に上ると推計し、利息を含めた約19億2千万円の返還を現職とOBに求めた調査報告書が示されました。今後、責任に応じて職員への処分、内容によって刑事告発も行なうと古田県知事が表明しています。ただし、現職知事としての自らの責任については触れられていないようです。
今年7月31日、埼玉県ふじみ野市の市立プールで女児が吸水口に吸い込まれ、死亡する痛ましい事故が起きました。管理運営を民間会社へ委託しているとは言え、即時に島田市長は市の責任を認め、テレビカメラの前で謝罪していました。事故を未然に防げなかった責任は重大であり、当たり前なことなのかも知れませんが、トップ自らの迅速な記者会見の姿勢に関しては評価できるものと思いました。
茨城ゴールデンゴールズが函館遠征した夜、極楽とんぼの山本圭一選手が17歳少女とみだらな行為をしたとして警察で事情聴取されました。その道義的責任を取り、監督の萩本欽一さんは突然チームの解散を発表しました。その後、ファンや選手らの熱い声を受けとめ、存続へと改めました。あまりにも極端な責任の処し方に大勢の方が驚きましたが、その潔さは欽ちゃんの好感度をさらに高めたようでした。
私自身の感想として本当にゴールデンゴールズは解散しなくて良かったと思っています。似たような問題として高校野球の連帯責任の取り方について、常々疑問を感じていたからです。懸命に練習してきた選手に直接的な非がないにもかかわらず、そのチームや学校に不祥事が起きた際、甲子園大会出場辞退や対外試合禁止のペナルティが課せられてきました。
この夏の大会に準優勝した駒大苫小牧も、先輩たちが卒業式の夜に飲酒と禁煙で補導された責任を問われ、春の選抜を辞退していました。その悔しさや苦しさを乗り越えた決勝進出でしたので、すばらしい精神力の選手たちだと感心していました。しかし、大半の高校球児は理不尽な仕打ちに腐ってしまう場合が多いのではないでしょうか。今までの高校野球の連帯責任は行き過ぎであり、直接的な指導責任がある監督や教師の辞任にとどめるべきケースが数多くあったはずです。
個人的な不祥事に対する責任の処し方は本来シンプルであるべきですが、村上ファンド利殖疑惑で追及された日銀の福井総裁のような居座りも中には見られます。少し難解なのが今回例示してきた組織の構成員や組織そのものが不祥事を起こしたケースです。しかし、必ず意識しなければならない点があります。自治体の例で考えれば、大多数の住民から納得を得られる責任の処し方なのかどうか、その思いを感知することが重要である点は間違いありません。
最後に一言、誤解されないよう申し添えなければなりません。岐阜県の裏金や京都市で続出している職員の不祥事は当該の自治体の問題であり、公務員全体の問題としないで欲しい、このブログへその批判コメントを寄せないで欲しい、などと決して考えていません。そのような意図で今回の記事を投稿したものではなく、今までも繰り返し述べてきましたが、他の自治体の問題を常に「他山の石」としていく緊張感を持ち続けています。
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コメント
この記事の初めの方に「都知事は23区のことしか頭にない」旨のことが書かれていますが、本当の過疎地に住む者から見れば、小泉さんのいう地方は、多分、横須賀周辺のイメージしかないような気がしますし、霞ヶ関のキャリア達の認識もその程度ではないかと思っています。
地方への権限移譲をされても、それを受け入れる基盤整備ができていないのですから、ますます地域間格差は拡大していきます。地域間競争が始まっても、スタートラインに着けない地域があることを忘れてもらっては困ります!
だからと言って、特に名案もないんですけどね~^^;
責任の処し方については、ご指摘のとおり千差万別で、どれが正しいというわけにはいきませんねぇ^^まぁ、「育ち」の問題でしょうね^^
これに関しては、特にコメントはありません^^
投稿: ニン麻呂 | 2006年9月 3日 (日) 21時28分
ニン麻呂さん、さっそくコメントありがとうございました。
一点だけ気になりました。「育ち」の問題、どのような意味なのでしょうか?
ちなみに千差万別だと書きましたが、「大多数の住民から納得を得られる責任の処し方なのかどうか」を一つの答えとしたつもりでした。そのモノサシから一定の結論を出すべきだろうと思っています。そのように現実は単純ではなく奇麗事だと言われるかも知れませんが…。
投稿: OTSU | 2006年9月 4日 (月) 07時13分
「育ち」というのは親の躾けです!
「呑んで自動車を運転しても、見つからなきゃいい」なんて意識は、明らかに親の教育というか、家庭環境が形成したものだと思います。それは、出自とか貧富とは関係にないことです。
それから、出処進退の形っていうのは、やはり定型ってないのではないでしょうか。
マスコミが必ずしも正確な事実を報じているとは思っていません。彼らは「公務員」を叩けば部数が伸びるから好き勝手に書くだけです。
また、地方公務員の不始末を、就任して間もない首長の責任にするのは酷です。
村上ファンド利殖疑惑で追及された日銀の福井総裁にしても、当時は合法的な利殖だとされていたのですから、これを非難するのは事後法で裁くようなものです。
公務員の「大多数の住民から納得を得られる責任の処し方」なんて、そう難しい話ではありません。辞めれば納得しますよ!(辞めたら辞めたで、後始末もしないで辞めるなんて無責任!みたいな批判もあるし、後始末をする必要があるからと職に留まれば、それはそれで非難されます^^)
だけど、つまらないことで優秀な公務員や首長が辞めていくなんてもったいない話だと思います。
何の落ち度もなく、組織を庇うために辞めていった人はたくさんいますよ!
ですから、軽々にコメントはできません^^;
投稿: ニン麻呂 | 2006年9月 4日 (月) 22時44分
高給もらって一生安泰なんだから、少しは国民の模範になってくださいな。
投稿: rru | 2006年9月 4日 (月) 23時18分
ニン麻呂さん、ありがとうございました。
「育ち」の問題、よく分かりました。また、軽々コメントできないとのコメントの意味合いも分かりました。
難しいと自ら述べている問題について、拙い文章を書き綴ってしまい少し冷や汗をかいています。
rruさん、コメントありがとうございました。
以前、憲法九条と組合の関係についてコメントされた方と同じでしょうか。鋭い一言、今回も重く受けとめさせていただきます。これからも何か気になった点、ご意見ご指摘ください。
投稿: OTSU | 2006年9月 5日 (火) 00時11分
決算議会でしばらく仕事以外に手をつけられなかったのですが、その間も世の中はいろんなことが起きていました。こちらのブログでもいろんな議論があったみたいで参考になります。
私も、とりあえず飲酒運転のことについて考えをまとめてみました。微罪でも何でも極刑にすればいいってもんでもないというのは常々思っていたのですが・・
投稿: hammer69_85 | 2006年9月14日 (木) 01時52分
ハマーさん、コメントとTBありがとうございました。
TBくださった記事も読ませてもらいましたが、私も共感する所が多くあります。労働者にとって免職処分は極刑であり、情状酌量が一切認められず「結論ありき」へ流れていくことに危惧を覚えています。
もちろん飲酒運転は絶対撲滅させるべきだと考えています。したがって、悪質なケースの厳罰化は当然でしょうが、仮に数時間あけて酔っていないつもりで運転し、酒気帯び運転、即、懲戒免職となる仕組みまでは行き過ぎだろうと思っています。
なお、誤解がないよう繰り返しますが、決して飲酒運転や酒気帯び運転を容認するものではないことを強調させていただきます。
投稿: OTSU | 2006年9月14日 (木) 08時13分
さっそくのお返事ありがとうございます。
私もまだ若いのですが、何人かの後輩がいます。彼らがもし、何らかのトラブル(加害にせよ、被害にせよ)に巻き込まれて、私を頼ってきたら、どうしたらいいんかなぁ、と不安になる。
仮に彼が犯罪に手を染めて、懲戒免職となったとしても、出所後の彼の生活や、再就職先の世話をまでフォローせねばならないなぁとか・・考えることがあります。
まぁ杞憂だとは思うのですが・・・、万が一、執行委員長になってしまうと、組合員全員が対象だから、そういうトラブルに巻き込まれる確率も増えるんだろうなぁ・・とは思います。
なんにせよいったん仲間になったのだから、いっしょにどろをかぶって最後までフォローしてやりたいとは思うのです。
投稿: hammer69_85 | 2006年9月14日 (木) 20時43分
ハマーさん、その悩み、本当に身につまされます。
仲間として最大限助けたい気持ちが先立っていても、司法の壁は尊重されるべきものであり、組織として身動きできない場合があります。
このような会話も「身内だったら犯罪者でもかばうのか」と指摘を受けるかも知れません。言うまでもなく犯罪は絶対許されるものではありません。特に被害者が出た場合、その加害者をかばう立場では絶対ありません。
話が支離滅裂になりそうですが、やはり局面によって判断や対応の幅も変わってくるのかも知れません。いずれにしても難しく、悩ましい問題です。とにかく自分たちの周りから飲酒運転を撲滅していくことが重要な責務だと考えています。
投稿: OTSU | 2006年9月14日 (木) 22時40分
ただ組合というのは、人と人とのつながりだから、「あなたは犯罪者だからもう知りません」と言うことは(少なくとも自分には)できない思うんだけど・・ケースバイケースだとしかいえないし、いろんなケースにおいても弁護士をあっせんしてやることくらいしかできないかなぁ・・(弁護士費用までは負担するのはできんだろうけど)
話は飛躍するのですが、弁護を受ける権利ってのはどんな犯罪者にでもあるのに、どうも最近そこら辺が誤解され、(本来であれば依頼者のためにベストを尽くすのが当然の)弁護士に対するバッシングがあるのが気になります。
投稿: hammer69_85 | 2006年9月19日 (火) 00時01分