岐阜県の裏金作りと自治労の不祥事問題
7月の県議会一般質問により、岐阜県庁での組織的な裏金作りが明らかになりました。遡れば1995年に北海道庁で約24億円の裏金作りが発覚し、その後、25都道府県で総額436億円もの不正経理が公表されました。同時に知事や職員への処分、OBも含めた公費への返還など、厳しく反省しながら自浄への努力が加えられてきました。
裏金はカラ出張や架空の伝票操作などによって捻出され、各部署で官官接待などの費用に充てられていました。オンブズマンの広がりや情報公開が進む中、多くの自治体が悪慣習として続けてきた裏金作りは1990年代後半に断ち切られていたはずでした。
それが岐阜県は4億円超の裏金をなかったものとし、組織的な隠蔽工作に走ってしまったようです。1998年度に当時の副知事らの指示により、県の監査が及ばない職員組合の口座に2億2700万円の裏金が移されました。残り2億1400万円は、そのまま各課や職員が個人的に保管したとのことです。
驚くべきことに裏金の処理に困った県教育委員会職員が「400万円焼却した」と証言しています。私的に流用していた言い訳かも知れませんが、事実だとすれば信じられない衝撃的なニュースでした。合わせてショックだったのは岐阜県職員労働組合が裏金の隠蔽に協力していた点です。
自治労に加盟している岐阜県職労は、当然、自治労の不祥事問題を重く受けとめていたものと思います。2001年9月30日の新聞報道を口火とし、自治労本部に関わる一連の不祥事が次々と明らかになりました。法人税法違反や脱税により、自治労そのものや後藤森重元委員長らが有罪となる事件に発展しました。
使途不明金、簿外口座、簿外債務など不正経理の常態化が発覚し、自治労組合員からの本部への信頼は著しく失墜し、一連の問題に対する責任が厳しく追及されました。億単位の裏金作りが活発化したのは、1992年に就任した後藤元委員長の時代になってからと見られています。
とりまく情勢としては政界再編が加速化し、1994年には自治労出身の村山元首相が政権の座に着くような激動の時代でした。カリスマ性があった後藤元委員長を先頭に自治労の存在感が高まっていた時期とも言えました。しかし、決して元委員長一人の責任ではなく、不祥事を招いた組織的な体質や土壌があったと総括されています。
どのような事情や背景があろうとも不正な裏金作りなどが許されるものではありません。不祥事が発覚した以降、自治労本部は徹底的な真相究明、責任追及、借財の返済、組織や規約などを見直す再生プログラムの策定に取り組みました。一方で、独立した組合の連合体であるため、私どもの組合は自治労再生への道筋を見定めた上で、改めて加盟継続の是非を組合員へ問う方針を掲げました。
自治労本部も真摯な姿勢で再建に力を注ぎ、この問題を契機に脱退組合が増えた話は聞いていません。私どもの組合も2003年11月に開いた定期大会で、改めて自治労加盟の継続を確認することができました。また、自治労の不祥事問題を教訓化し、いっそう健全な組合運営に努めるため、既存の会計規則などを総点検する機会としてきました。
自治労の不祥事が明らかになった2001年、すでに岐阜県職労は県当局から裏金を預かっていたことになります。預けた側の責任は重大ですが、預かった県職労の責任も小さくないものと考えています。自治労の不祥事問題に対する忸怩たる思いは、加盟している組合に共通なものがあったはずです。
貴重な税金や組合費を払っている住民や組合員に対し、不正な裏金作りは極めて重い信用失墜行為です。このことは自治労の不祥事問題に直面した各組合の大きな教訓だったはずです。したがって、せめて自治労の問題が浮上した際、岐阜県職労は内発的なチェック機能を発揮すべきだったのではないか、と「傍目八目」的な立場からは感じているところです。
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コメント
ああ、そうですか。そんな事があったんですか。横浜に住んでいることもあって、正直知りませんでした。このご時世ですから発覚の時点で全国的な大騒ぎになる事柄かと思うのですが。
この記事を読んだ後、自治労のホームページを見たのですが、私が見た限り、この問題については何も触れられていません。社会保険庁や大阪市や夕張市の問題もそうですが、自らに降りかかっている問題なのに、何故自らきちんと調べて真相を明らかにしようとしないのでしょうか?こういう所が必要以上に公務員のイメージを悪くする原因だと思いますが…。
私は当事者でも岐阜県民でもないし、事の真相が明らかになってくれば、私が何も言わずとも厳しいメッセージが数多く寄せられる事になるでしょうから、とりあえずこの件自体には何も言いません。ただ、私たちはまず「労働者」なのですから、働くべき時はきちんと働き、守るべき事はきちんと守らなければなりません。そして世論の信用を勝ち取る事、これが今、官民左右を問わず、労働組合がやるべき事だと思います。平和とか護憲とか、政治に関する事とかはその後の事だと思います。もちろん、私も自らをさらに戒めて職務に励みたいと思っています。
投稿: 菊池 正人 | 2006年8月 7日 (月) 21時33分
菊池さん、コメントありがとうございました。
ご要望があった自治労不祥事問題について、このような現在進行形のニュースと合わせた記事投稿となってしまいました。
岐阜県の問題は詳細な事情を充分把握していない中で、踏み込んだ発言は控えたつもりでした。しかし、同じ公務員、同じ自治労組合員として残念な事件だと言わざるを得ません。
私も自治労のホームページや単組へ届くファックスに注目していましたが、今のところ自治労からの情報はありません。いずれにしても私の思いは、記事本文最後の段落に書いたとおりです。その意味でも自治労本部の対応を注目していくつもりです。
投稿: OTSU | 2006年8月 7日 (月) 22時07分
ナニをしているんですか。裏金なんて本来だったら特別背任で逮捕ですよ?なんでのんびりしてるんですか?みなで給料返還して得意の連帯責任でやればいいじゃないですか?明らかには委任行為です。ほんらい全員辞職するべきです。あまりにもひどい。
投稿: 庶民 | 2006年8月 8日 (火) 09時34分
庶民さん、私の歯切れの悪い記述の仕方が、お怒りの火に油を注いでしまったようで申し訳ありません。当事者ではなく、かと言って完全な部外者的な書き方もためらい、深刻な事件への危機感が薄い印象を与えてしまったようです。
本日、記者会見で梶原拓前知事も「認識していた」と表明しましたが、「自分には非がない」と言い訳に終始していたようです。前任者から引き継がされた負の遺産かも知れませんが、放置した責任は免れないものと思っています。
とにかく、このような事件が起きるたび、「他山の石」としないよう自分自身を戒める機会としています。
投稿: OTSU | 2006年8月 8日 (火) 22時52分
現在、公共工事の無報酬業務の実態を調査をしています。その関連で「公契約制度」の検索をしていたら、最初に飛び込んできたのが「公務員のためいき」でした。
自治労の不祥事や公立保育園の民営化など、多くの地方自治地に共通する課題についての記事を読ませてもらいました。
私は地方議員をしています。意識的に一般市民と役人、発注者と受注者(公共工事などの)との中間にスタンスを置くことを心がけて議員活動を行っていますが、これは案外骨の折れることです。
あなたの記事を読んで、似たような雰囲気を感じましたので、今後の活動の参考にさせていただきたいと思い、ごあいさつのコメントを入れさせてもらいました。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: ニン麻呂 | 2006年8月10日 (木) 11時42分
ニン麻呂さん、はじめまして。コメントありがとうございました。
このブログを続けていく上で励みとなるコメント、たいへん恐縮です。今後、私も「益田市の真実」へ訪問させていただきますので、こちらこそよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2006年8月10日 (木) 12時50分
労働組合の役員が使用者、会社から不正な金を受け取る。怒りがこみあげてきます。労働組合内で会計報告することのない裏金,公金を
つかったのですから、個人で返済しろ。犯罪者は、罪をつぎない、そして労働組合と職員と県民を裏切ってきたことを謝罪せよ。
投稿: | 2006年8月17日 (木) 12時59分