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2006年7月 8日 (土)

小泉政権最後の骨太の方針

「プレスリーのところに行っている時、テポドンを撃たれたら格好が悪かった。おれはついている」と小泉首相が6日夜、自民党幹部との会食の際、北朝鮮のミサイル発射が訪米後だったことを「運の強さ」として自慢したそうです。

先月末の訪米で大ファンのエルビス・プレスリー邸を訪問した小泉首相は、ブッシュ大統領夫妻の前でギターを弾くマネして、拙い英語で歌っていました。その大はしゃぎした場面が何回もテレビで報道されていました。そのような瞬間にミサイルが発射されていたら「最悪なタイミング」だったと思っていることは小泉首相の本心かも知れません。

「卒業旅行」と揶揄された今回の外遊、品格が疑われるような軽薄なパフォーマンスを続けていた後ろめたさが小泉首相にも残っていたと皮肉れる危機感のない発言だと思っています。しかし、北朝鮮を増長させないよう意図的に茶化していると評価する評論家もいるようです。

さらにブッシュ大統領に合わせるため、訪米中の振る舞いすべて小泉首相の計算したものだと分析する識者がいるのにも驚かされます。いずれにしても良好な日米関係が維持されているのは両首脳の個人的な絆の太さの好影響だと見られています。確かにブッシュ大統領に対しては、「ワン・フレーズ」政治で短絡的な外交路線の小泉首相が最適なパートナーだったと振り返ることができます。

さて、小泉「構造改革」路線の象徴として、クローズアップされてきた骨太の方針。その呼称が来年以降も続くのかどうか分かりませんが、9月に自民党の新総裁が決まるため、今回発表された骨太の方針が小泉政権最後のものとなります。

政府は7日、経済財政諮問会議と臨時閣議を相次いで開き、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006(骨太の方針2006)」を正式決定した。2011年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させることを目指し、最大14.3兆円の歳出削減策を盛り込んだ。歳入改革では消費税の社会保障目的税化を検討する方針を示したものの、税率引き上げの幅や時期は明記せず、具体策は次期政権に委ねた。[時事通信社:2006年07月07日]

来年7月の参議院議員選挙を控え、消費税の課題などを曖昧にした「骨抜き」の方針となったと言われています。もともと今までも骨粗鬆症気味の骨太の方針で、小泉首相が異常な執念を燃やしたのは郵政民営化の問題だけでした。その民営化さえも本当に日本国民のためのものだったのか数年後に答えが出るはずです。

中味を精査しないで数値目標ありきの総人件費削減問題など、公務員組合側にとってもカルシウム不足のスカスカ方針だと批判しなければならない面が含まれています。特に「官」と「民」の責任と役割を無視した短絡的な「官から民へ」の流れが、最近、「構造改革」の負の側面を浮き彫りにしているものと感じています。耐震偽装やシンドラーのエレベーター事故の問題など、今一度、立ち止まり総括すべき事例だと考えています。

前回記事「財政破綻した夕張市」で記したとおり、財政破綻は絶対避けるべき命題であることは言うまでもありません。したがって、財政健全化に向けた計画を立てること自体、労働組合をはじめ誰も拒むものではありません。その上で行財政改革における労使課題に関し、組合は総論が賛成でも、各論は双方の立場を尊重しながら真摯な交渉で決定すべきとの立場となります。

最後に蛇足です。夕張市が財政破綻しましたが、国家財政も破綻しているのと同然な状態だと思っています。破綻を定義する制度がないだけで、仮に自治体の例を当てはめれば背筋が寒くなる数字を直視することになります。税収を目安に国の標準財政規模を約50兆円とした場合、実質収支の赤字は50%を超えてしまいます。

さらに今年度の公債残高は約542兆円、夕張市を「破産」とするのが気の毒な例示となってしまいます。とにかく国は国債を自由に発行できるため、今のところ「破産」のルールがないだけの単なる猶予期間に過ぎないと認識することが懸命だと思っています。

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