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2006年3月14日 (火)

在日米軍再編問題

在日米軍再編に伴う米海兵隊岩国基地への米海軍厚木基地の空母艦載機移駐の賛否を問う山口県岩国市の住民投票が一昨日行なわれました。投票率は58.68%で、成立する基準の50%を超え、反対43,433票、賛成5,369票、無効・その他880票で反対票が圧倒多数を占めました。

この結果を快く思わない自民党幹部や一部の学者らは「国の安全保障問題で一自治体の住民投票はなじまない」「合併を一週間後に控えた新市長選挙の事前運動だ」などと批判しています。さらに政府は当初から「投票結果は法的拘束力はない」とし、地元住民の意向を無視する不誠実な構えでした。

ところで最近、このブログを知った方にとって今回のテーマは唐突な印象を受けられたかも知れません。以前から訪問いただいている方はご存知のとおり、バックナンバーには「個別的自衛権と集団的自衛権」「拉致問題を考える」などもあり、「公務員」問題から少し(かなり?)かけ離れたテーマの投稿も重ねていました。

その理由として、このブログは組合活動を身近に感じてもらうための一つのツールと考えています。そして、組合活動の一部には平和な社会をめざす運動が位置付けられているため、今回のようなテーマの記事も時々投稿してきました。

「組合は組合員の労働条件の問題のみに力を注ぎ、政治的な運動は控えるべきである」との声が内外から示される場合があります。確かに職場の労働環境改善に手が回らないのにもかかわらず、政治活動の方が重点化されていたら問題だと思います。

それでも以前の記事「組合の平和運動」でも述べましたが、組合員やその家族のためにも一定の政治や社会的な運動にも組合は関与すべきものと考えています。また、それらの活動を進める方向性は組合員全体で意思一致をはかることが前提となります。一部の組合役員だけの思いで突っ走るべきものではなく、組合員全体での共感を大事しなければなりません。

以前、このような文脈で書いた際に「組合執行部のリーダーシップも必要なのでは?」と指摘を受けました。「右か左か、どうしますか?」と組合員へ問いかけるような主体性のない話ではなく、当然、責任を持った方向性を示す執行部のリーダーシップは絶対必要であると考えています。その上で、執行部が示す方針が組合員全体から共感を得られるよう努力すべきものと思っています。

とりわけ政治課題に関しては切り口によって組合員のとらえ方は分かれがちであり、だからこそ丁寧な周知や働きかけが重要です。と言いながら必ずしも日常活動の中で、実際、そのように取り組めていないことを反省しているところです。

ようやく記事タイトルにつながる訳ですが、組合は在日米軍再編に反対の立場で、この間、三多摩平和運動センターが呼びかけた反対集会やデモ行進への参加を組合員の皆さんへ呼びかけてきました。その際、「なぜ、反対なのか」の説明が不足していた点は否めませんでした。

したがって、このテーマを今回の記事で取り上げることによって、不充分な点を少しでも補えればと考えました。前説が長くなりすぎて、本論自体が簡潔になってしまい恐縮ですが、「なぜ、在日米軍再編に反対なのか」おおまかな理由は次のとおりです。

まず三多摩にも在日米軍の横田基地があります。市街地の真ん中にある横田基地によって、日常的な騒音被害や墜落の危険性に周辺住民はさらされています。この点に限れば、保守系の地元首長らも反対の立場となります。軍民共用化などの問題で割れる場合もありますが…。

この再編計画では横田基地に航空自衛隊の航空総隊司令部が移転し、「日米共同統合運用調整所」が設置されることになっています。つまり横田基地の機能強化となり、三多摩住民の悲願である縮小・返還が遠ざかる再編計画だととらえています。

さらに軍事基地は、ひとたび戦争状態になった際、攻撃の標的となるのが必然です。要するに組合(私自身も)は、軍事基地そのものに反対しています。日米安保などへのとらえ方は、人によって温度差があるかも知れません。ただ誰もが戦争は起こしたくないものと考えているはずです。そこで昨年の組合定期大会のスローガンを紹介し、この記事の結びとさせていただきます。

 武力で平和は創れない 今こそ考えよう平和憲法の大切さ

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コメント

お久しぶりです。courts改めfugenです。おかげさまで無事就職できることになり、これを機にブログ「当分ノンポリシー」を一新することにしました。もしよろしければ、リンクの変更をお願いします。

新ブログ「Courtclerk's Horizon」
URL:http://fugen.cocolog-nifty.com/blog/

これからますますOTSUさんのブログを参考にさせていただくことが多くなると思います。つきなみですが、応援しております。

投稿: courts改めfugen | 2006年3月15日 (水) 11時05分

お疲れ様です。
在日米軍基地移転に伴う岩国基地機能強化についての住民投票について、私の住む広島の人々も大きな関心をもって見守っていました。
当初、住民投票自体が成立するのかさえ危ぶまれた状況がありましたが、結果はご承知のとおりとなりました。
しかし、政府・自民党、米軍は「この住民投票の結果が何ら影響を及ぼすことはない」と住民=国民の意向を無視する姿勢をあらわにしています。
「国防は国家が行うものであり、住民が関与すべきものではない」というのが理由のようですが、その『国防』に費やされるのは住民の税金であり、普段の騒音被害のみならず、有事の際、危険にさらされるのは住民の生命・財産であることを考えれば、まったく理解できる話ではありません。世界各地で何の罪もない住民がテロの犠牲になっていることや、アメリカの軍事戦略に加担していると認識されている日本国民の生命・財産がテロの危険にさらされるのは有事に限ったことではないのかもしれません。

『労働組合が平和運動を取り組む理由』は、若い組合員を中心になかなか理解されていません。また賃金・労働条件をはじめとする課題に追われ、組合そのものが平和運動に取り組みきれていないことも事実です。
戦争では多くの国民=労働者が戦場に送られ、戦うことになります。前大戦では、国家総動員体制の中で残念ながら労働組合も戦争に反対する勢力となりえませんでした。そうした反省と事実を学ぶ中から平和運動に取り組まなければと考えます。
数年前、日本青年学生平和友好祭実行委員会の取り組みで(瑞穂町・六道山公園展望台からだったと思うのですが)横田基地を見ました。その時、訓練はありませんでしたが、広い関東平野に横たわる横田基地から響き渡る轟音の大きさを考えたときには、周囲の住民はとても安心して暮らせないだろうと思いました。
広島に米軍基地はありませんが、日本有数の海上自衛隊基地があります。また大戦中は『軍都・廣島』として大陸占領の要として栄えました。さらに大戦中、毒ガスの研究・製造を行っていたため地図から消された島・大久野島もあります。
広島の被害と加害を学ぶ『ヒロシマ平和の旅』という取り組みが毎年5月末に行われています。微力ながら私も関っています。関心を持たれた方は、是非ご参加ください。
最後は勝手に宣伝をしてしまい、申し訳ありません。主旨にそぐわないと判断されましたら削除してください。
ともにがんばりましょう!

投稿: アンディ・ベム | 2006年3月15日 (水) 17時18分

courts改めfugenさん、就職おめでとうございます。
さっそく新しいブログを相互リンクさせていただきました。裁判所のお仕事、頑張ってください。これからも、よろしくお願いします。

アンディ・ベムさん、いつも一つのブログ記事となるような内容の濃いコメントありがとうございます。
このような相互交流となる報告は大歓迎です。これからもPRも含めて、お気軽にコメント欄をご利用ください。

投稿: OTSU | 2006年3月16日 (木) 00時04分

ただ通りすがっただけの者ですが、労働環境改善以外の組合活動に関しては批判的な立場です。
なぜなら、我々組合員が組合費を払っているのは、労働環境を改善してくれることへの対価です。

>とりわけ政治課題に関しては切り口によって組合員のとらえ方は分かれがちであり
と認識されているならば、組合員から支払われている組合費を
政治活動等に支出することが、組合員の総意に基かない支出であることは理解いただいているのではないでしょうか。

平和運動や政治活動は、それぞれNPO団体等や政党がそれを担っており、組合がそれをしなくてはならない必然性がありません。個々人がそれらの団体に加入なり投票すればよいだけのことです。組合費で平和運動や政治活動を行うのは、労働環境改善と抱き合わせでそれらを売りつけるような行為であると考えます。

投稿: 通りすがりの公務員 | 2006年3月23日 (木) 22時59分

通りすがりの公務員 さん、コメントありがとうございます。
たびたび投げかけられる大事なご意見ですので、次回の記事でしっかりお答えさせていただきます。
したがって、たいへん恐縮ですが、ぜひ、明日以降も改めてご訪問いただけるようよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2006年3月24日 (金) 07時24分

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» 艦載機移転に反対が89%~岩国の住民の意思が示された [ニュース・ワーカー]
 米海兵隊岩国基地(山口県)への米空母艦載機部隊移転計画をめぐる岩国市の12日の住民投票で、計画に「反対」が有効投票の89%に上った。当日有権者数8万4659、有効投票総数4万8802、「賛成」5369、「反対」4万3433、無効など880。投票率は58・68%。有権者全体との対比でみても、「反対」は過半数を超えている。受け入れ推進の商工会議所などは「棄権」を呼びかけていたとされる中でのこの結果は、地元の民意が明確に示されたものと言うしかない。  政府・与党からは「安全保障や防衛は国政の責任で住民... [続きを読む]

受信: 2006年3月15日 (水) 00時59分

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