労働組合の使命
エニグマさん、前回記事「公務員組合の春闘」へコメントありがとうございました。このブログは多様な意見、特に民間の方からの厳しいご意見を謙虚に受けとめる場としていますので、いつも貴重なご指摘をいただき本当に感謝しています。
公務員連絡会(自治労など公務員産別組合の組織)は、人事院総裁あての「民間企業給与等実態調査において、100人未満の小規模企業を加えることについて反対を求める署名」活動に取り組みます。呼びかける対象は組合員やその家族が中心となりますが、エニグマさんのようなご意見をお持ちの方にも共感いただける運動が求められているはずです。
その広がりが不充分なままでは公務員の既得権を守るためだけの運動とみなされ、結局のところ公務員組合側が劣勢な立場に追い込まれてしまいます。その意味で、このブログを通して人事院の官民比較調査方法のあり方について、議論を交わせることは意義深いものと思っています。
公務員連絡会が取り組む反対署名の主な要請事項は次のとおりです。
- 歴史的・制度的に確立された官民比較方法の基本的な枠組みの見直しを意図する小規模企業調査を実施しないこと
- 官民比較方法のあり方の検討にあたっては、2005春闘回答並びに2005人勧期要求提出の際の総裁見解を堅持し、公務員連絡会と充分交渉・協議し、合意すること
昨年6月に示された人事院総裁の見解は「現行の比較企業規模は民間会社の従業員の過半数をカバーしており、このような状況に大きな変化がなければ適当なものと考えている」とのことでした。
今年になって、その見解を示していた総裁が交替した訳ではありません。強いて「大きな変化」をあげれば、公務員の総人件費削減を計画している政府が人事院へ圧力を加えている点です。人事院は公務員の労働基本権制約の代償機能として存在し、中立・第三者機関でなければなりません。その人事院が政府の圧力に屈することは言語道断であると公務員連絡会は強く抗議しています。
ここまで書き込んできましたが、公務員組合側からの言い分に過ぎないと思われている方も多いはずです。「公務員の賃金は高すぎる」「賃金水準に見合った仕事をしていない」と日頃から感じられている方たちは、この機会にドンドン下げるべきと政府や人事院側にエールを送られるのかも知れません。
またまた、この議論は果てしない平行線をたどる心配があります。が、そもそも公務員賃金は社会一般の情勢に適応するよう求められています。その趣旨のもとに人事院勧告があり、調査対象の企業規模を今まで100人以上としてきました。
今回、公務員連絡会が問題視している点、つまり私も同様ですが、長年の経緯の中で定めてきたルールを一方的に破ろうとしていることが問題だと考えています。財政が厳しいことは承知し、公務員組合側も襟を正すべき点は正してきています。ただ財政が厳しいから「賃金を下げるため、明日からルールを変えます」と言われ、「はい、分かりました」では労働組合の存在意義が疑われてしまいます。
労働組合の「物分かりの悪さ」は、ある面で社会全体の労働条件の水準維持や底上げの役目を果たしてきたはずです。いろいろ関連したバックナンバーが思い浮かびましたが、ここでは「ニューヨークで25年ぶりのストライキ」を一例として紹介させていただきます。
この間の議論から簡単に答えが出せないことは経験済みでしたので、あえて公務員賃金の水準がどうあるべきかの問題には触れませんでした。とにかくポイントは重大なルール変更に際し、当事者の代表と充分交渉・協議し、合意を前提とすべきであることが不可欠だと考えています。また、そのことに力を尽くすことが労働組合の重要な使命だとも考えています。
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コメント
一部の組合が,それが公務員のであれ民間のであれ,本来的にやるべきことをできずに存在意義を危うくするような事態は,他の組合にとっても不利益になると思います。
客観的な根拠もなしに,世論迎合的に公務員の条件を切り下げるのは不適切だと思います。
大変でしょうががんばって下さい。
投稿: WontBeLong | 2006年2月23日 (木) 00時35分
WontBeLongさん、さっそくコメントありがとうございました。
民間の方であるWontBeLongさんのご意見は、いつも説得力あり、大きな励みとなっています。このブログでの議論などを踏まえ、公務員組合の運動が一人よがりなものとならないよう丁寧に進めていくべきものと思っています。
その意味でも、今後も貴重なご意見やご指摘をよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2006年2月23日 (木) 06時49分
そもそも長引く景気低迷を引き起こした政策の失敗を公務員批判とりわけ組合批判にもっていき自分たちへの批判をかわそうとしているのは誰でしょうか?もう少し国民はその辺をよく考えるべきだとと思います?国会議員の数は減っていないし、失敗しても何のペナルティーも受けてないのですから。まずそこに気づかなければなりません。失敗すれば責任を取る。社会人として当たり前です。この場合国民が取らせるといったほうがよいでしょう。そうでなければ同じことの繰り返しになります。その後で公務員批判をしても遅くはありません。ただ公務員が危機感をもったことも事実ですので一応の成果はあったとみるべきでしょうが。
投稿: ぷにぽんた | 2006年2月23日 (木) 20時05分
ぷにぽんたさん、お久しぶりです。コメントありがとうございました。
そのように言っていただくと救われる思いです。ただご指摘のとおり公務員側も危機感を持ち、「襟を正すべき点は正す」「変わるべき時は変わる」ことを意識しなければなりません。その上で、いろいろな考え方を今後も主張させてもらうつもりです。
ぜひ、これからもお気軽にコメントをお寄せください。よろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2006年2月23日 (木) 22時57分