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2006年1月15日 (日)

「既得権」にもメリハリが必要

「公務員は働いていない!?」のタイトルは、前回で一区切りさせていただきました。そのことで、そのテーマの議論を終わりにさせようと思った訳ではありません。同じタイトルで「Part5」などとして続けていくと、その時の記事がどのような内容だったか振り返りづらくなります。投稿した記事内容が、後から分かりやすくなるよう「Part」は3程度にとどめようと考えています。

そもそも、このブログは公務員以外の方々との率直な意見交換の場になることも願っていました。その意味で、前回記事「公務員は働いていない!? Part4(最終回)」へ寄せられたコメントは大事に取り扱うべき問題提起として受けとめています。

民間労働者さんから改めて「私が公務員を非難する最大の理由は、給与(権利)は上場企業並を標榜するくせにその見合い(義務)は比例していないことにあります」とコメントが示されました。さらに若手経営者さんから「この先の増税を控え、既得権を残してはならないし、正当化を許すべきでもない」と公務員の「既得権」問題をクローズアップしたコメントが加えられました。

この間、Part4まで続いた議論の口火は、最近の記事「お正月、フランスとドイツは…」への若手経営者さんと民間労働者さんからの公務員に対する厳しいコメントからでした。私自身、前回までの記事の中味で、お二人から示された問題提起に対して的確に答え切れたとは思っていません。ただ「頑張っていれば良い」だけでは済まない時代だと認識し、キーワードとした「変わるべき時は変わり、守るべきものは守る」をどう実践していくのかが問われているものと自覚しています。

その上で、今回、指摘された「既得権」問題を取り上げてみました。まず「あなた方は非常識な家賃で社宅に住めるのでしょうが、我々は売上が、利益が出せなくなったらそういった福利厚生がなくなるし、文句も言えないのです。なぜだかわかりますか?国や自治体と違って売上が減れば使える、もらえるカネも減るからです。我々はそれを知っているから必死になるのです」の言葉は、重く受けとめなくてはなりません。

「労働条件や権利を主張しぎて、会社がつぶれてしまっては元も子もない」と耳にすることがあります。確かにその通りかも知れませんが、経営者側が常套句とした場合、労働者側が不当な条件を強いられる懸念も見過ごせません。そのため、様々な労働法制が整備され、労働組合が誕生してきた歴史(バックナンバー「なぜ、労使対等なのか?」参照)を注目すべきものと思っています。また、極端な格差社会への一因となったアメリカの労働運動の衰退(バックナンバー「ニューヨークで25年ぶりのストライキ」参照)も押さえる必要があります。

一方で、バブル崩壊以降、雇用問題などで苦しい時代を乗り越えてきた民間会社の労働組合が数多くあることも忘れてはなりません。その労苦を公務員の組合が「他人事」とした場合、連合の中での官民の結束は表面的なものと言わざるを得ません。つまり今、公務員の組合も時代情勢の厳しい変化をとらえ、乗り越えるべき壁に直面していることを体感すべきものと思っています。

しかし、だからと言って、オールorナッシングではないはずです。どうしても「既得権」という言葉にはマイナス・イメージが付きまといますが、労使交渉の結果、獲得してきた公務員の労働条件すべてが「非常識」だと決め付けられるのは心外です。私たちの賃金や福利厚生の予算は、確かに税金を原資としています。そのことは常に意識しなければなりませんが、やはりメリハリをつけた「既得権」見直しが必要だと考えています。

ここで誤解がないよう申し添えます。一切の「既得権」見直しを拒否するために弁明している訳ではありません。実際、数年前から私どもの市では労使で率直な協議を重ね、当時の時代背景の中では許されてきた様々な「既得権」の見直しを進めてきました。「襟を正すべき点は正す」とした問題意識やとりまく情勢を組合員相互に共通理解し、給料袋の中味(明細)が減っていくことを受け入れてきています。

今回も「既得権」というキーワードに絞って書き込みましたので、お二人の問題提起に対して充分に答え切れていないものと思います。あせらず、今後、いろいろな角度から投稿を重ねることにより、少しでも相互の理解が得られるよう努めていくつもりです。

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コメント

こんばんは。

今日、テレビで群馬県の太田市長について報道している番組を見ました。
私が以前に画期的と言った黒字の自治体の市長です。
この市長はとにかく「改善」をモットーにしている市長のようで、その改善による結果を市民も知っていて、よい評価をしているのには驚きました。努力がみんなに伝わっているんだなと。

この市長が言うには赤字の役所など無くしてしまえばいいと言い切っておりました。なかなか強気なことを言うなと思いましたが、この市長は10年で(確か)160億のコストダウンを計画、実施しているようで、経営者感覚で市政を行っているがゆえの強気な意見なのだなと感心しました。
こういう市長が増えて欲しいと思います。

さて、既得権益について書かれておられますが読んでみて疑問が生じました。
例えば、赤字の役所であっても、あなたがおっしゃっている大事な、労働者として譲れない既得権益は維持していくべきなのでしょうか。

私の会社にも労働組合があります。私は転職組で、労働組合のない小さな会社から大企業へ運良く転職できた身でしたので組合のスタンスや主張を知ったときは驚きました。
この不景気に賃上げを要求しているのには正直驚きました。まあ、会社は儲かっていましたから、組合としては当然の要求らしいです。
ただ、組合って頑張っている人もナマケモノも一緒くたにしてしまうんですよね。頑張っていなくても、賃上げの恩恵にはナマケモノも預れるし。
ナマケモノは解雇した方が社員のモチベーションも上がるんですけどね。
労働組合っていうのは私から見たら両刃の剣のようなものですね。

投稿: 民間労働者 | 2006年1月22日 (日) 00時25分

現業公務員管理職です。
組合対策に90%以上のエネルギーを費やしています。
組合は事務所の事務機その他を使い放題です。これに消費されるコストを指摘することは、タブーです。
団体交渉に次ぐ団体交渉で、事実上のストライキをされてしまいますから。
そんな組織がまともであるわけがありません。

投稿: 自業自得ではないかと | 2006年12月 9日 (土) 14時40分

追記:
もちろん、個人の能力差に言及することも、適材適所への人員配置異動に関する議論もタブーです。
組合が人事権を握っているにちかい地方組織も存在します。
また、給与は年齢に応じて設定されるため、平の係員でも高齢になれば、若い管理者より遥かに高い給与を得ていることも普通におこります。
これを偉さ?と勘違いして、上司の指示に従わないものもいる、これを労働組合が援護するというような、むごい状況が現出します。
かつての国鉄と同じ状況でしょう。
優勢のように民営化されれば、まともな職員が救われると信じています。

投稿: 現業公務員管理職 | 2006年12月 9日 (土) 18時07分

現業公務員管理職さん、コメントありがとうございます。
組合対策に相当ご苦労され、ストレスがたまっているようにお見受けします。組合側の言い分を聞かないまま、決め付けた物言いは避けるべきなのかも知れませんが、たいへん残念な労使関係だと感じました。
労使交渉において労使対等な立場で、時には激しい議論が必要です。それでもお互いの信頼関係は維持し、さらに今の時代、住民の目線を意識することも重要なはずです。御用組合のような見られ方は論外ですが、オールorナッシングの闘争だけでは結果として組合員の利益は守れないだろうと思っています。
以上のようなことを心がけ、私自身は日常的な組合活動に臨んでいるつもりです。また、「襟を正すべき点は正し、主張すべは点は主張する」立場で、このブログを運営しています。
ぜひ、お時間が許せるようでしたら他の記事もご覧いただければ幸です。よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2006年12月 9日 (土) 19時13分

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