変わるべき時は、いつ?
このブログの記事を通して、コメント投稿者同士の議論が白熱することは歓迎すべきことです。ただ最近、「熱い」議論が気まずい雰囲気を招いてしまったようです。それでも、一人ひとりのご意見や、その後の皆さんの対応は真摯なものでした。
結論そのものは相手と違っても「そうかぁ、そんな考え方もあるんだ」と立場や年齢を超えて、お互いの意見を気遣える場になれるよう願っています。いずれにしても、このブログへコメントを寄せてくださる方が皆、真剣であり、いわゆる「荒らし」的な方が一人もいないことに心から感謝しています。
さて、前回と前々回の記事は「バカの壁」(養老孟司・著)を踏まえ、窓口開庁時間や公務員の人件費削減問題の論点整理を試みてみました。このブログは、もともと多様な視点や考え方があることを前提に投稿を重ねています。したがって、ことさら「バカの壁」を強調しなくても記事のスタンスは基本的に同じであるため、そのタイトルで続けるのは「Part2」で終わりにしました。
直近の二つの記事をお読みいただいた方は「具体的な事例に対する結論が曖昧」「すべて労使交渉に委ねている」との印象を抱かれたかも知れません。「変わるべき時は変わり、守るべきものは守る」の言い方も、結局は「何も変えたくないための言い訳」だと思っている方もいらっしゃるかも知れません。
今回、それらの疑問に対してお答えします。私たち市役所職員の誰もが「自分たちの労働条件や働き方が絶対正しく、一切変える必要がない」とは考えていないはずです。しかし、具体的な事例に対して「どのように、どこまで変えるのか」との議論になると、一人ひとりの判断は大きく分かれるものと思います。
「市役所の窓口は夜10時まで開けるべきか、否か」「給料は多い方が良いけれど、少し下げられても仕方ないか、否か」「もっと明確な成績主義が必要か、否か」など、それぞれ職員個々人によって考え方は違うはずです。
組合側の主導で答えを一つにして、市側に投げかける方法もあり得ます。しかし、やはり労働条件のマイナス面の変更の場合、市側から提案が示され、その是非を検討していくことが多くなります。
提案された後、組合執行部は職場組合員と話し合いの場を持ち、問題点の有無を検証していきます。組合員の労働条件の問題、現場を熟知した視点からの市民サービスの問題などを多角的な検討を加えることになります。
その際、組合員の中に多様な視点や意見があることは、市側の提案に対する的確なチェック機能を果たせることであり、組合の強みと考えています。したがって、組合役員が先走って個別課題に対する結論を決め付けるのは、なるべく控えようと心がけています。
「変わるべき時は変わり、守るべきものは守る」などと精神論的な言い方が多くなりがちですが、「変わるべき時」や「襟を正すべき点」は組合員全体の合意形成を大事にしながら判断すべきものと考えています。実際、ここ数年、このような手法を大事にしながら組合員とともに厳しい判断を下し、見直した具体例が数多くあることを申し添えさせていただきます。
最後に一言。時には労使交渉において、組合員から信任を受けている執行部の責任による判断や、強いリーダーシップを発揮する場面も必要です。しかし、なるべく小泉首相の手法を反面教師としながら私どもの組合では、組合員の声を重視した組織運営に最大限努力していこうと考えています。
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コメント
すみません。手違いで、この記事「変わるべき時は、いつ?」に対し、コメントを受けられない設定にしていました。コメントを試みた方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんでした。
投稿: OTSU | 2006年1月30日 (月) 16時00分
はじめてコメントします。通りすがりの公務員受験生です。
謙虚に、かつ真摯に自らの仕事と向き合われる姿勢に感銘を受けました。
いくつかの記事、そして議論を読ませていただき、非常に勉強になりました。
「窓口の開庁時間延長について」などについては、一人で賛成・反対の両方の論を頭の中で組んでみたりしてしまいました(笑)
私自身ついつい、自分の歩いている道を自分の立場に都合の良い理屈で舗装して、頭を切り替えてしまうことも多いのですが、
立ち止まって複数の視点を持つことの大切さを改めて認識しました。
また、妥協をしないことを前提とした議論は難しいな・・・という感想も持ちました。
社会の真理は一つではなく、正しさも相対的なものでしかないと思うので、複数の視点を持ってもその先もまた(私には)難しいです。
記事に直接対応したコメントでないことをお許し下さい。長文失礼しました。
投稿: Gral | 2006年1月30日 (月) 22時15分
Gralさん、はじめまして。コメントありがとうございました。
ある面で歯切れの悪い記事が続いていると自分自身では思っていましたので、このようなコメントたいへん嬉しく感じました。ぜひ、これからもお気軽にご訪問ください。
投稿: OTSU | 2006年1月31日 (火) 06時49分