「バカの壁」を踏まえた論点整理 Part2
このところ記事本文を凌駕する幅広い観点からのコメントをいただき、たいへん恐縮しています。また、以前にも話しましたが、記事内容に関連する場合はコメントされた方同士での意見交換も大歓迎です。おおいにご利用ください。
ここで少し、申し開きさせてください。本来、せっかく頂戴したコメントを受けとめた内容にすべきなのかも知れませんが、最近の記事は身近な題材のものが続いています。世の中全体の動きのもとで公務員が今、どのような位置に置かれているのか掘り下げる視点も非常に重要なことだと考えています。
私自身、今までに「誇大妄想」と揶揄されるような視点での記事も投稿してきました。今後も一つの問題提起として、そのような視点での記事も書き込んでいくつもりです。ただ自分たちの日常的な働き方が問われている時に「小泉構造改革がいけない」などと話を広げた場合、論点のすり替えや逃げている印象を与えかねません。したがって、より具体的で身近な題材を取り上げた際は、あまり話を広げないように努めています。
WontBeLongさんから「役場の窓口の人から各省庁事務次官、総理大臣まで、みんな公務員」のご指摘がありました。そのあたりが確かに、ごちゃ混ぜになると論点がかみ合っていきませんので、なるべく注意していこうと思います。なお、最近の記事で対象としている公務員は、言うまでもなく私たち市役所職員であることを申し添えさせていただきます。
さて、最近の記事「窓口開庁時間の延長問題」へ本当に多くの方からコメントをいただくことができました。そのコメントの中で、あきらさんが「窓口の証明書交付などの業務は正規の公務員である必要がない」とし、正規公務員の仕事は企画立案・マネジメントのみにして人件費を削るべきと提言してくれました。なお、あきらさんは労働者の待遇がどうあるべきかは「また別な話」とも付け加えていました。
その直後のコメントで、literacyさんは「本当になすべきことは、正規雇用を不正規雇用に近づけることではなく、不正規雇用を正規雇用に近づけていくこと」とし、「民間労働者の労働条件が悪すぎる」と発言されていました。
お二人のコメントを切り口として、公務員の総人件費削減のための手法をいくつか例示しながら、それに対する公務員組合側(つまり私)の問題意識や論点を整理してみます。
まず、あきらさんが取り上げた正規公務員の仕事を非正規の職員(又は民間)へ委ねていく手法です。定型的な住民票の発行は自動交付機で充分まかなえています。しかし、第三者請求などで複雑なパターンの時、確かな知識と経験が重視されます。
そもそも正規公務員が証明書発行だけの仕事にとどまることはなく、バックヤードで様々な業務も担当しています。その他、バックナンバー「市役所の窓口業務も民間参入?」でも、いろいろな問題を提起してきたところです。要するに、この手法の採用にあたっては、正規公務員の役割を総合的に検討した上で判断すべきものと思っています。
正規公務員以外に委ねれば経費節減となる大前提は、非正規職員や民間労働者の待遇が正規公務員より下回っている場合です。literacyさんの問題意識と同様に自治労は、社会的な「均等待遇」原則の実現をめざしています。バックナンバー「民間委託は『安上がり』の悩ましさ」でも様々な思いを書かせていただきましたが、この「均等待遇」が実現できれば正規公務員以外に委ねても経費削減につながらなくなるはずです。しかし、残念ながら現実的な道のりは非常に遠く感じています。
次にクローズアップされるのは、公務員賃金の水準を引き下げる手法です。官民比較を基本にした人事院勧告は、ここ数年ずっとマイナス勧告が続いています。最近、さらに大胆な引き下げを企図したルール自体を見直す動き(バックナンバー参照)が強まっています。
この記事の論点を少しまとめてみます。総人件費削減の主な手法は「正規公務員の数を減らす」「公務員賃金を引き下げる」の2通りです。それぞれ慎重な検討を加え、妥当もしくはやむを得ないものと判断できるのならば、公務員組合側も受け入れる覚悟を持つべきものと私は考えています。
よく最近使う言葉は「変わるべき時は変わり、守るべきものは守る」でした。その最も守るべきものは、労働条件の問題は労使対等な交渉で決めるという原則です。その交渉を通して、かつ組合員との合意形成がはかれた際は、厳しい結果でも真摯に受けとめていく姿勢が重要です。
最後に、誤解がないよう申し添えなければなりません。公務員への厳しい風当たりにひるみ、初めから引き下がることを覚悟している訳ではありません。主張すべきことは毅然と主張し、労使の「バカの壁」を尊重した上で、結論を引き出すための徹底的な論戦が欠かせないものと考えています。したがって、このブログを通し、私と同様なご意見の方が少なくないことを知り、大きく勇気付けられていることを付け加えさせていただきます。
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コメント
にある人材派遣会社の社長の言葉を載せます。以前とある地方公共団体(名前はしんでも明かせないそうです。)に頼まれて「試験的」に勤務評定を行ったことがあるそうです。そのときの結果が、最高点の職員で52点であったそうです。(100点満点で)通常一般企業にいる場合、最高点は90~95点でこのような人はすぐにでも独立開業が可能な優秀な人材ですので、企業は囲い込むのだそうです。そして「リストラ」要因になる点数の目安が50点だそうです。30点切ったときは「早期希望退職者」のリストに入るのだそうです。ちなみに森永先生が面白いことを言っておられました。「希望退職者」とは本人の「希望」ではなく、企業側の「希望でやめてもらう」退職者だそうです。
ならば公務員の皆さんはどうなるのでしょう。この現実をどう受け止めるのでしょう。ちなみにこの評定会社は大手であり、上場企業の多くの勤務評定も手がけており、外郭団体の評定もしたことがあるそうです。定評のある会社です。
ちなみに平均値は36点!!おいおい!役人全員「希望退職者」かあ!って感じだったそうです。それでもまだ「一生懸命やっているから。」とか「自分たちの仕事は利益目的で無いから」とかいって言い訳していたそうです。
違います!「勤務評定」です!仕事の仕方や改善をしているか?創意工夫はあるか?自分の使命を理解しているか?今日何をすべきか?ということの評定です。どれだけ甘いのでしょうか?といっておられました。そろそろ現実を見なければ国がつぶれます。平等社会は終わったと思うのですが・・・・・
ちなみに年代別に見ると20代の平均点は45点だったそうです。なるほど・・・・
投稿: 若手経営者 | 2006年1月29日 (日) 21時05分
初めまして。トラックバックをたどっておじゃましました。一つ先のエントリーにTBさせていただきました。わたしは民間の労組専従ですが、公務員の組合の方々とお話ししていて、根っこのところはまったく同じだ、と常々感じています。今後も、おじゃまさせていただきます。よろしくお願いします。
投稿: ニュースワーカー | 2006年1月30日 (月) 14時56分
はじめまして。コメントとトラックバックありがとうございました。
新聞労連の委員長さんからのコメントは本当に力強く感じ、投稿を重ねていく大きな励みとなります。こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2006年1月30日 (月) 15時49分