公務員になったイキサツ
よく他の方のブログを訪ねていますが、ご自分の過去について綴られた記事を目にする時があります。少々気恥ずかしいところもありますが、今回、私自身の過去について振り返ってみます。この間の「公務員」論議に直接関係しませんが、お時間が許される方はお付き合いください。
私が小学6年の夏、父を亡くしました。もともと経済的に裕福な家庭ではなく、高校は滑り止めなしの都立校一本で受験に臨みました。先生から「絶対大丈夫」と言われていましたが、さすがに前夜の重圧は半端でなく熟睡できなかったことを覚えています。
高校3年間、朝は新聞配達を続け、春夏冬の休み期間も様々なアルバイトを経験しました。その経験したアルバイトの中で、営業としての自分の素質(?)を感じたものがありました。ある清掃器具の契約セールスの仕事でした。短い期間で運が良かっただけかも知れませんが、大学生も多かった50人ほどのアルバイトの中で上位の成績を維持できました。
高校入学当初、アルバイトの関係から本格的なクラブ活動は敬遠しようと考えていました。必須授業の時間に選んだのは「歩きクラブ」でした。要するに学校近辺を散歩するだけのクラブで、意外にも人気があり部員の数は確か100人を超えていました。
それでも高校1年の秋頃になると少し余裕を感じ始め、ちょうど部員を募集していた剣道部へ入部しました。やり始めると熱中するタイプであり、その後、自分なりに「剣道一直線」の高校生活を送ることになりました。レギュラーにはなれませんでしたが、昇段試験は順調で、高校3年春には二段まで合格できました。
高校3年の夏、ほとんどの友人が大学受験をめざしていました。私は高校卒業後、すぐに就職しなければなりませんでした。もともとマスコミ関係の仕事に就きたい希望があり、そのためにも大学を卒業したい気持ちが強まっていきました。
先生や先輩のアドバイスで、夜間大学へ通うのには公務員が最適と勧められました。やはり定時に帰りやすいイメージ(実際その通り?)があったものと思います。幸にも公務員試験は国と東京都、両方合格することができました。
だめもとで受けた今の市役所の採用試験、想定外の合格通知が届き、小躍りしたことを思い出します。現在、地方自治体の賃金は国並に平準化されていますが、当時、市役所の高卒初任給は国や都より圧倒的に高かったことが印象に残っています。距離的な通いやすさもあり、迷わず今の市役所へ就職しました。
大学受験の方は、すでに就職が決まっている余裕から高校受験の時とは大きく異なり、ノン・プレッシャーで臨めました。英数理が苦手なため、早い段階で公立大学は「オリンピック精神」に切り替えていましたが、本命としたC大学法学部には何とか入ることができました。この時期に運を使いすぎたような気がしないでもありません。
希望する職業へステップ・アップする手段としての公務員志望だったのに加え、高校生の頃の自分は公務員に魅力を感じていませんでした。職場の雰囲気が堅くて、非常に窮屈な先入観を強く抱いていました。大学を卒業したら本気で転職するつもりでした。
今の市役所へ入り、配属された職場は「水道部業務課」。それまでの公務員のイメージが初日から吹き飛びました。良い意味でのカルチャー・ショックでした。迎えてくれた先輩たち一人ひとりの強烈な個性、そして、何よりも暖かみあふれた職場の雰囲気に驚きました。
当時の市役所の中でも、その課は際立って個性的だったことを後から知ることになりますが、勝手な思い込みがあった分だけ新鮮な感動でした。さらに何とも意志が弱いことになりますが、配属後、数日間で「永久就職でいいかな」と人生設計を変えてしまったほどの素晴らしい職場との出会いでした。
考え方を変えることになった理由が、もう一つありました。大卒者が大半だった同期入所の方々の中にT大、S大、K大などの有名大学出身者が多かったことに驚きました。ほんの少し前まで受験生だった自分にとって、雲の上の大学だった出身者の方々と一緒に働けることにミーハーな満足感を得たことも一つの理由と言えました。
一方、主客逆転した大学は「せっかくだから卒業しよう」程度の存在となり、3回生になってからは試験日ぐらいしか行っていませんでした。「たまには顔を出すか」と久しぶりに行ってみたら創立記念日で休校だった…、これは実話です。それでも何とか「5回生」まで通って卒業することができました。
あまり難しい解説は加えず、公務員を選んだ理由や現在まで続けている経緯(タイトルはカタカナでイキサツとしました)を簡単に振り返ってみました。「やっぱり市役所の仕事は余裕があるから、そんな雰囲気の職場があり得た」とのご指摘があるかも知れません。また、もしかしたら自慢話のように聞こえ、不愉快に感じられた方もいらっしゃるかも知れません。
実は今回、公務員を客観的に見る一つの方策として、公務員でなかった頃を思い出してみました。誤解がないよう付け加えますが、決して職場の雰囲気や労働条件を「ぬるま湯」と感じたから「永久就職」と決めた訳ではありません。第一はアット・ホームな職場が気に入ったからですが、実際、市役所に働き、その仕事の大切さやおもしろさを感じた点も強調させていただきます。
最後に一言。今の自分の職場において、新規採用で配属された後輩に対し、新鮮な好印象を与えているかどうか甚だ疑問です。四半世紀前に比べて、市役所全体に「余裕」がなくなりつつあります。しかし、新人の方々へ仕事の大切さはもちろん、それと同じように人間関係の暖かさを伝えていく重要性は今も昔も変わらないはずです。今回の投稿は、そのようなことを改めて思い返す機会となりました。
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市民課の後輩に、「延長窓口10時までやったらどうよ」と提案したら、「現状(PM7時までやってる)でも午前中の時間が手薄で、20分待ちのお客様が出てしまっている。これ以上シフトだけじゃ対応しきれない。」とのことでしたよ。人を増やさず、サービスを充実するのは難しいということです。