« 市場化テスト推進室と公務労協が交渉 | トップページ | ニューヨークで25年ぶりのストライキ »

2005年12月23日 (金)

なるほどハイパフォーマンス・ガバメント

先日、よく利用している図書館で借りた本の一冊が「役所の経営改革 目指せ!ハイパフォーマンス・ガバメント」(日本経済新聞社)でした。5年前に発行された本でしたが、ハイパフォーマンス・ガバメントという言葉は、あまり耳にしたことがありませんでした。

ハイパフォーマンス・ガバメントという言葉をGoogleで検索してみました。するとトップに並ぶのは、この本を紹介するサイトが中心でした。「imidas2006」でも調べましたが、やはりハイパフォーマンス・ガバメントという用語は見つかりませんでした。自分が知らなかったのではなくて、あまり定着していない言葉だったようです。

本の中味には行政評価や電子自治体など、最近の役所でおなじみの言葉が並んでいました。武田安正さん、後藤浩さん、吉武正樹さん、三人の方の共著で、それぞれ中央省庁や自治体の業務改革などに強い影響を与えている経歴の持ち主でした。

したがって、現在、各自治体で進めている行革の手法を形作った方々であるようにも見受けられました。それなのにハイパフォーマンス・ガバメントという言葉が、あまり広がらなかったことに大した意味はないのでしょうか。

その本を一通り読み終え、なるほどハイパフォーマンス・ガバメントとはこのような考え方なのか、と非常に感心しました。単なる行革推進のマニュアル的な本ではなく、共感できる提起が数多く盛り込まれていました。

まず著者の方々は「顧客の立場に立ってサービスを提供すると同時に、自らの力で変革し、高い生産性を実現していくこれからの行政機関」をハイパフォーマンス・ガバメントと呼んでいるそうです。これだけを紹介すると今流行りの「官から民へ」の行革の流れと同じじゃないか、と思われるかも知れません。しかし、決してそうではないと感じ、私自身が共感した内容や印象に残った箇所を抜粋させていただきました。

単なるコスト削減や人員削減では「いまのサービスの質を、少ない人員でどうやって維持していくのか」「新たに求められる行政の役割をどうやって担っていくのか」という肝心な問いをないがしろにしてしまっていることになります。これらの設問に対する答えをもたないまま、単純にリストラを断行すれば、単に一人あたりの仕事量が増加し、サービスの質の低下を招くだけでなく、新たに求められる役割を担う人材が育たず、行政機関のパフォーマンスが将来にわたって悪化してしまいかねません。

アウトソーシングの意義は、単なる「業務の外注」といったコスト削減にあるのではなく、外部の能力を組織の内側にとりこむことで、「ウィン-ウィン」の協力関係をつくりだし、それによって新しい価値の創造や組織の活性化を達成するということにあります。

行政改革の議論では、よく官か民かということが議論となりますが、実際には行政改革においてこのような議論はさして意味はありません。なぜなら、顧客である国民の視点から見れば、だれがサービスを提供していようが構わないからです。国民にとってはマネー、すなわち税金に見合った価値が提供される限りにおいては、官でも民でも、また、官と民の合同チームでもまったく構わないわけで、どちらがいいと、はなから判断できる筋合いのものではありません。

他にも「少子高齢社会に対応するためにはスモール・カバメント(小さな政府)を目指すべきではない」、「資産としての職員は利益の源泉であり、これを切り捨てるのは一番最後の選択になるはずである」などの提起があり、共感できる記載が随所にありました。

そのような問題認識を前提として、有効な行政評価や人材育成の推進、eガバメント(電子政府)やアウトソーシングを活用すべきであると主張されていた本でした。いろいろ目からウロコが取れた感じであり、改めて「官から民へ」の激流に立ち向かうためのヒントが得られた気がしました。

そもそもハイパフォーマンス・ガバメントの言葉が普及していないのと同じように、この本に書かれている筋の通った行革に対するスタンスも残念ながら普及していないように思えます。まず職員数の純減目標を決めるような乱暴な行革の手法は、この本の問題提起から大きく外れているものとなります。

また、日常業務の中で、目的や得られる効果から遡って考えるのではなく、とにかく形から入る事務が増えた気がしています。例えば事務事業の評価事務など行革を進めるための事務が、仕事を増やし、一部の職員の負担を増やしている皮肉な側面が見受けられます。

さらに今春から始まった住民票の電子申請など非常に疑問でした。インターネットを通して24時間、いつでも申請できるメリットがあるだけで、申請後、役所まで住民票を取りに来なければなりません。電子決済などの方法が未成熟であるため、とにかく過渡的な方法でも「実施する」ことが優先された結果でした。

電子自治体に向けた一歩、市民と職員双方のトレーニング的な位置付けにしています。しかし、市民サービスの面で大した効果が上がらないのにもかかわらず、コストや大きな手間をかけて実施していることは、ハイパフォーマンス・ガバメントに程遠いことだと感じています。

|

« 市場化テスト推進室と公務労協が交渉 | トップページ | ニューヨークで25年ぶりのストライキ »

コメント

「単なるコスト削減や人員削減・・・・」大きな課題ですよね。
けれど今の地方公務員の実情を考えるといたずらに削減の方向に向かわざるをえないだろうと不安です。
未だに多くの現場では「休まず、遅れず、働かず」です。与えられた仕事『だけ』をこなす、前向きな提案は仕事を増やすものとして(あるいは変えるものとして)つぶされる。新たに希望を抱いて加わった人もだんだん侵されるか、疲れていく・・・・。
公の福祉のために公でやるべきことがあるのに気が付けよぉ〜っ!今の自分達ならもっと出来ることがあるのに、安いコストで不安定な身分の民間の人々に担わせて結果自分の首を絞めてることに気付けよぉ〜っ!といいたい!!
職員組合は「みんな」が組合員であることで動きにくすぎると思います。
権利の主張だけでなく、自らが変わらないと職場が無くなっていくといくことをどんどん啓発して欲しいです。

ところで2006.1.1にうるう秒がありましたね。ちょっと興味があって日本の時刻はどこが管理しているのか調べてみました。文部省管轄の天文台?と予想していたのですが、実際は郵政省から離れた独立行政法人の組織でした。重さと長さの管理は通商産業省から離れた独立行政法人でした。
時刻、重さ、長さの基準の管理こそ国家の仕事ではないのかなぁ。公の仕事の基準はどこなの?と新年早々不安になったできごとでした。

投稿: おひょい | 2006年1月 2日 (月) 12時38分

おひょいさん、貴重な問題提起となるコメントありがとうございました。
「官の責任と役割」を公務員ではない方たちから支持を得るためには、私たち自身もある面で変わる必要があるものと思っています。
つまり今後、自分たちの仕事の付加価値を高めていくことが非常に重要な試みとなります。その一方で、労働条件の維持・向上とのバランスも無視できないのが組合の役割だと考えています。

投稿: OTSU | 2006年1月 2日 (月) 19時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/130697/7700920

この記事へのトラックバック一覧です: なるほどハイパフォーマンス・ガバメント:

» 小さな政府を目指す小泉内閣06年度政府予算案を決定 [ブログで情報収集!Blog-Headline]
「小さな政府を目指す小泉内閣06年度政府予算案を決定」に関連するブログ記事から興味深いものを選んでみました。ぜひ、読み... [続きを読む]

受信: 2005年12月24日 (土) 22時43分

« 市場化テスト推進室と公務労協が交渉 | トップページ | ニューヨークで25年ぶりのストライキ »