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2005年12月26日 (月)

ニューヨークで25年ぶりのストライキ

市役所の仕事納めは28日ですが、その最後の日に人員問題で団体交渉が開かれます。必要な部署に必要な人員配置を求めた組合要求の切実さを訴える場となります。職員数削減が大きな行革目標に掲げられている中ですが、組合員の健康が害されることなく、良質な市民サービスを提供するためにも、各職場からの声を反映した要求の前進が欠かせないものと考えています。

大半の労使課題は日常的に行なわれる話し合い、つまり団体交渉や事務折衝などで決められていきます。しかし、賃金や人員に関する重要な問題で、労使の判断が大きく対立した際、組合はストライキなどの戦術を配置する場合があります。その際も決してストライキは打ち抜くことが目的ではなく、切実な組合要求を実現するための手段であると位置付けています。したがって、労使双方、戦術突入直前まで必死に交渉・協議を重ね、決着点を見出せるよう全力を尽くしていきます。

海の向こうアメリカでは、クリスマスを前にした20日から22日にかけて、ニューヨークの地下鉄・バスで25年ぶりに全面的なストライキが行なわれました。賃上げや年金をめぐる都市圏交通公社(MTA)と労働組合の交渉が決裂したためで、約700万人の足に影響を及ぼしました。

市民やマスコミからの批判に加え、労組の上部団体も批判的な立場を示したため、労組側が譲歩を強いられてストライキは終結しました。公社職員にストライキ権は認められていないため、ニューヨーク州地裁は労組側へ1日あたり100万ドルの罰金支払いを命じました。さらにストライキを指揮したロジャー・トゥサン労組委員長らを収監する可能性も示唆しました。

この間、日本のマスコミは徒歩通勤で迷惑を被った市民の声や3日間の経済損失約10億ドル(1170億円)の話などを紹介し、ストライキに対してネガティブな報道に終始していました。「日本の労働組合も昔のようにストライキを打って闘うべきである」との論調は、私が接する限り皆無だったようです。

今回、ロジャー・トゥサン委員長の強烈なリーダーシップのもとで、25年ぶりのストライキが決行されたと聞きます。逆になぜ、ニューヨークの地下鉄・バスで25年間もストライキがなかったのか、少し考えてみることにしました。

1981年、共和党のロナルド・レーガンが現職のジミー・カーターを破って第40代アメリカ大統領に就任しました。レーガンは当時のアメリカが国際競争力を失い、インフレが悪化しているのは国内賃金が高すぎるからだと主張し、「そうかも知れない」という風潮を作り出しました。さらに元俳優だったレーガンはテレビCMなどを使い、人々に労働組合に対する悪い印象を植えつけていきました。

レーガンは労働組合を圧力団体と名指しで批判し、ストライキに入った交通管制局員1万人を解雇したため、ここぞとばかりに民間企業も組合つぶしに力が入るようになりました。その結果、レーガン政権最初の2年でアメリカ国内の組合員数は300万人も減少することになりました。労働組合が弱体化されたことにより、それ以降、テクノロジーが進歩しても好景気になっても労働者の賃金は上がらない社会が形作られました。

一方でレーガンは法人税や最高税率の大幅引き下げなど徹底的に富裕者へ尽くし、極端な二極化社会へ突き進む舵を切った大統領でした。その結果、最上位1%の家庭の資産が下位95%の総資産額を上回る凄まじい現状を生み出しました。

ニューヨークの地下鉄・バスで25年間、ストライキがなかった、できなかった答えは以上の歴史から充分推察できます。そして今、日本も、そんなアメリカの歴史をたどろうとしています。まさに労働組合を敵対視する小泉首相はレーガン大統領と重なって映ります。

一握りの「勝ち組」に対し、国民の圧倒多数が「負け組」となるアメリカのような格差社会を望む人は稀だと思います。そうならないための一つの手段として、労働組合の社会的な存在意義や影響力を高めていくことは非常に重要です。もちろん、労働者の伝家の宝刀であるストライキの必要性について、労働組合自らが内外に示していく努力も欠かせません。

最後に一言。だからこそ、ストライキなどの戦術を配置する重みについて、常に問い直していかなければなりません。繰り返しになりますが、ストライキは要求を前進するための手段であり、決して打ち抜くことが目的ではありません。しかし、いざという時には整然と決行できる体制作りが絶対不可欠です。したがって、戦術配置を決める議論の段階から緊張感を持っていこうと決意を新たにしています。

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