拉致問題を考える
金曜の夜、連合多摩中央地区協議会が主催した「拉致問題について考える」という学習会に参加しました。講師は特定失踪者問題調査会代表の荒木和博さんでした。荒木さんは北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会初代事務局長も務めた方です。
まず荒木さんから「個別の組合に呼ばれることはありますが、連合の地区協議会に呼ばれたのは初めてです」と紹介があり、「拉致問題に対しては組合や個人で様々な意見があると思いますので、質疑応答の中での厳しい批判も覚悟の上で私の考え方を話させていただきます」との趣旨の説明がありました。
講演の内容は拉致の実態や救う会の運動などについて、パワーポインターを使いながら非常に具体的でわかりやすくお話いただきました。三多摩の方もいる450人に及ぶ特定失踪者の実態、北朝鮮工作船の写真、侵入者を防ぐ目的で延々と鉄柵が続く韓国の海岸線、対照的に北朝鮮兵士の侵入を簡単に許した日本への上陸ポイントなどが映し出され、誰もが平和な日常を奪われる可能性があった恐ろしさを改めて感じました。
荒木さんの怒りは二つの異常な国に向けられていました。言うまでもなく一つは北朝鮮ですが、もう一つは拉致被害を知りながら長年放置してきた日本政府への強い憤りを訴えています。2002年9月17日の小泉訪朝以降も動きは鈍く、特定失踪者を政府が拉致認定するまでの時間のかかり方や政府関係者が繰り返す「粘り強く交渉する」という言葉の不誠実さを指摘しています。この「粘り強く」の言葉は、「家族や支援者、そして本人たちが死ぬか諦めるまで」と聞こえると評しています。
1時間を少しまわったところで荒木さんからの講演は一区切りとし、質疑応答の時間を充分保障しました。質問が出なかった場合は改めて荒木さんから補足的なお話が30分ほど続く段取りでしたが、それが杞憂なほど参加者から活発な質問が続きました。
その質疑の中で経済制裁の問題が取り上げられました。日本の経済制裁は北朝鮮の特権階級に大きな影響を与え、北朝鮮の国民が直接苦しむことはないと荒木さんからの説明がありました。さらに追い込んで暴発するほど相手側に度胸はないとも言い切られています。
荒木さんらの最近始めた活動として、午後11時30分から30分間、毎日、短波放送で特定失踪者の氏名などを北朝鮮国内へ発信していることが紹介されました。拉致の可能性のある方たちへ勇気付ける行動であり、「しおかぜ」と名付けられた番組です。イギリスの放送会社を経由する必要があり、30分の放送で年間300万円かかるそうですが、年内には時間拡大も検討しているとのことでした。
最後に荒木さんから被告原告と立場が分かれるような弁護士の方々も、この拉致問題では一致して活動しているとのお話がありました。ぜひ、日本の中で大きな力を持つ連合の皆さんが、この拉致問題に取り組んでいただけたら本当に心強いことであるとの訴えがありました。
非常に内容が濃かった荒木さんの講演内容すべてを紹介できていませんが、私が印象に残った点を中心にまとめさせていただきました。とにかく拉致があった事実の重さを改めて受けとめる貴重な機会となりました。拉致被害者全員を救出するためには、どうしたら良いか、真剣に考えていく必要性を痛感しました。荒木さん、たいへんお忙しい中、ありがとうございました。参加された皆さん、役員の皆さん、お疲れ様でした。
実は今回の記事は、ここで終わりません。報告するタイミングを考えていた貴重な交流の場がありました。先月中旬、三多摩平和運動センターの呼びかけで、在日朝鮮人の方々との懇談会へ参加する機会に恵まれました。三多摩の朝鮮総連の役員を務めている方もいらっしゃいました。その懇談会が貴重だったことは、やはり物事は多面的に見て、多面的に考える必要性を再認識した点です。
在日朝鮮人の方々が拉致はないと信じていたのに小泉訪朝の結果、その信頼が裏切られることになり、非常に悩み、苦しんでいることを間近で聞くことができました。その一方で意外に感じたことは、それでも自分の国に大きな誇りを持ち、日本のマスコミは北朝鮮のイメージを極端に悪くした報道を流しすぎていると話されていた点です。もともと日本のマスコミの欠点にはうなづけるものがあり、「よく帰るけれど国民は普通に暮らしているんですよ」との言葉も特に誇張されている気がしませんでした。
脱北者の多さや強制収容所の話題に対しては「確かに私たちの国は経済的には貧しい」と述べられ、また、負の側面があることも明確に否定されませんでした。しかし、中国や軍事政権時代の韓国なども自国民を虐殺した負の側面を持っているのに、なぜ、私たちの国ばかり…、と直接的な言い訳はされませんでしたが、そのニュアンスは伝わってきました。
拉致問題が必ず解決できることを心から願っています。荒木さんが訴えていた北朝鮮国民2千万人のためにも、東アジアの安定のためにも、あの独裁政権が代わる必要があるとの考え方にも強く共感しています。しかし、戦争につながる可能性がある手法は絶対避けるべきであり、さらに自分の国の問題は自分たちで決めるという大原則は無視できないものと思っています。非常に難解な連立方程式の答えをめざし、この拉致問題を多くの方へ知らせることや短波放送「しおかぜ」へのカンパ活動など、身近な自分のできるところから前へ進もうと考えています。
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コメント
はじめまして、公務員を目指しているめだかと申します。
現職の公務員の方のブログ故、興味深く拝見させていただいていました。
私は公務員試験のブログを書いているのですが、
もしよろしかったら相互リンクしていただけないでしょうか。
投稿: めだか | 2005年11月21日 (月) 02時11分
めだかさん、相互リンク了解しました。さっそく右サイドバーへリンクしました。
公務員試験頑張ってください。ためいきをつくことがないような公務員のイメージアップに現職の立場から今後も努めていきます。ささやかな取り組みですが、ご注目ください。
投稿: OTSU | 2005年11月21日 (月) 06時29分
こんにちは。トラックバックありがとうございます。
荒木さんを呼んだんですね。拉致被害者救出運動を右翼の運動にせず、国民的な運動にしていこう、という志向をもった人だと思います。彼の『拉致救出運動の2000日』(草思社)は拉致問題に関して真っ先に奨めたい本です。
投稿: kazhik | 2005年11月21日 (月) 07時08分
リンク許可ありがとうございます。
こちらもリンクに追加させていただきました。
組合の話題など、なかなかコメントできそうにない話題も多そうですが、
等身大で頑張っておられる姿を陰ながら拝見し、勉強させていただこうと思います。
宜しくお願いします。
投稿: めだか | 2005年11月22日 (火) 00時07分
sale@mp3.com
投稿: Eagles | 2007年9月21日 (金) 12時21分