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2005年10月23日 (日)

大胆な改革、オランダのダッチ・モデル

先週水曜の夜、連合に所属する地域組合の代表が集まり、政策を勉強する会が開かれました。その講師には地元選挙区の長島昭久衆議院議員が呼ばれていました。民主党「次の内閣」安全保障担当である長島さんですので、外交政策を中心に話していただきました。

団体交渉と重なって少し遅れた出席だったため、前半の話は直接聞くことができませんでした。それでも後半の話や質疑応答に参加できただけでも、たいへん貴重な機会となりました。質疑応答が民主党代表選などの話題にも広がっていきましたので、私から「自治労への敷居を高く感じず充分話し合うべき」と一点だけ要望しました。長島さんからは、そのように言ってもらえたことの謝意とともに、今後、充分話し合いたいとの応答がありました。さらに関連して長島さんからオランダのダッチ・モデルの事例が紹介されました。

ダッチ・モデルはポルター(開拓地)・モデルとも呼ばれているようですが、改めて私なりに調べてみました。1970年代後半以降、オランダは「低成長+高失業+高インフレ」に苦しみ、「欧州の重病人」と言われていました。1982年、労働運動出身である労働党のコック首相のもと政・労・使によるワッセナー合意がはかられました。それ以降、10年を経て財政赤字・高物価・高失業の三重苦から解放され、中道左派の経済運営の最も成功した事例とされています。

ワッセナー合意の中心内容は、パートタイマー雇用増大の容認と合わせ、雇用形態の相違による差別をなくす「均等待遇原則」の法制化を結合し、一挙にワークシェアリングを促進することでした。それだけでは企業のコストが上昇してしまうため、労働者側は賃金抑制を容認するという大胆な改革でした。

ワークシェアリングが進み、当然、失業率は低下していきました。また、賃金上昇の抑制により、インフレ圧力が低減し、労働者側も実質賃金の上昇というメリットを享受しました。加えて均等待遇に保障されたパートタイマーつまり短時間労働者の増加は、多様な余暇活用により経済活性化にもつながったと見られています。

ダッチ・モデルの成功で確かにオランダは立ち直りました。しかし、この称賛された社会システムも経済のグローバル化やIT(情報技術)革命の中で矛盾が出始め、大きな岐路に立たされています。さらに公務員は民間企業に比べて急速に賃金を引き下げられたため、ストライキ多発や公務員の質の低下などの問題が出ていると聞きます。

もともとオランダは、国の主要な政策決定に各分野の利益代表を参加させるネオコーポラティズムの伝統がありました。その素地があったからこそ国の危機を抜け出すため、労働者、経営者、政府が協調して三方一両損となるワッセナー合意という決断ができたものと思われます。いずれにしても今後の日本の方向性を議論する際、ダッチ・モデルは貴重な参考例とする必要性を感じました。

長島さんがワッセナー合意を紹介したのは、仮にオランダのような政・労・使の合意を行なうためには民主党が政権を取った上で労働組合との信頼関係が重要であると考えているからだと思います。そのためにも労働組合と政党の立場や政策面など、違いは違いとして改めて認め合いながら前向きな関係への建て直しが求められています。とにかく信頼関係が再構築されないまま、今までのような関係を続けていくことは問題だと思っています。

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