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2005年10月 9日 (日)

「国家の罠」と「国家の自縛」を読み終えて

平日の勤務が終わった夜、図書館職場の組合員との話し合いに参加しました。各職場特有の問題点を担当の組合役員と職場組合員との間で話し合う場は適宜設けられ、延べ100回を超す年もあります。身近で全員の共通した課題が中心であるため、組合規約で定められた定期大会や職場委員会よりも活発な意見交換ができます。また、組合役員にとって組合員のストレートな声が聞ける貴重な場となっています。

その話し合いが始まる前、せっかく図書館を訪れたので、ある本を探してみました。外務省のラスプーチンと呼ばれた佐藤優さんが著した「国家の罠」です。非常におもしろい本との評判を聞いていましたが、書店で買うことまでは考えていませんでした。カウンターの職員に尋ねてみると図書館でも人気があり、貸出リクエストの順番待ちが多いとのことでした。それが幸運にも1冊戻ってきていて、すぐに借りることができました。

睡眠不足になっても一気に読み切りたいと考えるほど、私にとって評判以上のおもしろさを与えてくれました。結局、数日間かけて読み終えましたが、初めから購入して手元に残すべきだったと思うほど中味の濃い本でした。つい最近、その続編的な「国家の自縛」が発売されました。この本は書店で即購入しましたが、私にとって前作に比べると図書館で借りれば良かったと思うほど敷居が高く感じられた本でした。

同じ著者が同じテーマを中心に扱いながら、ここまで印象が分かれるとは思いませんでした。「国家の罠」が生々しいドキュメント中心、それに対して「国家の自縛」はインタビュー形式で、佐藤さんの考え方や主張を中心に綴られていることが決定的な違いでしょうか。いずれにしても、あくまでも個人的な受けとめ方や理解不足の問題であり、「国家の自縛」を絶賛したブログがネット上に掲げられていることを付け加えておく必要があります。

「国家の自縛」も読み終えてから2冊通した感想を書き込もうと思っていましたが、結果として「国家の罠」の内容に限ったものとなりました。また、「国家の罠」に対する書評はネット上に数多く投稿されていますので、ここでは私自身が特に興味深かった点のみを紹介させていただきました。

この本を読むまで鈴木宗男代議士と佐藤さんは、やはり何か日露外交を進める中で犯罪にあたることに手を染めていたものと思っていました。それが国策捜査とマスコミ報道の偏りの結果、二人は悪役に追いやられたことが記されていました。当時の首相や外務省幹部の命に従い、その時点で評価された業務が2年後に犯罪として摘発された不合理さを佐藤さんは被告人最終陳述の中で訴えています。

この本の中に国策捜査という耳なれない言葉が頻繁に出てきます。文字通り国家の意図が働いた捜査であると理解できます。佐藤さんの取り調べを担当した検事が、国策捜査は「時代のけじめ」をつけるために必要で、時代を転換するために何か象徴的な事件を作り出して断罪すると述べています。その際、もともとある法律の適用基準のハードルを下げ、国策捜査の標的とした人物を逮捕するとまで語っています。

佐藤さんが逮捕された理由は、鈴木代議士逮捕の突破口を開くためだったと自ら分析しています。それでは、なぜ、鈴木代議士が国策捜査の対象となったのか、その背景を佐藤さんは冷静に分析しています。鈴木代議士は地方の声を自らの政治力をもって中央に反映させ、再配分を担保する公平配分論者。外交的には、アメリカ、ロシア、中国との関係をバランスよく発展させるためには、日本人が排外的なナショナリズムに走ることは却って国益を毀損すると考える国際協調主義者でした。

言うまでもなく小泉政権は内政外政両面にわたり、鈴木代議士や旧橋本派と対極の方向を向いていました。しかし、「公平配分をやめて金持ちを優遇することが国益だ」「地方を大切にすると経済が弱体化する」とは公言できず、鈴木宗男型の政治を腐敗・汚職と断罪することにより、国民全体から拍手喝采を受けながら路線転換ができるシナリオを企図したものと佐藤さんは推測しています。

「国家の罠」が書店に並んでから半年後、理不尽な解散による衆議院議員選挙が終わり、ますます鈴木宗男型の政治家は権力の中心から外されていきました。この本を読み、国家権力やマスコミ報道が偏った時の怖さを改めて感じています。その標的が、今、公務員、とりわけ自治労に向いているようで背筋が寒くなります。

最後に、「自治労は悪役?」へびんごばんごさんからコメントをいただきました。第三者を通じた自治労に関する情報発信を増やす工夫の必要性など、外に向けて開かれた自治労となるよう期待を込めたご意見でした。国民の視線が自治労へ厳しくなりがちな時、励みとなるコメント、本当にありがとうざいました。

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コメント

TBありがとうございました。私の方もTBさせていただきます。
同じ職業とのこともあり、貴ブログに親近感が沸きます。可能なら相互リンクもお願いできたら嬉しいです。

投稿: たにちゃん | 2005年10月 9日 (日) 23時58分

トラックバックありがとうございました。

民主党の鈴木かつまさ議員のブログに国家公務員の定員削減について書かれた記事があります。ご参考までにURLを記します。

http://diary.jp.aol.com/f4uhu9zpsqt/199.html

投稿: びんごばんご | 2005年10月10日 (月) 09時09分

TB、コメントありがとうございます。相互リンク大歓迎です。たにぐちさんのブログ早速リンクします。びんごばんごさんから案内された鈴木かつまさ議員のブログ見ましたが、公務員を減らせば改革という相変わらずの論理展開に「ためいき」つきました。

投稿: OTSU | 2005年10月10日 (月) 11時06分

 今度は何を言い出すのかと思えば、国家の罠ですか。
こんな人が法廷受託事務を行っていること自体が
恐ろしく思えます。あなたはなぜ地方公務員をやって
いるのか?そんなにバッシングや待遇悪化がいやなら
転職されても一向に構いませんが。
 こういうことを書くと、「一個人の意見ですから」と
反論されるでしょうが、果たしてここに書いてあることは
一個人の意見か?組合報の一面を使って宣伝し、
書いてある内容も組合報とほぼ同じ。これで
抜け抜けと一個人の意見と言い切る根拠が
分かりません。
 私も決して安くない組合費を月々ピンハネされて
いる組合員です。代表に選んだ覚えのないあなたに
組合報を私物化され、組合や公務員の代表面を
されてはたまりません。

投稿: つばさ | 2005年10月10日 (月) 15時41分

つばささんとotsuさんって同じ組合?

職場や組合の会議とかで、ぶっちゃけて話せばいいのに、ネットを介してやりとりするのは、なんか不自然だなぁと思いました。

都会だとそういうのがはやっているのかしら。

投稿: ハマー | 2005年10月11日 (火) 20時21分

はじめまして。このブログの表題、発信者元に興味を感じて拝読しました。「国家の自縛」「国家の罠」の二著書に対する感想私も同感でした。前書に比べ後書は、何か補足的で対談方式とかの影響でか密度も薄く、少し期待外れの感がありました。その後も佐藤氏の著作に注目しているのですが、「国家の罠」に心血を注がれた後遺症かと思うほどあまりパッとした印象を受けません。
 ところで、貴方様は組合の役員をやっていられるようですが、大変失礼ながら上記の文章を拝読し柔軟なお考えのできる方のようで少々うれしくなりました。
 私も現役時代、末端職制として、労組の幹部の方とはケンケンガクガクやったことがあり、そのときの印象では、「ああ、こんなに固いのではとても無理だなー」と何度か嘆息させられたことがあったのを思いだしたからです。
 私は、どんな物事も先入観をもたないように努めるなかで、問題が何かを虚心に見据え、現状を取り巻く環境条件を考慮にいれ、お互いに歩み寄ろうとするのでなければ、物事はよりよい方向には転換できないと考えるからです。
 また、おりをみて拝見させていただきます。

投稿: 蛾遊庵徒然草 | 2006年3月20日 (月) 11時57分

蛾遊庵徒然草さん、コメントありがとうございました。
このように共感いただけたご意見は本当に励みになります。ぜひ、これからもお気軽にご訪問ください。よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2006年3月21日 (火) 07時56分

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» 佐藤優『国家の罠』 [微熱日記]
『国家の罠』(佐藤優著・新潮社)。これがもう、呆れる程、面白く、かつ、深い本でし [続きを読む]

受信: 2005年10月 9日 (日) 22時44分

» 佐藤優著「国家の罠」(新潮社刊) [たにぐちまさひろWEBLOG]
最近出会った本の中でイチオシの書。それがこの“国家の罠”です。 “正義”とは、本来、相対的なものであるはず。 典型的なものが国際問題。イスラエルの正義は、パレスチナにとっての悪となる。だからこそ迂闊に他の国々は干渉できないし、すべきではない。 それは、他の中東諸国やアジアといった日常茶飯事のように新聞紙上を賑わせている国々のみならず、世界中どこの国でも同じことがいえます。 ところが、国際関係という点に絞ってみれば、日本は、そうではなかった。 第二次世界大戦の敗戦から1990年代... [続きを読む]

受信: 2005年10月 9日 (日) 23時53分

» 『国家の自縛』 [喜八ログ]
休職中の外務省職員佐藤優さんの社会復帰第2作です。 佐藤優氏は2002年05月に背任・偽計業務妨害の容疑で逮捕され、512日間にわたり拘留されました。2005年02月執行猶予付き有罪判決を受けましたが即時控訴。保釈後に出版された『国家の罠』新潮社(2005)が一躍ベストセラーとなりました。続く...... [続きを読む]

受信: 2005年12月28日 (水) 20時52分

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