2015年1月25日 (日)

地域手当を巡る問題点

「イスラム国」による日本人の人質事件、土曜の夜、新たな画像がインターネット上に公開されました。真偽は確認中であり、事実ではないことを願いながら二人が無事生還できることを祈っています。卑劣なテロ、「イスラム国」の暴力的な行為を絶対許すことができません。「イスラム国」の言い分に右往左往し、日本政府の責任を問う話などはテロの暴力に屈したことになるという指摘があり、その通りだろうと思っています。一方で、この事件が発覚した以降、ネット上を中心に様々な情報を得てきましたが、いろいろ書き残しておきたい論点も頭の中で駆け巡っています。

機会を見て、そのような情報や論点について当ブログの記事本文を通して綴りたいものと考えています。今回の記事は労働組合の役割として最も重視すべき賃金水準に関する話となります。昨年「給与制度の総合的見直し」「7年ぶりに引き上げ、人事院勧告」という記事を投稿していました。その中で給与制度の総合的見直しによって、基本給2%削減という痛みが直撃する見通しについて記してきました。昨年11月の賃金交渉で決着をはかれず、労使交渉は越年しています。大詰めの局面を迎える中、これまでの経緯や問題点について書き進めてみます。

人事院は2006年から実施してきた給与構造改革について、2010年の人事院報告で「地域ごとの民間賃金との較差は収れん」「地域別の較差は縮小し、安定的に推移」と評価し、地域民間賃金の反映は所期の目的を達成したという見解を示していました。それにもかかわらず、中立であるべき人事院は政権与党の意向に沿って見直しが必要という立場に変わっていました。地域給が導入された前回同様、基本給を一律に削減し、地域手当による給与原資の配分変更の検討を進めてきました。

現行の地域手当の率は0%から18%ですが、上限の率を20%とし、見直しを強いられた場合、中央省庁の職員以外、大半の公務員の給与が純減される制度設計となっています。疲弊した地方経済に大きな影響を与え、ますます地域間の格差を広げる制度見直しだと言えます。自治労が結集する公務員連絡会の反対を押し切り、人事院は昨年8月7日、給与制度の総合的見直しを来年度から3年かけて行なうよう勧告しました。全体の給与水準を平均2%引き下げ、その原資を再配分することで地域の民間給与水準を踏まえた見直しなどを求めています。

その際、私どもの市の支給地域は3級地から4級地に下げられ、現行の支給率12%が据え置かれる勧告内容でした。そのため、勧告通りに従えば基本給2%削減の痛みが直撃する見通しとなっています。組合は組合員の生活を守る立場から交渉を重ね、地域手当12%のままでは問題であるという認識を市側から引き出しています。その上で3月議会の条例改定に間に合う解決をめざすことも確認しています。自治労都本部が2月6日に統一行動を配置したため、その日までに全力で組合員の痛みを回避した決着をめざしています。

今回、記事タイトルに掲げたとおり地域手当を巡る問題点について掘り下げてみます。地域手当は給料の月額に支給率を乗じて算定されます。人事院勧告では市町村ごとの地場賃金を調査し、0%から20%までの地域手当の率を示しています。この基準に沿った支給を国は各自治体に求めていますが、最終的な判断は当該の自治体に委ねられます。そのため、これまで三多摩地区では8自治体が国の基準を超えた率で地域手当を支給しています。

昨年10月31日、読売新聞の地方版に「地域手当8市町村 基準超」という見出しが付けられ、紙面が大きく割かれていました。幸いなことに単なる批判記事ではなく、現行制度の問題点や各自治体担当者の説明なども掲げた内容となっていました。さすがに地方版の記事をネット上では見つけられず、そっくり引用できないため、手元に置いた新聞紙面から注目すべき箇所だけ抜き出しながら紹介させていただきます。

総務省令は、国の基準を上回る支給率としている自治体には、特別地方交付税を減額すると定められています。特別地方交付税は災害復旧など臨時的な支出のほか、過疎対策などの独自事業にも充当できます。減額措置によって、本来なら行政サービスに活用できた財源が減ったことが問題視されています。ただ8市町村のうち地方交付税そのものが不交付団体である三鷹市は「減額の影響を受けていない」と回答しています。

「国立感染症研究所村山庁舎の支給率に合わせている」とする武蔵村山市は、総務省令に「市内に国の機関がある場合、その機関の支給率に準じていれば減額の対象にならない」との特例があり、減額措置を受けていないことをその新聞記事を通して知る機会となっていました。基準を超す手当を支給している理由については、ほぼ全ての自治体が読売新聞の取材に対し、「近隣自治体との均衡を考慮した」と回答しています。

「(支給率の高い)区部に隣接しているのに、基準が大きく違うと人材確保に支障が出る」「周辺自治体と職員の生活圏や事務量が同じであることを考えれば、基準に差があるのは不公平」という声も示されていました。地方自治に詳しい中央大学の佐々木信夫教授(行政学)は「国の基準は各自治体の業務量まで考慮しておらず、絶対的なものではないかも知れない」と指摘されています。

一方で、佐々木教授は「交付税の減額で市民サービスがカットされかねない以上、自治体は労使交渉の場だけで方向性を決めるのではなく、基準を上乗せする根拠を市民に示す必要がある」と話され、読売新聞の記事はその言葉でまとめられていました。組合役員の立場からは労使交渉で決めるべき事項であることを強調しなければなりませんが、住民の皆さんからまったく理解を得られない話であれば、議会で否決されるような事態も想定しています。

このような問題意識もあり、不特定多数の方々が閲覧できるブログの場でも地域手当の問題点について取り上げています。読売新聞の取材に対し、自治体担当者が答えた内容に尽きますが、同じ生活圏に暮らし、同じ職務に励みながら地域手当の支給率が極端に異なる現状は非常に理不尽なものです。そのことによって人材確保の面で支障が生じていくことも明らかです。そもそも支給率を市町村ごとに決めていく手法も疑問です。極端な例かも知れませんが、小さな自治体の中に一つだけ超優良企業の事業所があれば、その自治体の支給率は高くなります。

支給率や基準割合などを決める際、どこかで線を引かなければならないことも分かります。それが都道府県単位だった場合でも、県境の自治体では隣り合っているのに数字が大きく異なる事例も生じてしまいます。ある程度の割り切り方が求められていくのでしょうが、この地域手当の支給率だけは様々な疑問の声が示されていました。「規模が同じと見られている隣り合った市で、なぜ、5%も違うのか?」「なぜ、あの市が15%で、こちらは6%なのか?」

あまりにも不合理な格差が目立ち、納得感が乏しい基準でした。地方分権の推進が唱えられる中、自治労は制度自体の廃止を求めています。せめて見直す際は、もう少し納得感が高まる線引きを望んでいました。しかし、昨年8月の人事院勧告で明らかになった支給地域の見直しは、これまでの矛盾を拡大し、さらに違和感を高める内容でした。その中で、私どもの自治体は3級地から4級地に格下げされる事態となりました。勧告が示された直後、この問題で市長と直接話す機会を持ちました。

市長も「おかしい」という疑問を強められ、その後、9月の決算特別委員会の中では次のように発言されていました。私どもの市のほうが「誰がどう見ても大型都市であるし、行政需要もそれだけ多いだろう、物価もそれなりに高いだろう」と思っているのにもかかわらず、そのような点が反映されない算定基準の矛盾について訴えられていました。労使交渉は副市長と重ねていますが、市長自身もこのような問題意識を抱えられていることを非常に心強く感じています。

しかしながら総務省との関係や住民の皆さんからの理解の必要性などを踏まえた場合、国が示した地域手当の支給基準を超え、独自な率に決めていくことが容易な話ではないことも確かです。前述したとおり「12%のままでは問題であるという」という抽象的な認識を引き出している現状に過ぎません。大きな山場となる2月6日に向け、精力的に交渉を重ねながら何としても組合員の皆さんの痛みを回避する決着をめざしていきます。そして、このような生活に直結する課題で結果を出していくことが組合への結集力を高めていくものと考えています。

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