2025年1月18日 (土)

年末年始に読み終えた書籍 Part2

前回記事は「年末年始に読み終えた書籍」でした。年末休暇に入る前『救国ゲーム』、ブックオフで購入した『拘留百二十日』『“安倍後”を襲う日本という病』『情報隠蔽国家』を年始休暇にかけて読み終えていました。その後、発熱に苦しみながらも休暇中に上中下巻に及ぶ『邯鄲の島遙かなり』を読み始めています。

前回「年末年始に読み終えた書籍」から話が広がり、いつものことながら長文ブログとなっていました。あと2冊、1回の記事で区切りを付けようと考えていましたが、無理せず、気負わず、「Part2」を付けた今回の新規記事につなげています。

まず『“安倍後”を襲う日本という病』です。作家の門田隆将さんと読売テレビのアナウンサーだった結城豊弘さんとの対談を中心にした内容でした。ブックオフで見かけたから手にしたと言えます。リンク先のサイトには、他の書籍に比べれば長めの次のような紹介文が掲げられています。

なぜ日本はこんな国になってしまったのか――。暗殺犯の思惑どおり、旧統一教会問題にすり替えられて大騒ぎのマスコミ。ついには、政治家と同教会の“接点"を探して魔女狩りに突入したあり得ない日本。門田隆将とテレビ界の名物プロデューサー結城豊弘が緊急提言。

日本では、たとえ自分と考え方や信条が違っていても、相手を尊重する精神がある。亡くなれば「神」となり、「仏」となるというのが日本の文化だからだ。だが「なんでも安倍が悪い」という、いわゆる“アベガー”たちと日本のマスコミは亡くなった安倍元首相に罵声を浴びせつづけた。ワイドショーは、完全にアベガーたちに追従。連日、暗殺犯の供述と、それをリークする奈良県警の掌で踊り狂った。

しかし、安倍政権は発足間もない2013年、悪質商法の被害者に代わり消費者団体等が損害賠償訴訟をできるようにした「消費者裁判手続特例法」を内閣提出の法律として成立させ、霊感商法に打撃を与えた。さらに2018年には、消費者契約法の一部を改正し、契約取り消しができる行為について、わざわざ「霊感等による知見を用いた告知」という項目を設け、「霊を用いて商売するやり方」を“狙い打ち"した。

だが、その詳細は報道せず、自らは旧統一教会の“広告塔"となりながら、魔女狩りに終始するマスコミ。地上波、新聞、週刊誌…すべてが自らの「役割を放棄」したのである。それほど問題なら、消費者裁判手続特例法ができた2013年以降、マスコミもジャーナリストも霊感商法その他をなぜ取り上げていないのか。そして野党はなぜ国会で問題にもしていなかったのか。あり得ない日本のありさまに欝々としている国民に送る痛快な1冊。

「『◯◯◯』を読み終えて」という記事タイトルとしていませんので、今回も書籍の内容はサワリのみの紹介にとどめていきます。『“安倍後”を襲う日本という病』の中で、門田さんは上記の紹介文に記されているとおり安倍元総理に対する批判を痛烈に反論しています。

その矛先はマスコミに向かい、統一教会、森友学園、加計学園の問題など、すべて的外れな批判であり、徹底的に安倍元総理を擁護する論調を展開しています。結城さんのほうは、もう少しフラットで、門田さんの断定調のマスコミ批判をたしなめるという場面も少なくありませんでした。

安倍元総理に対しては立場の左右を超えて、これほど評価が分かれる政治家は希少だろうと思っています。以前の記事「改めて言葉の重さ」の中で、人によってドレスの色が変わるという話題を紹介していました。見る人によって、ドレスの色が白と金に見えたり、黒と青に見えてしまうという話です。

安倍元総理に対する評価や見方も、人によって本当に大きく変わりがちなことを以前の記事の中で書き残していました。いみじくも次に読み終えた『情報隠蔽国家』は安倍元総理の言動を批判する箇所が目立った書籍であり、例示したドレスの色の話のとおり両極端な対比を興味深く受けとめていました。

警察・公安官僚の重用、学術会議任命時の異分子排除、デジタル庁による監視強化、入管法による排外志向、五輪強行に見る人命軽視……安倍・菅政権に通底する闇を暴く。最新の情報を大幅増補した決定版。

上記は『情報隠蔽国家』のリンク先の紹介文です。著者はジャーナリストの青木理さんであり、門田さんとの立場性の違いは際立っていました。私自身、青木さんの見方のほうに納得していましたが、そこまで決めた付けた批判を加えることはどうなのだろうかという箇所もありました。

僕が不愉快なのは、「本を読まない人、理詰めで考えない人」の特徴が、安倍首相の言説によく表れていることです。そういう人は権力者になってはいけない。(過去の)首相たちの中にも問題のある人はいたが、ここまで落ちてはいなかった。自民党全体が解体現象を起こし、保守政党が極右政党に向かったようです。

『情報隠蔽国家』の中で、作家の保坂正康さんの上記の言葉が紹介されています。この言葉を受け、青木さんは「私なりに噛み砕いていえば、かつてないほどの愚か者が権力の座に就いてしまっている、ということだろうか」とつなげています。安倍元総理を支持されている方々が読めば非常に憤慨する見方だろうと思っています。

もう一つ『“安倍後”を襲う日本という病』と『情報隠蔽国家』に掲げられている内容の興味深い論点の対比があります。核兵器の廃絶を訴えて運動されている方々が、日本を「丸裸」にして相手が手を出しやすい環境にこの国を置く、このような論調で門田さんは語っています。

日本には「中国の指令を受けて中国のために動いている勢力」、いわゆる媚中派が想像以上に多い、具体的な事例や根拠を示さず、門田さんはそのような見方を示しています。『情報隠蔽国家』には公安調査庁の報告書「内外情勢の回顧と展望」の中の次のような一文が紹介されています。

「琉球独立」を標ぼうする我が国の団体関係者などとの学術交流を進め、関係を深めている。背後には、沖縄で中国に有利な世論を形成し、日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいるものとみられる。

この一文に対し、青木さんは「ネトウヨレベルの馬鹿げた“分析”である」と批判し、「このような理屈がまかりとおるなら、政治にせよ経済にせよ文化にせよ、およそ中国との交流を持つ者はすべて“中国の戦略的狙い”に乗せられていることになってしまう」と続けています。

両極端な見方がある中、最近の石破総理は「安堵した様子」自民・公明両幹事長、訪中を総理に報告  今後の日中交流に一つの方向性』という動きに対しても賛否が混在しているのだろうと思っています。私自身は政治家レベルで日中交流が深められていくことを肯定的にとらえています。

年末に投稿した記事「『戦雲』から平和を願う2024年末 」の中で、脅威とは「能力」と「意思」の掛け算で決まると言われているため、戦争に至る前の段階で「双方の言い分」に耳を貸していく外交努力の必要性を強く認識しています。立場性の違いから指摘すべきことは、しっかり物申していくことも欠かせません。

しかし、感情的な対立を引き起こしかねない物言いには注意していくことも必要です。外交の場面以外でも、例えば中国との距離感の違いから「媚中派」「ネトウヨ」などと決め付けた批判は慎み、それぞれの正しさを相手方に「なるほど」と思わせるような言葉の競い合いこそが求められているものと信じています。

最後に、まだ下巻まで読み終えていませんが、邯鄲の島遙かなり』にも少し触れます。著者は貫井徳郎さんで、明治維新から「あの日」まで、神生島に生きる一族を描く大河小説です。下記はリンク先に掲げられている中巻の紹介文です。

神生島に生きる一ノ屋の血を引く者には皆、イチマツ痣と呼ばれる同じ形の痣がある。しかしイチマツのような特別な男はめったに生まれない。椿油で財をなし、島に富をもたらした一橋産業の一橋平太は間違いなく「特別な男」だった。その平太が死んだ。跡を継いだ長男は、父が絶対に手を出さなかった軍需産業に進出し、島の造船所で駆逐艦建造に着手する。

駆逐艦建造を認められた際、海軍の造船大佐から「もし万が一、造船所が敵の攻撃を受けたとしても、離島ならば被害は島ひとつにとどまるじゃないか。こんないい立地はないだろう」と告げられ、イチマツ痣を継ぐ長男の「自分は考えが足りなかったのか、と微かな悔いが心をよぎった」という言葉で、その章は結ばれていました。

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