2019年3月23日 (土)

組合の運動方針の決め方

前々回記事が「母との別れ」で、前回記事が「節目の800回を迎えて」でした。今回から平常モードとし、ようやくnagiさんから示されていた問いかけにお答えする機会とさせていただきます。「神戸市職労のヤミ専従問題」のコメント欄で、nagiさんから「昨年の8月くらいにコメントした内容をコピペします」とし、次のような問いかけがありました。論点を明確化するため、なるべく寄せられた内容をそのまま紹介した上、私自身の考え方を示していきます。nagiさんからのコメントは青字、私のコメントは赤字としています。

一つ目 >さて提案ですが、自治労や平和フォーラムが行う活動で北朝鮮や中国に対して抗議活動をしない、あるいは優先順位が低い理由が明確に存在してるはずです。それはどのような議論や意見集約、優先順位を決める為の数値評価等、結論に至る過程が存在するはずです。それを教えていただければ、疑問も氷塊するのではないでしょうか。対比や検証もせず優先順位を決めることもないでしょうし、平和に脅威を与える事象はたくさんあり、その中でどれを重点目標とするかの議論も存在するでしょう。是非ご教示いただけるようお願いします。

二つ目 >きっと自治労内部の方針会議において、どのような平和活動するか熱い議論が行われているのでしょう。そして、日本、米国、北朝鮮、中国、ロシア等、どこにどのような内容に対して、どのような活動をするか、限られた財源と人材を考え、取捨選択か、あるいは多数決で決めているのでしょう。ひょっとすると中国や北朝鮮に対する抗議活動も何時間にも及ぶ議論、膨大な資料等を精査し、最終的に多数決で議決を取り、49対51で否決されたのかもしれません。そのような内容を詳らかに説明していただければ、長年の疑問も氷塊することでしょう。

一つ目も二つ目もよく似た内容ですが、以前からOTSU氏が内部手続きは問題ないと言われます。また他の方のコメントで平和活動への方針で意見を出したが黙殺されたとの内容もありました。自治労にしても某団体にしても多数の人が参加している以上、いろんな意見が存在していると思います。同じ色、同じ意見の人ばかりが参加してることはないと思います。だから内部においてどのような意見交換がされて、どのように平和に対する脅威を評価し、どの脅威から、どのような活動につなげるかが検討され議決されているのでしょう。

このコメントの最後にはnagiさんからは「是非そのあたりの詳細をレクチャーしていただければと思います。OTSU氏にとっては極々当然で不思議な点は存在しない話だと思いますが、私のように不思議で理解できないと思っている人も一定数いるので、可能ならばお願い致します」という言葉が添えられていました。取り急ぎ私からは次のようなコメントをお返ししていました。

平和に関する方針の件ですが、過去の記事本文を通して説明してきているつもりです。きめ細かい一問一答的な対応ではないため、納得いただけない「答え」は「答えていない」と同じにとられられがちな傾向もあるのだろうと理解しています。さらに長い文章は論点がぼけてしまう場合もありますが、簡潔に答えすぎて誤解を招くことも本意ではありません。したがって、たいへん恐縮ですが、やはり機会を見ながら記事本文の中で改めてお答えできればと考えています。このような点についてご容赦くださるようお願いします。

「きめ細かい一問一答的な対応ではないため」と釈明しながらも「平和に関する方針の件ですが、過去の記事本文を通して説明してきているつもりです」という返し方は不遜な言い方だったことを反省しています。たいへん失礼致しました。私自身としては過去の記事「平和な社会を築くために組合も」「政治方針確立の難しさ」「平和フォーラムについて」「組合の政治活動について」などを通し、nagiさんからの問いかけに対する「答え」に相応する内容を説明してきているつもりでした。

これまで数多くの記事を通し、労働組合が一定の政治活動に取り組む必要性を組合員の皆さんに理解を求めながら、定められた機関手続きを経て運動方針を確立しているという記述を数多く残してきました。ただ組合の運動方針の決め方について、nagiさんから示された上記のような具体的な問いかけに沿った子細な説明までは行なっていなかったことも確かです。そのため、nagiさんから下記のようなコメントも寄せられてしまっていました。

過去の記事はほとんど目を通しました。たしかに手続きに関する記載はありました。しかし議決に至る過程について詳細な説明はなかったと理解しています。また過去の記事でOTSU氏の職場でフリー懇親会をして若手と組合幹部が自由に話をする取組の紹介がありました。その中で、>女性組合員の方が「私も原発はないほうが良いと思っていますが、エネルギー問題を考えた時、脱原発という運動の難しさもあるのではないでしょうか」という言葉を選びながらも率直な問題提起を行ないました。事前の組合ニュースの例示の一つにしたほどでしたので、私としては貴重な提起をいただいたものと歓迎していました。すると複数の組合役員から「原発推進は絶対ダメ」という説得調の発言をかぶせてしまい、いわゆる二項対立的な議論の流れを強めてしまいました。

また、他のコメントでも、意見を言っても黙殺される事例が報告されています。多数の構成員がいる以上、多様な意見が存在し、それについて評価と議論が存在すると思い、その内容についてOTSU氏に聞いてみたわけです。私は某団体のように特定の思想信条に強く影響を受けたり、特定の国の影響下にあるような組織(注 コメント投稿者の推論です)とは異なり、自治労を始めとする平和運動を行う多くの労働組合は、どのように内部の意見を取りまとめているか興味がつきません。まさか日頃政権を非難するような少数意見を無視したり踏みにじったり、排除したり、最初から無かったように取り扱うことはないと信じています。そのうち教えていただければと思います。

上記コメントの前段に引用されている記述は私どもの組合の取り組みを報告した「フリー懇談会を開催」に記した内容です。その場で私から組合役員に対し、もっと注意すべきだったものと反省しながら発言された女性組合員にはお詫びしていました。ただ「他のコメントでも、意見を言っても黙殺される事例が報告されています」という文脈の中で指摘されてしまうと悩ましい点があります。他の組織の実情を詳細に把握している訳ではなく、責任を持てる立場ではありませんので、あくまでも私どもの組合のことを中心に説明させていただきます。その上で他の組織も同様だろうと推察できる点について補足していくつもりです。

まず結論から述べます。組合の運動方針を決める際、nagiさんが思い描いているような緻密な対比や検証は行なっていません。これまで積み上げてきた大きな運動方針の枠組みがあり、その範囲内で新たな要素や情勢を踏まえた議論を加え、1年単位(組織によって2年間)の具体的な活動方針を定めています。このあたりは労働組合に限らず、様々な組織一般に見られる傾向ではないでしょうか。それぞれの組織が発足した際、白紙から大きな方向性を決める議論の時、きめ細かい検討は必要だったのだろうと思います。

しかし、ひとたび組織の綱領や規約を定め、その基本的な方向性のもとに滑り出してしまうと、大きな方針転換の是非を巡る議論は滅多に見られなくなるはずです。念のため、大きな方針転換は絶対はかれないという説明を加えている訳ではありません。私どもの組合で言えば、組合員全員を参加対象としている定期大会が組合の運動方針を決める場となっています。その場で賛成が得られなければ、執行部が提案した運動方針に沿った活動は進められません。

定期大会では執行部原案に対し、出席した組合員が修正案や補強案を書面で提出し、議論を交わした上、採決に付す場合もあります。私が20代の頃、市議選を巡る方針が定期大会で否決されました。その結果、翌年の市議選に立候補を予定していた方は市議会に打って出ることを見送ることになりました。このような事態は極めて稀なことですが、組合の運動方針は組合員の意思で決めるという当たり前な事例として思い出しているところです。

もちろん定期大会に出席した際、口頭で意見を述べることで運動方針を修正や補強することもできます。定期大会の場でnagiさんのような問題意識を持たれている組合員から発言があれば、このブログに記しているような考え方をお答えしていくことになります。論点によっては平行線をたどり、受け入れるという話にならないのかも知れませんが、少数意見を黙殺や排除するという考えは毛頭ありません。

私自身、自治労の基本的な方針に賛同している立場です。そうでなければ、ここまで長く自治労に属する組合の執行委員長を務めることはできません。一方で、組合員の中には多様な考え方があり、自治労の方針や活動を冷ややかに見ている方が多いことも自覚しています。このブログの場以外でも、そのような声を直接耳にする機会があるため、私自身の責任範疇となる私どもの組合活動の中で心がけている点が多々あります。

日常の組合活動の中では職場課題が中心であること、そのことをストレートに反映した組合ニュースや機関誌の紙面作りに努めていること、政治的な課題に対しては「反対しよう!」という呼びかけよりも「なぜ、取り組むのか」という説明を重視していること、各種集会参加に対する職場割当の動員要請は行なっていないこと、それぞれ当たり前なような話かも知れませんが、20年以上前から比べれば様変わりしている点だと言えます。

組合の運動方針の決め方として、このような様変わりを一例として上げられます。組合の規約改正や産別選択など大きな方向性を変えるためには組合員の総意が欠かせません。場合によって無記名の一票投票が求められます。一方で、日常の組合活動を規定する年度単位の運動方針の原案は執行委員会で決めます。定期大会での大幅な修正が極めて稀な現状である中、それまでの組合の運動方針に対し、疑義や軌道修正の必要性を認識されている場合、組合役員を担うことで変革への可能性が広がります。

そのような問題意識を持たれている方が一人で執行委員会に加わっても変革は期待できません。しかし、多数を占めた場合、定期大会に提案する運動方針に軌道修正を加えられるはずです。その原案が定期大会で可決されれば、日常の組合活動も一新されていくのではないでしょうか。幅広い考え方の組合員の皆さんが組合執行部に加わっていただくことを歓迎しています。その上で運動方針を大きく変えるかどうかの議論が行なわれる場合は、私も自分自身が正しいと信じている「答え」を執行委員会の中で訴えていくことになります。

極端な事例を示したことで、nagiさんからの問いかけに対する論点をぼかしているような印象を与えていたとしたら恐縮です。この記事を通して強調したいことは、組合の運動方針は一握りの組合役員だけで決めている訳ではなく、組合員一人ひとりが関与できる機会や仕組みがあるという点です。平和や安全保障のあり方について、膨大な資料をもとに議論したい場合、定期大会で示すことも、組合役員になって執行委員会で提起する道も開けています。特に組合役員の担い手が極端に不足している中、執行委員会に参加する敷居は低く、一人でも多くの方に検討していただければ本当に幸いなことだと考えています。

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