2017年2月26日 (日)

非常勤職員制度見直しの動き

より望ましい「答え」を見出すためにはマスメディアやSNSの特性や難点を的確に理解した上、一つの経路からの情報だけを鵜呑みせず、意識的に幅広く多面的な情報に触れていくことが欠かせません。このあたりは昨年末に投稿した「SNSが普及した結果… Part2」などの記事を通して訴えてきています。先日、読売新聞の見出し「正社員と非正規の賃金差、過去最少に…男女差も」に目が留まりました。

厚生労働省は2016年の賃金構造基本統計調査で、正社員の賃金は32万1700円(前年比0・2%増)、フルタイムで働く非正規労働者は21万1800円(同3・3%増)だったと発表した。正社員の月額賃金を100にした場合、非正規労働者の賃金は65・8(同1・9ポイント増)となり、統計を始めた05年以降、格差が最少になった。男性の賃金は33万5200円(増減なし)だったのに対し、女性は24万4600円(前年比1・1%増)で、男女間の格差も過去最少だった。【読売新聞2017年2月23日

新聞に限らず、見出しの言葉によって接した情報に対する印象が変わりがちです。「過去最少に」は文字通り格差是正が進んでいる印象を受けました。この調査の結果自体は肯定的にとらえるべきものですが、ちなみに朝日新聞の見出しは「非正規と正規の賃金格差が最小に 水準6割は変わらず」でした。「水準6割は変わらず」と付けることで、まだまだ格差の問題は深刻であるという印象を与えています。

今回の報道に関しては考えすぎなのかも知れませんが、新聞各社の政権との距離感によって見出しの付け方も変わってくるようです。報道の力の入れ具合も極端に変わるようであり、国有地の売却額が問題視されている森友学園に関する記事を読売新聞の紙面で探すことは難しい現況です。今回のブログ記事で直接取り上げる題材ではありませんので、参考までにブックマークし、定期的に訪問している澤藤統一郎さんのブログ「憲法日記」の最新記事や『日刊ゲンダイ』の巻頭特集の紹介にとどめさせていただきます。

さて、1年前に投稿した記事「春闘期、非正規雇用の課題」の中で綴ったとおり私どもの組合は「嘱託職員に関する独自要求書」を市側に提出し、①嘱託職員の報酬に報酬表を導入し勤務年数によって引き上げること、②嘱託職員に一時金を導入すること、③全嘱託職員に代休制度を導入すること、④嘱託職員の休暇制度を充実させること、以上4点を中心に労使協議を進めてきています。現在、国全体の動きとして「働き方改革の行方」という記事を通して伝えているとおり「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」が大きな政治課題となっています。

その記事「働き方改革の行方」に対しては、一生非正規さんから多くのコメントをお寄せいただいていました。私からのレスの一つに「今後、正規への登用など課題によってハードルの高さが異なっていくものと思います。その中で、地方公務員の非常勤職員制度では下記報道のような追い風も吹き始めています。このような追い風を活かし、私どもの組合では嘱託職員に関する要求を2017年度から一つでも実現できるよう頑張っていくつもりです」というものがありました。

総務省の有識者会議「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」は27日、非常勤の地方公務員にボーナスを支給できるよう制度改正を求める報告書を高市早苗総務相に提出した。正社員と非正規社員の賃金格差を是正する民間の「同一労働同一賃金」と歩調を合わせる。総務省は地方公務員法の改正も視野に検討する方針だ。地方公務員の臨時・非常勤職員は2016年で64.5万人。事務補助のほか教員や保育士、給食調理員、図書館職員など分野も幅広い。

現行制度では国家公務員の非常勤職員にはボーナスを支給できるが地方公務員の非常勤には支給できない。報告書では地方公務員法に一般職非常勤職員の採用方法などが明記されていないことも問題視し、制度改正を求めた。自治体によっては、本来専門性の高い弁護士や医師らを想定する「特別職」として事務補助職員を採用するケースもみられる。特別職は育児休業の取得が認められず、出産後に退職を余儀なくされる例が目立つという。【日本経済新聞2016年12月27日

「非常勤の地方公務員にボーナス支給を 総務省研が報告書」という見出しの報道を紹介しましたが、追い風ばかりではない憂慮すべき動きも見受けられています。一生非正規さんから参考サイトの紹介とともに「働き方改革で特別職の嘱託は単なる事務補助員ということで雇い止めされそうです 助けて下さい」という悲痛なコメントも届いていました。昨年12月27日に提出された「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会」の報告書を受け、紹介されたサイトの参院議員は次のように語られていました。

地方団体では、厳しい地方財政の中、多様化する行政ニーズに対応するために臨時・非常勤職員及び任期付職員などの多様な任用・勤務形態が活用され、その数は毎年増大しています。地方団体によっては、事務補助職員も特別職で採用するなど、制度の趣旨にそぐわない任用も行われています。そのため、この研究会では、臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用の在り方を検討していました。

報告書によると、地方公務員法が適用されない特別職として全国で22万人もの非常勤職員が採用されていました。本来、特別職とは首長や委員等の専門性の高い職であり、地方公務員法が適用されないために守秘義務や政治的行為の制限などの制約が課されません。このような特別職に、単なる事務補助職員を任用するのは問題があります。しかも、特別職は、採用方法が明確に決まってないために地方団体にとっては任用しやすく、一般職非常勤職員の任用が進まないという現状があります。

一生非正規さんからの「助けて下さい」というコメントを受け、私からは「本来、非正規の方々の待遇改善を目的にした法改正等の動きの中で、ご指摘のような問題が生じかねないことを憂慮しています。一生非正規さんに対し、直接的な手助けは難しい関係ですが、私自身ができること、すべきことに力を注がせていただきます。まず何よりも私どもの自治体に雇用され、組合加入されている嘱託の方々の一方的な雇い止めを許さないこと、このような法改正等の動きについて当ブログを通して情報発信や問題提起していくことなどがあります」とお答えしていました。

「一生非正規さんからの切実な訴えに呼応できず、たいへん申し訳ありませんがご理解ご容赦くださるようよろしくお願いします」とも書き添えていましたが、これまで特別職非常勤職員という法的な位置付けで雇用し、制度が変わったから雇い止めにするような話は非常に理不尽なことです。ちなみに今後、地方自治法及び地方公務員法の改正によって手当支給を可能とする一般職非常勤職員に関しても任期は従前通り「最長1年」にとどまり、雇用不安が解消されない見通しです。

以前の記事「改正労働契約法の活用」の中で、無期労働契約への転換「有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた時は、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる」というルールを紹介していました。さらに「労働契約法第18条に定め、2013年4月1日に施行されています。5年のカウントは2013年4月1日以降となり、申込みの方式に制限はなく、口頭でも問題ありません」という説明を加えていました。

しかしながら地方公務員については、労働契約法第22条1項で労働契約法の適用がない旨を明記し、同法第18条の適用外となっています。地方公務員の採用は相手方の同意を要する行政行為(任用)と解され、労働契約ではないと考えられています。したがって、非常勤職員が5年以上雇用されても、労働契約法による任期の定めのない職員として任用する義務が発生しないという法的な位置付けにとどまっています。

今後、地方公務員の非常勤職員制度が実情に合わせて整備されていく動きは評価すべきことです。しかし、その動きの中で一生非正規さんのような方々が本人の意に反し、雇止めされていく事態は大きな問題です。働き方改革実現会議の中での議論の柱としている「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」が最も重要な目的であるはずであり、その目的に沿った非常勤職員制度見直しの動きが強く求められているのではないでしょうか。最後に、自治労のホームページに掲げられている直近の取り組みを紹介させていいただきます。

非正規労働者の組織化推進のため、「2017非正規労働者組織化経験交流集会」を東京・大阪・福岡で開催。全国の組織化担当者らが参加し、非正規労働者の組織化にむけ経験交流をした。2月11日の東京会場には16県本部と社保労連から88人が参加した。 冒頭、主催者あいさつに立った杣谷副委員長は「非正規労働者は自ら声をあげようとしても立ち上がれない。すべての単組でこちらから声をかけ、処遇改善にむけて組織化を進めていこう」と述べた。

本部提起では、自治体の臨時・非常勤の比率は3割に上り、多くが年間賃金200万円の低い水準にあることを紹介した上で、「非正規の労働条件を改善しなければ、全体の改善にはつながらない。任用・雇用形態の違いによって対立していては、不満が使用者に向かわず、働く者同士で対立してしまう」と雇用形態に関わりなく、全ての職員が団結することの必要性を訴えた。

また、職場にこれだけ非正規が増えたことについて、「労働組合は責任をとらなくてはいけない」とし、責任を持って非正規労働者の組織化と処遇改善に努める、という本部の方針を示した。その後参加者は、①基本的な組織化のすすめ方、②未加入者へのアプローチのしかた、の2つの分科会に分かれ、それぞれ参加型で学んだ。参加者からは「組合用語を使わないようにしなくては」「保育や看護など専門職のところに行く際には、同じ職種の役員と一緒に行ったり想定問答集を事前に作る必要があると思った」「何度も足を運んで納得頂けるまで話すことが大事」などの感想があげられた。

12日の大阪会場には74人、18日の福岡会場には250人が集まり、参加者総数は全国で412人にのぼった。 教材として使用した「臨時・非常勤等職員組織化マニュアル(2017年2月改訂版)」では、なぜ臨・非の問題に取り組むのか、その理由の解説から、実際の組織化に向けて「執行部の意思統一」から「組織化後の活動準備」までの6段階ごとに分けて具体的な解説をしている。またアンケートや規約などのひな型も収録。自治労ではじちろうネットでは、このほかにも非正規の仲間づくりに使える資料が多数掲載されている。非正規労働者の処遇改善のため、10万人の組織化達成にむけ活用してほしい。

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