2017年6月17日 (土)

いわゆる「共謀罪」成立

前回記事「もう少し加計学園の話」の冒頭、そろそろ政治の話から離れた身近な職場課題を取り上げるつもりであることを記していました。国会の会期が延長されているようであれば今週末に投稿する新規記事は「ジタハラ」に絡んだ内容を考えていました。しかし、与党は参院法務委員会での採決を省く「中間報告」という異例な手法を強行し、組織犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」を成立させました。このようなタイミングとなり、今回も政治の話を書き進めていきます。

犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法は15日朝の参院本会議で、自民、公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。参院法務委員会での採決を省略し、本会議で「中間報告」を行う異例の手法で、与党が採決を強行した。14日から徹夜の攻防で、抵抗する野党を押し切った。一般市民が処罰対象になったり、内心の自由が侵されたりする恐れが指摘される中、政府は同法を7月11日に施行する方針だ。採決の結果は、賛成165、反対70だった。参院で自民党と統一会派を組む日本のこころも賛成に回った。民進、共産、自由の各党は反対した。

安倍晋三首相は成立を受け「東京五輪・パラリンピックを3年後に控え、一日も早く国際組織犯罪防止条約を締結し、テロを未然に防ぐために国際社会と連携していきたい」と官邸で記者団に強調。その上で「適切、効果的に法律を運用していきたい」と述べた。民進党の蓮舫代表は、参院本会議での採決に先立つ討論で「安倍内閣に共謀罪の執行を委ねたら、どんな運営をされるかという不安は、際限なく膨らんでいる」と批判した。野党4党は成立阻止を目指し、14日夜に安倍内閣不信任決議案を出したが、衆院本会議で15日午前2時前に与党などの反対多数で否決された。これを受け同3時半ごろ、参院本会議で秋野公造法務委員長(公明)が中間報告を実施。続いて採決が行われた。

与党は、性犯罪の厳罰化を柱とする刑法改正案を16日の参院本会議で可決、成立させ、18日までの会期を延長せず国会を閉会する方針。学校法人「加計学園」問題を巡る野党の追及を避け、23日告示の東京都議選への影響を最小限にとどめる狙いがある。「共謀罪」法は犯罪の実行を2人以上で計画し、うち1人が準備行為をした場合に罰せられる内容。実行後の処罰を原則としてきた刑法体系が大きく変わる。【東京新聞2017年6月15日

上記報道のとおり「共謀罪」が成立したことで6月18日までの会期だった通常国会は延長されずに閉じられることになりました。「加計学園の問題を巡る野党の追及を避け、23日告示の東京都議選への影響を最小限にとどめる狙いがある」と記されていますが、この思惑を否定できる方は極めて少数なのではないでしょうか。ただ法案そのものの成立に関しては賛同されている方々が決して少数でないことも認識しています。例えばフリーアナウンサーの長谷川豊さんは『「共謀罪がぁ」と言って必死になって論のすり替えをしている連中に言いたい』というブログ記事を投稿されていました。

テロ等準備法について。というか「改正組織犯罪処罰法」について。必死になって「共謀罪」「共謀罪」と訴え、唾を飛ばしながら反対を唱える方々がいるが、そのロジックがこちら。「捜査機関が解釈で法に触れると判断すれば、一般市民だって捜査の対象とされて、
盗聴や監視や密告などの手段を通じ、話し会いや計画の段階から情報の収集が行われて、処罰の対象となる危険性が生まれた。これは言論・思想の自由が脅かされることに他ならない!」 おいおいおいおい。話のすり替えも甚だしい。勘弁してくれ。私のコラム読者ならもう解説もいらないだろうが、あまりにふざけているのでコメントさせてほしい。

「一般市民が捜査機関の解釈で法に触れると判断」され、その結果【捜査の対象】になることが重要なんじゃないか。それを今まではな~~~~んにもしてこなかったから、危険だって話だろ? 話のすり替えはその後だ。「処罰の対象となる危険性が生まれた!」 おい、いい加減にしろ。「捜査の対象」となることと「処罰の対象になる」は全くリンクしていない話だ。いい加減な論説を広めるんじゃあない。「捜査するぞ!」「テロ行為を準備しようとするなら、それだけでも捜査してやるぞ!」

ここが大事なんじゃないか。その捜査の結果、一般市民は何にも悪いことなどしていないし、テロの準備など全くしていない訳だ。その段階で「捜査のご協力、ありがとう」でおしまいだ。なんでこれに「一般市民」が巻き込まれるんだ?どういうロジックなんだ。それ?どうも、こういうことを必死に叫んでいる人々というのは、年末に飲酒運転の検閲を行っているあの交通安全課の取り締まりを許すことが出来ない人らしい。「何の罪もない一般人」」が「死ぬほど捜査対象になって」るが、あの息をスーハーする奴が何があっても許せないらしい。

きっと空港のサーモ検査とか、腹が立ってしょうがないのだろう。何の罪もない乗客をエックス線検査するのだから。体のラインまで分かっちゃうんだから。「容疑者」と「犯罪者」は違う。「捜査」と「処罰の対象になる」は全然違う。その程度の日本語が分かっていないらしい。「警戒」は当然必要なことだ。どの世論調査を見ても賛成多数の「テロ等準備罪」を盛り込んだ「改正組織犯罪処罰法」。安保法案の時と全く同じことを繰り返したい。こんなもん、普通だ。騒ぐだけ勉強不足がバレるだけであることを自覚した方がいい。

長谷川さんは最後に「勉強不足がバレるだけ」と記されていますが、本当にその通りなのでしょうか。言うまでもありませんが、テロを未然に防ぐための手立てを全力で構築するという考え方は誰も否定できないはずです。したがって、今回の法案がテロ防止に特化したものであれば、もっと世論調査等で賛同する声が増えていたように思っています。ちなみに金曜夜の『報道ステーション』に出演した憲法学者の木村草太さんは今回の法案とテロ対策との関係を次のように語っています。

共謀罪については、政府は2つの目的があるとずっと説明してきた訳で、パレルモ条約批准とテロ対策と言ってきた訳です。しかしパレルモ条約というのは、そもそもテロ対策の条約ではなく、マフィアや暴力団の対策のものですし、それから日本は暴力団対策も進んでいますし、重大犯罪については、予備罪が処罰され、しかも予備罪の共謀共同正犯ということで、予備行為の共謀した関わった人はみんな逮捕出来るという法律ですから、これは今回の法律が無くてもパレルモ条約に批准できるのだろうという、専門家のあの強く言われていた意見でした。

それから、やはりテロ対策の法律という点も大きな問題があって。テロ対策については、実は関連する条約に基づいて充分な立法がなされていると言われています。実際下見とか資金準備など、今回の法律で捕まえるぞという問題については、『公衆等の脅迫目的の犯罪行為の為の資金等の提供等の処罰に関する法律』というちょっと長い名前の法律があって、既に包括的に処罰対象になっていました。ですからテロ対策に、今回の法律が付け加えることは何もなかったんですね。今回テロの危険と監視社会のどっちを選ぶか?みたいな論点が形成されてたんですが、そもそも今回の共謀罪、テロ対策には使えない、使わないものな訳ですから、そういう論点の形成自体が間違っていた。

本当の論点というのは、テロ対策という政府の噓を許すかどうかという論点で。この論点であれば結論は明らかである訳ですね。やはりあの政府の目が、政府が国民を誤摩化しにきた時に、やはり多くのメディアがきちんとそれを見抜き、また有識者もテロ対策というのは噓だなということをきちんと見抜かないと、国民が正しい判断ができません。ですからやはり、メディアの側も日頃から優秀な専門家とコミュニケーションを取って欲しいと思いますし。やはり今回、あのテロ対策だからこの法律に賛成したという有識者の方は、是非本当に自分が発言した資格があったのかどうか、きちんと考えて欲しいと思いますね。

予備罪と共謀共同正犯との組み合わせでテロを計画・準備していた場合、現行法でも逮捕できることが説明されています。「テロ対策という政府の嘘」とまで言い切ってしまうのはどうかと思いますが、テロ対策を前面に押し出せば法案が通しやすいと考えたことは間違いないはずです。嘘と言えば、安倍首相は五輪招致の際に「東京は世界有数の安全な都市」と強調していましたが、「国内法を整備し、国際組織犯罪防止条約を締結できなければ東京オリンピックを開けない」と矛盾する発言に転じていました。

「安全な都市」が嘘だったのか、「国内法を整備しなければオリンピックは開けない」が嘘だったのか、どちらかが嘘だったことになります。ただ第1次政権の時から安倍首相の言動を注視してきていますが、嘘をついているという認識のないまま発言しているようにも見受けられます。話は少し横道にそれますが、安倍首相は国会で答弁中に「野次を止めてください」と発言した直後、閣僚席に戻ると自分も野次を放っていました。嘘云々以前の問題としてトップリーダーの資質が問われてしかるべき振る舞いであるように危惧しています。

これまでも当ブログの中で記していますが、安倍首相が「国民を豊かにするため」「平和を守るため」という信念のもとに様々な政策判断を重ねているものと信じています。そのため、安倍首相が進める法案だから反対するという思考は避け、何が正しいのか、どの選択肢が正しいのか、色眼鏡を外して物事を見ていくように努めています。このような思考や判断基準のもと今回の組織犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」の成立に私自身は反対していました。

一方で、パレルモ条約批准の必要性は認識していますので、その目的に特化した法整備は進めるべきものと考えています。民主党政権時代、実現できていれば今回の課題の一つは解決済みだった訳であり、たいへん残念なことだと思っています。共謀罪のある国でもテロは防げないという言い分を耳にします。しかし、どれほど法整備を進め、罰則を強めても犯罪を根絶させることは困難です。残念ながら現状ではテロも同様な見方をしなければなりません。そのような中でも可能な限りテロは未然に防ぐべきものであるため、共謀罪だと批判されないようなテロ対策に特化した法案であれば前述したとおり賛同者は多数を占めていたはずです。

法案が成立後、幅広い情報を得ることの大切さを踏まえ、ネット上で数々の意見に目を通しています。その中でも弁護士の方々が強く反対していることに着目しています。一つ一つ紹介し、私自身の拙い文章を補強したいところですが、これ以上長い記事になることも控えなければなりません。そのため、最後に弁護士であり、自民党の衆院議員だった早川忠孝さんのブログの記事「さて、こういう質問にはどうやって答えるのがいいのだろうか」に絞って紹介させていただきます。

捜査の対象になったことがない方に、警察の捜査の現場でどういうことがあるのかを理解していただくのは難しい。裁判所や検察のチェックが十分機能していれば、警察の暴走などあり得ない、何も心配しなくてもいい、ということになるのだが、私の拙い経験から言うと、裁判所は殆どチェック機能を果たしていないし、検察が警察を適正にチェック出来ているとも言い難い。検察官が捜査指揮をしているような刑事事件であれば、それなりに適正な捜査が行われている、と信頼していいケースが多いのだろうが、多くの場合は、検察の捜査は警察の捜査を事後的にチェックして起訴するかしないか決めるための上書き捜査をするだけに終わってしまうだろうから、まずは、警察の捜査がどんな風に行われているかを理解してもらう必要がある。

所詮は人間がやることだから、警察にも見込み違いや勘違いがあることは否定できない。組織的犯罪処罰法の適用となる団体について、「『団体』とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。」と規定されているから、反復性のない一般の人にはこの法律は適用されるはずがない、と主張される方がおられるが、反復性があるのかないのかは、調べなければ分からないことだから、警察の方で反復性がありそうだ、というあたりを付けられてしまえば、とりあえずは捜査の対象になってしまう可能性は否定できない。

捜査の結果反復性がないことが明らかになれば、検察が起訴しないことは当然だが、一旦なされた警察の捜査がそれで帳消しになったり、なかったことになるようなことはない。起訴はされないんだし、裁判所で有罪の裁判を受けることにもならないのだから、それで構わないんじゃないか、と言われても、捜査の対象となった人にはとても我慢できないはずだ。テロという凶悪重大な犯罪の嫌疑をかけられたのだったら、被害の発生を未然に防ぐためだからある程度は我慢してくださいね、ぐらいのことは言えるだろうが、およそテロとは関係がない一般犯罪について、その計画に加わっただろうなどと言われて捜査の対象にされてしまうことまで甘受すべし、とはなかなか言えないはずである。

反復性が求められているのは、あくまで組織的犯罪集団そのものであって、個々の個人について計画関与の反復性まで求められているわけではない、ということにも留意しておくべきだろう。反復性が認められる組織的犯罪集団の犯罪実行計画のいずれかに関わったのではないか、という嫌疑が掛けられると、計画に関わったいずれか一人が準備行為まで行ってしまうと、計画に関わったすべての者が計画罪を行った、となってしまうところが、最大の問題点になるだろう、というのが私の見立てである。

テロ等の凶悪重大犯罪の実行を計画するような組織的犯罪集団の構成員やその周辺にいる組織的犯罪集団と密接な関係を有する人間を一網打尽にして、テロ等凶悪重大犯罪が発生する温床を根絶やしにすべし、という議論には賛同するが、テロ等の重大凶悪な犯罪を実行するような組織的犯罪集団とはとても思えないような一般の団体や企業、労働組合の様々な経済行為にまで網を拡げるようなことは止めておくべきだ、というのが私の基本的見解である。

テロ等の凶悪重大な犯罪ならともかく、著作権侵害、意匠権侵害、法人税逋脱、詐欺破産、集団的威力業務妨害などなど、そもそも犯罪になるのかならないのか境界線が不分明な行為について、その実行の計画に関与した、という嫌疑で逮捕されたり、捜査の対象になってしまうことは、さすがに行き過ぎだろうと思う。具体的にどういう風に法の執行がなされていくのか分からない状態で、政府当局の、大丈夫、大丈夫という、いささか自信なげな保証を鵜呑みにすることは出来ない。そんなことは杞憂だ、絶対にそんなことはない、と仰る方は、何を根拠にそう仰るのだろうか。

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