2019年9月14日 (土)

不人気なマイナンバーカード

台風15号の爪痕は各所に大きな被害をもたらしました。1週間近く経った今も千葉県を中心に大規模な停電が続き、日常生活に深刻な影響を及ぼしています。全面復旧までさらに2週間程度かかる見通しです。被災された方々に対し、心からお見舞い申し上げます。

かつてない記録的暴風雨の台風が関東を直撃するという予報でしたので、千葉の皆さんらの苦難を東京に住む私たちは本当に我が身のこととして考えなければなりません。昨年7月に投稿した「西日本豪雨の後に思うこと」という記事の冒頭で次のように記していました。

このような災害を未然に防げる対策が最も大事なことですが、科学が進歩している現在においても残念ながら自然災害を人間の手で制御できるようにはなっていません。したがって、「災害は起こる、災害は避けられない」ということを前提に様々な対策を講じる必要があります。

災害が起きた際、いかにダメージを軽減できるか、できる限り犠牲者を出さず、被害を少なくできるかどうかが欠かせません。つまり防災対策においては減災という視点が重視され、災害が発生しても被害を最小限にとどめるための対策を立て、日頃から準備することが求められています。

特に今回の台風災害では生活インフラのための電気の重要性が際立っています。停電の影響によって断水となり、通信網も支障を来しました。莫大な予算が必要ですが、防災の観点から改めて無電柱化の推進が具体的に検討されていくのではないでしょうか。

さて、このブログの6年前の記事「社会保障・税番号制度」の中で、マイナンバー制度の導入に際して効果の面や情報漏洩のリスクなどを問題提起していました。制度の根幹を揺るがすような漏洩事件は起こっていませんが、マイナンバーカードの取得状況は低迷したままです。そのため、下記報道のような動きが出ています。

政府が国・地方の公務員に、12桁の個人番号や住所、氏名、生年月日が記録されたマイナンバーカードを2019年度末までに取得するよう促していることが分かった。6~7月に、中央省庁や自治体などに対して、職員へ取得を促すことと、取得状況を報告することを指示した。カード取得は法律上の義務ではない。通知は事実上の強制だとの指摘もある。国・地方の公務員数は計約330万人。

政府は6月4日のデジタル・ガバメント閣僚会議で「国家公務員及び地方公務員等については、本年度内に、マイナンバーカードの一斉取得を推進する」と決めた。総務省は翌5日に、自治体や共済組合などへの通知で、職員らに取得を促し、その後、6月末時点の同カード取得状況と、10月末時点の取得・申請状況を報告するよう指示した。

中央省庁の各部局にも、内閣官房と財務省が7月に取得を「依頼」。今年10月末と12月末、来年3月末時点での申請・取得状況を財務省に報告するよう求めている。被扶養者の取得も促している。新規採用職員も、採用時に取得済みとなることを目指すよう求めている。一部の公務員共済組合は、職場を通じ、事前に氏名などを印字したカードの申請書を配布する。

自治労連は「カード申請書の配布や回収、取得状況の調査で拒否できない状況がつくり出される」と指摘。7月末に、カードの一斉取得推進を押しつけないよう求めた。総務省自治行政局公務員部福利課の担当者は「あくまで『勧奨』で強制ではない」と説明。

氏名など個人情報を使ったカード申請書の作成に関しては「マイナンバーカードは健康保険証として利用することになる。その取得支援という意味では、個人情報の利用目的の範囲内だといえる」と話している。

カード発行枚数は8月4日時点で約1751万枚で、人口の約13・7%にとどまる。マイナンバー制度に詳しい清水勉弁護士は「カードの取得率が低迷しているのは需要がないからだ。それを押しつけようとするのは無駄だし、煩わしいだけだ」と指摘する。

<マイナンバーカード> 国内に住む全ての人に割り当てられた12桁のマイナンバー(個人番号)のほか顔写真や氏名、住所、生年月日が載ったICカード。身分証明書になり、2016年1月から申請に応じて自治体が交付している。ICの電子認証機能により、住民票の写しをコンビニで受け取るサービスやオンライン確定申告が可能。健康保険証として使えるようにする改正健康保険法は今年5月に成立した。【東京新聞2019年8月20日

このような動きを受け、私どもの市でも7月に人事課から「地方公務員等のマイナンバーカードの一斉取得の推進について」という通知が発せられていました。労使の事務折衝窓口を通し、個々の職員が取得するかどうか強制されるものではないことを確認していました。この旨を組合ニュースで次のように組合員の皆さんに伝えています。

7月に人事課から「地方公務員等のマイナンバーカードの一斉取得の推進について」という通知が発せられています。もともと取得するかどうか強制されるものではなく、今回の一斉取得推進の扱いも任意であることを人事当局と確認しています。また、市町村共済組合事務局からはマイナンバーカードの取得の有無に関わらず、組合員証(保険証)は従来通りの方式で発行していくという情報を得ています。

以上のような内容を組合ニュースで周知することについて、組合員から「本当にありがたいです」と感謝されました。マイナンバーカードの取得に抵抗感を覚えていた方であり、建前上は任意としながら半強制的な雰囲気につながることを懸念されていたようです。そのため、不安感を抱えた職員の代弁者として組合が市側と確認し、その内容を全体に周知することについて率直に評価していただきました。

ちなみに毎年1回、市町村共済組合議員と事務局職員数名が各所属団体を訪問しています。組合は私と書記長、市側は人事課長、担当係長や担当職員が対応しています。共済組合の事業報告等を受けた後、私どもからの要望や意見を交わす場としています。

せっかくの機会でしたので、私からマイナンバーカードの一斉取得の問題について質問させていただきました。任意だったとしても健康保険を所管する共済組合側の立場からは、できれば取得推進を望んでいるのかどうかが一つ目の問いかけでした。二つ目として、マイナンバーカードを取得しなかった場合、その職員や家族にとって不都合が生じるのかどうかという質問でした。

そのような問いかけに対し、今のところ共済組合としても様々通知が示される中、受け身の立場であるという説明を受けています。ぜひ、取得して欲しいという言葉までは発せられていません。組合員証(保険証)も従来通りの方式で発行していく予定であり、不都合が生じることはないという見方も事務局職員から示されていました。

この話を取り上げた際、私から現金支給だった給与を口座振込に切り替えた時の事例を紹介していました。労働基準法第24条で賃金は通貨で支払うことが義務付けられています。労働組合と合意すれば、口座振込が認められるようになっています。30年近く前になるものと思いますが、市側から提案があって労使合意しました。

給与担当者の事務負担の軽減、出先職場への配送時における安全面などを考慮した判断です。それでも当時は「あくまでも任意であり、強制はしない」ということも確認した上、現給支給を継続できる選択肢を残しました。この選択肢がなければ現金支給を当然視する組合員が多い中、労使合意は難しい雰囲気だったことを覚えています。

私自身も含め、切り替えた時点で大半の職員は口座振込を選んでいました。その中で、しばらくは現金支給を選ぶ職員が一定の割合で見受けられていました。やはり社会情勢も変化していく中、現金支給を希望する職員も徐々に減っていきました。ごく少数になった以降は給与担当者に負担をかけることが気になり始めていたものと思われます。

そのような遠慮から口座振込に切り替える動きが続き、現在、現金支給に固執する職員は見受けられません。口座振込を合意した直後、組合は強制されないことを組合ニュース等で組合員の皆さんに広く周知しました。その後、組合から定期的に周知していくことはなく、組合員一人ひとりの判断に委ねてきていました。

もちろん現金支給を希望しながら口座振込を強制されるような事例があれば、労使確認した事項の履行を求めていく立場でした。そのような軋轢もなく、年月とともに現在の姿に至っているものと理解しています。様々な支払いが口座振替となり、よりいっそうキャッシュレス社会が進む中、今から振り返れば違和感のある話だったかも知れません。

このような過去の事例を紹介しながら、マイナンバーカードがどのような位置付けで必要とされていくのかどうか共済組合の皆さんに問いかけていました。その答えによって組合ニュースのトーンも考えてみるつもりでした。結局、組合ニュースは上記のような内容となり、現時点では到底推奨する必要のない位置付けにとどまっているものと理解しています。

不人気なマイナンバーカードですが、そもそも利便性の高さが認められれば自然と取得率は高まっていくはずです。クレジットカードはコンビニやドラッグストアでも利用できます。JR東日本のSuicaは福岡でも使えるようになっていました。しかし、マイナンバー制度は社会保障、税、防災に関する事務に限定して始まっていることも留意しなければなりません。

より厳重に扱うべき個人情報を載せたカードであることを常に意識していかなければならないはずです。ビッグデータという言葉が注目され始めていますが、マイナンバーカードの普及はそのような方向性での活用も期待されているのかも知れません。そのことは国民監視や管理社会が強まることの懸念につながり、桁違いな情報漏洩リスクなどマイナンバーカードに対する不信感は付きまといがちです。

このような危惧が杞憂であれば、推進する側の政府には払拭に努めていく説明責任が求められています。必ずしも杞憂と言えないのであれば、そのような点を充分伝えた上で取得を勧める公正さも欠かせないはずです。最後に、いろいろ長々と綴ってきましたが、私自身、今のところマイナンバーカードを取得しようとは考えていないことを一言添えさせていただきます。

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