2009年7月 5日 (日)

公務員批判への「答え」は?

金曜日、東京都議会議員選挙が告示されました。総選挙の前哨戦として位置付けられ、各党の党首クラスが初日から街頭で応援演説を繰り広げています。都議選の結果が今後の国政の行方に大きく影響を及ぼす見方はその通りだと思いますが、東京都独自の課題の是非を問う自治体選挙の性格がかすむようでは本末転倒なことです。

2週間前の土曜日に開かれた自治労都本部の組織集会の中で、都議会民主党幹部の方からお話を伺う機会がありました。一番印象に残った点は、やはり石原都知事の非常に強い影響力や権限の問題でした。1000億円を投入し、開業した新銀行東京ですが、事実上経営破綻しました。都知事の発案で始まった事業であり、その面子からも撤退することができず、400億円の追加出資まで行なわれています。

そもそも都が銀行経営に乗り出すことに周囲は皆、懐疑的に見ていたようです。その民主党幹部の方は、中小零細企業への都独自な支援策の必要性を認めながらも、補助制度の充実など直営ではない別な方策が適切であると訴えていたそうです。しかし、都知事の個人的な「大銀行への対抗心」などが強かったこともあり、都民から圧倒的な支持で選ばれている首長の意向が最終的な結論となることは当然の帰結でした。

その都知事を支えているのが都議会で過半数を占めている自民党と公明党の会派でした。強烈な個性でワンマンとなりがちな都知事に対し、適確なチェック機能を果たすためにも都議会勢力図の塗り替えの必要性を感じていました。したがって、そのような意味合いも含め、来週日曜日の都議選での貴重な一票の投じ先を判断すべきものと考えています。

阿久根市の竹原市長の話題から最近、このブログを訪れてくださっている人たちにとって、唐突、もしくは「空気が読めない」出足の文章が続いているのかも知れません。常連の人たちは慣れていただいているものと思いますが、これまで時事の話題や幅広い組合活動の領域をフォローする内容を綴ってきました。そのため今回、きわめて重要な都議選の話題は外せず、前置き的な話として取り上げさせていただきました。

ただし、単なる時事の話題ではなく、竹原市長の手法や発想に一石投じる伏線でもありました。つまり住民から選ばれた首長の判断は最大限尊重されるべきものと思いますが、誤った判断を下そうとした場合、議会などを通してチェックできる機能も民主主義の健全な姿だろうと受けとめています。8449票の支持を得て再選された竹原市長の主張の大半は正しいのかも知れません。しかし、すべて正しいのかどうか、7887票集まった反対する声にも謙虚に耳を傾ける姿勢も大事なのではないでしょうか。

私自身、常々意識していることですが、「答え」を一つと決め付けない心構えの大切さがあります。自分自身の「答え」が唯一絶対的な正解だと決め付けてしまった場合、その「答え」と異なる考え方の人の主張する言葉に耳を傾けづらくなる恐れがあります。竹原市長に関してはネット上からの情報で判断していますが、自分の考えが絶対正しいと思い込むタイプなように見受けられ、石原都知事と相通ずるものを感じ取っています。

言うまでもありませんが、YESかNOかを明確に示し、調整型ではない強力なリーダーシップを発揮する政治家に人気が集まる傾向も充分承知しています。そのため、石原都知事や竹原市長の手法を批判することが、多くの人たちから批判を受けることも覚悟しています。それでも私自身のとらえ方であって、あくまでも受けとめ方は個々人それぞれのものであり、これこそ「答え」は一つではないものと思っています。

一方で、自分自身の「答え」に自信を持ち、その「答え」が他の人にも理解を得られるよう熱く語ることに疑問を呈するものではありません。より正解に近い「答え」をめざし、様々な視点や立場から率直な議論を交わす大切さも強く認識しています。前回の記事(ネット議論への雑感)でも書きましたが、公務員やその組合に対してネガティブな印象を持たれている方々との「溝」を埋める言葉は簡単に見つからないかも知れません。それでも言葉にして、公務員側の言い分を発信し続けない限り、その「溝」が埋まることもあり得ません。

今回の記事では公務員に対する批判の声を受けとめ、これまで「公務員のためいき」で綴ってきた以前の記事内容を紹介しながら私自身の考え方を示させていただきます。なお、このブログは個人の責任で運営している点を改めて強調しなければなりません。当たり前な話ですが、公務員や自治労全体を代表しているものではなく、一定の前提や制約があることをご理解ください。⇒参考記事“「襟を正す」記載の難しさ”“是々非々の議論

公務員の年収は高すぎる?

阿久根市では地域実情と比べ、その市の職員の年収は高すぎるという批判の声が高まっています。竹原市長の主張は「阿久根市の実態に合わせるべき」というものでした。しかし、公務員の賃金は国や他の自治体職員との均衡をはかるように求められています。その公務員賃金の相場そのものも労働基本権制約の代償機能である人事院が年に1回、同種同等の原則を踏まえ、企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上の民間会社の実態を調査して決まっています。⇒参考記事“ブログで有名な阿久根市長”“公務員賃金の決められ方

もともと地方公務員の賃金水準は全国画一ではなく、ある程度地場の相場に応じた差がありました。さらに最高18%までの地域手当によって、都市部と地方との実情の差を埋めるような仕組みが取り入れられています。それでも阿久根市のような官民格差が指摘される理由として、年齢給が強く反映された制度設計も一因だと言えます。若手職員の年収は300万円前後ですが、どこの自治体も職員数を抑制するため、新規採用を手控えている状況があります。その結果、職員の平均年齢が高くなり、必然的に年収の平均も高くなる傾向をたどっています。

宝島』8月号の特集「99%の公務員は貧乏だ!」という記事の中で、「『公務員は恵まれている』というのは、ある意味正しく、ある意味誤解です。特に、年齢層の違いによる待遇格差は大きい」「35歳・キャリア組の課長補佐にしても、民間の大手企業と比べればけっして高額ではありません」などと記されています。その他、様々なデータや取材記事が掲げられていましたが、一口で「公務員は…」と言い切れないことを実証している内容だったものと思います。

公務員の年収について、結局、どこと比べるのかによって高低の評価は分かれます。『会社四季報』をめくれば、テレビ局従業員の平均年収は1300万円台が並んでいます。上があり、下があって平均というモノサシとなります。なお、これまで「なぜ、人事院は50人未満の企業も調査対象としないのか」という問いかけを数多く聞いてきました。もっと極端な「公務員は安定しているのだから民間の平均以下でいいのでは」という言い方も示されていました。

クビにならないという安定分を収入から引くべき?

まず公務員は「クビにならない」という見方がありますが、確かに整理解雇の対象とはなりません。しかし、民間でも整理解雇するためには4要件があり、労働者のクビは簡単に切れるものではありません。ちなみに雇用調整を行ないやすくしたのが労働者派遣法の対象拡大であり、そのことが昨年末から大きく取り沙汰されている「派遣切り」の問題につながっています。

一方で、公務員は法令遵守の率先垂範が義務付けられ、ひとたび違反した際、民間の人より厳しく処分されるようになっています。例えば飲酒運転などによる厳罰化が顕著であり、身から出たサビで仕方ないことですが、その面では民間の人より一般的に公務員のクビは切られやすくなっています。また、マスコミによる事件の注目度も高くなり、社会的な制裁の受け方も厳しくなっているようです。

もっと収入を得たいと思っても公務員はアルバイトができません。兼業が法律で禁止されています。それは職務に専念する義務があるからです。つまり夜間のアルバイトをして、昼間の公務に支障が出ることが絶対許されないからです。その代わり余程ぜいたくをしない限り、生活に困らない賃金が保障されていると言われています。なお、多くの民間会社も就業規則によって兼業は禁止されているようですが、自社の仕事に専念させる趣旨などは同様だろうと思います。⇒参考記事“「公務員はいいね」に一言

身分保障があって、賃金水準がほぼ横並びだから「働かない公務員が多い」と批判されがちです。しかしながら鳥取県では、2年連続で勤務成績が最低ランクだった職員に自主的な退職を求めるような時代に変わろうとしています。「ローリスク・ハイリターンはおかしい」という指摘もありましたが、そのような見られ方の多さは非常に残念なことです。本来、平均である公務員賃金を引き下げようとする発想よりも、賃金水準の社会的な底上げを理想視すべきものと思っています。

賃金の引き下げは労使交渉で!

このように長々と書いてきましたが、まだまだ公務員批判に対する私なりの「答え」は不充分であり、様々な角度から反論を受けるのだろうと思います。これから述べることについても「公務員に労働組合はいらない」と思われている方々とは、かみ合わない論点となるのかも知れません。今回記事の最後に、改めて阿久根市のような例に戻ります。どうしても地域の実情などを踏まえ、賃金の引き下げを行なう場合は使用者側の目線だけで決めるのはフェアではないため、当該の労働組合と協議を尽くすべきものと考えています。

財政破綻の危機を前にしても「人件費は聖域にすべき」と言い切るものではありませんので、その必要性などを使用者側が充分説明した上で、組合との合意形成をはかる手順が求められています。その際、住民の皆さんに対する情報公開も重視すべきですが、団体交渉そのものをリアルタイムで公開するかどうかは当該の労使の判断だろうと思っています。いずれにしても住民の皆さんに「非公開」とすべき労働条件はないはずであり、その中味を厚遇と評価するのかどうかは個々の皆さんの「答え」に委ねるしかありません。⇒参考記事“公務員に組合はいらない?”“橋下知事の人件費削減案

| | コメント (30) | トラックバック (2)

«ネット議論への雑感