2017年7月22日 (土)

マスコミの特性と難点

前回記事「改憲の動きに思うこと Part2」の冒頭に私自身のブログとの関わり方について改めて説明させていただきました。ブログの管理は週末に限り、コメント欄での難しい問いかけに対しては記事本文を通してお答えしている現状などを記していました。そのため、今回は前々回記事「改憲の動きに思うこと」のコメント欄でnagiさんから寄せられた下記の問いかけに対し、私自身の問題意識や思うことを書き進めてみます。

先日の閉会中審査における加戸元知事の発言、それと京都産業大学の獣医学部断念の経緯発表。さて報道機関はまたもや報道しない自由を発動するのでしょうか。この二つの発言により、加計学園に関する問題がなにもないことがはっきりするわけです。まあマスコミの思惑どおり無理やり問題があるように報道し不都合なことは報道しない。おかげで憎い安倍政権の支持率も下がり続けてますね。マスコミによる世論の誘導こそが民主主義の敗北の一つであると私は考えますね。国民が自分で考えるのではなくマスコミに踊らされた結果がこれですから。かつての大本営発表で戦争に向かって高揚していたのと何が違うのだろうか。日本のジャーナリズムは本当に死んだなあと思う夏です。

コメント欄では取り急ぎ私から「メディアの特性や難点を理解した上、意識的に多面的な情報に接していく大切さは当ブログを通して訴えてきています。また、いわゆる右や左の立場それぞれ自分自身にとって都合の良い情報を評価しがちな点を記したこともあります。今回、加計学園の問題も上記のような傾向が強く表われているものと思っています。今週投稿する新規記事はそのような点まで触れられそうにありませんが、機会があれば記事本文を通して掘り下げてみたいものと考えています」とお答えしていました。

メディアと一口で言っても読者層のターゲットを絞っているマイナーな新聞や雑誌と区別するため、マスメディア、もしくはマスコミと表記していくことが適当だったのかも知れません。マスメディアとマスコミという言葉も少し意味合いが違うようですが、一般的には同義語のように使われています。今回、nagiさんはマスコミと呼んでいましたので、この記事の中でもマスコミと記していきます。実は以前投稿した「卵が先か、鶏が先か?」の記事の中でもマスコミと記していました。

その記事のタイトルは「マスコミが世論を作るのか、世論がマスコミの論調を決めるのか」という意味合いをこめていました。マスコミの活動は、どうしても多くの人に「見てもらう」「買ってもらう」ことが欠かせない目的となるため、国民の評価や人気を意識している傾向があることを綴っていました。高い支持率を維持している政権に対しての批判は及び腰になりがちです。しかしながら潮目が変わり、支持率が下がった政権に対しては一気に批判的な論調になるというマスコミの移り気について取り上げた記事でした。

このような傾向は変わることなく、これまでマスコミ対策に力を注ぎ、盤石だと見られていた安倍政権も例外ではなかったようです。したがって、マスコミが最近になって特別に変わったという見方はしていません。このような特性があることを前提にマスコミからの情報と付き合わなければならないものと考えています。マスコミが意図的に政権を攻撃し、世論を誘導している訳ではなく、結局のところ様々な情報を国民が知ることができるようになって支持率の低下につながっているのではないでしょうか。

昨年末の記事「SNSが普及した結果… Part2」の中で「報道しない自由」というマスコミの報道の仕方を批判する言葉について記しています。この言葉は、いわゆる左や右それぞれの立場の方々から発せられています。だからこそ意識的に幅広く、多様な情報や考え方にアクセスしていくことが重要です。そのツールとしてインターネットがあり、SNSの活用が手軽な時代となっています。とは言え、「願望」という調味料が加味されたマスコミ批判の傾向も強いように感じちがちです。

学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐる参院の閉会中審査が10日午後、衆院に続いて始まった。参院では参考人として、衆院で答弁した前川喜平前文部科学事務次官らに加え、文科省OBの加戸守行前愛媛県知事が招致された。獣医学部誘致を進めた加戸氏は、前川氏の「行政がゆがめられた」との主張を念頭に、「強烈な岩盤に穴が開けられ、ゆがめられた行政がただされた」と学部新設計画の意義を訴えた。参院での審査は、文教科学、内閣両委員会の連合審査として開かれた。【産経新聞2017年7月10日

マスコミが加戸前知事の発言などを大きく報道しないため、nagiさんはマスコミに対する不信感を高められているようです。加戸前知事の説明で安倍首相に対する疑惑は解消され、このような国会での重要証言を報道しないマスコミへの批判がネット上でも強まっています。確かに「ゆがめられた行政がただされた」という大見出しが新聞紙上に掲げられれば、多くの国民が政権に対する印象を好転させていったかも知れません。支持率が高かった時であれば、そのような政権への配慮が働いた可能性もあります。

しかし、そもそも加戸前知事の説明は「加計学園ありき」を裏付けた証言だと見なくてはなりません。行政としての意思決定過程の不透明さが解消された訳ではないため、マスコミの多くが加戸前知事の発言を大きく取り上げていないという見方も特に不自然ではありません。弁護士の郷原信郎さんがブログで『加計学園問題のあらゆる論点を徹底検証する』という記事を投稿しています。その記事の中で加戸前知事の証言に対し、次のように述べています。

閉会中審査における前愛媛県知事の加戸守行氏の証言と、その後に行われた京都産業大学の「獣医学部開設断念」の記者会見の内容をどう評価するかも問題となっている。これらによって、加計学園をめぐる安倍首相の疑惑が解消されたかのように評価する声もあるが、いずれも、加計学園をめぐる疑惑を解消することにつながるものではない。加戸氏については、愛媛県知事の時代から、今治新都市開発の一環として大学誘致に熱心に取り組んできたこと、同氏にとって獣医学部誘致が「悲願」だったことは、国会で切々と述べたとおりであろうし、教育再生実行会議での同氏の、唐突な、いささか場違いとも思える「獣医学部新設問題」への言及からも、誘致への強い熱意が窺われる。

しかし、加戸氏は、獣医学部の認可を求める側の当事者、政府にとっては外部者であり、政府内部における獣医学部新設をめぐる経過とは直接関係はない。また、「愛媛県議会議員の今治市選出の議員と加計学園の事務局長がお友達であったから、この話がつながれてきて飛びついた」というのも、今治市が加計学園の獣医学部を誘致する活動をする10年以上前の話である。その後の誘致活動、とりわけ、前川氏が「加計学園に最初から決まっていた」と思える「行政の歪み」があったと指摘する2016年8月以降の経過に、安倍首相と加計理事長の「お友達」の関係がどのように影響しているのかとは次元の異なる問題である。

また、長年にわたって誘致活動を進めてきた加戸氏の立場からは致し方ないことのようにも思えるが、同氏の話にはかなりの誇張がある。愛媛県知事時代の「鳥インフルエンザ、口蹄疫の四国への上陸の阻止」の問題を、公務員獣医師、産業担当獣医師の数が少ないことの問題に結び付けているが、加戸氏自身も認めているように、上陸阻止の手段は、船、自動車等の徹底した消毒であり、獣医師の「数」は問題とはならない。獣医師が必要になるとすれば上陸が阻止できず感染が生じた場合であろうが、実際には、四国では鳥インフルエンザも口蹄疫も発生していない。

また、加戸氏が長年にわたって今治市への獣医学部誘致の活動をしてきた背景には、知事時代に今治市と共同して進めた新都市整備事業で予定していた学園都市構想が実現しておらず、土地が宙に浮いた状態だったという事情があったことを加戸氏自身も認めている。獣医学部誘致に今治市民の膨大な額の税金を投入することを疑問視する市民も少なからずいることを無視して、獣医学部誘致が「愛媛県民の、そして今治地域の夢と希望」と表現するのは、現実とはかなり異なっているように思える。結局のところ、加戸氏の国会での発言は、政府の対応を正当化する根拠にも、前川氏の証言に対する反対事実にもなり得ないものであり、加計学園をめぐる疑惑に関しては、ほとんど意味がないものと言える。

ネット上で他にも『“加計ありき”の証拠が続々! でも安倍応援団は「加戸前愛媛県知事の証言で疑惑は晴れた」の大合唱、そのインチキを暴く!』『加戸守行氏は間違っている』『閉会中審査でのやり取りを自民党に軍配を上げるネトウヨたちの異様性 国会軽視の安倍自民党』という記事にも目を通していました。 ただ立場の異なる方々の主張を頭から否定し、辛辣な言葉で対立を煽るような書き方は如何なものかと思っています。いずれにしても加計学園の問題は特区を担当した石破茂前大臣のブログの言葉に尽きるはずです。

私が国家戦略特別区域担当大臣であった平成27年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2015」において示された、「①既存獣医師養成でない構想が具体化し ②ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり ③既存の大学・学部では対応が困難な場合 ④近年の獣医師需要動向も考慮しつ全国的見地から本年度内に検討を行う」との、4条件ブラス「全国的見地」に適合する公正・公平な決定であったかどうか、それが問われるべきであり、政府はこれを明確に立証すればよいのです。4条件が満たされ、全国的見地から必要とされれば、提案主体がどこであろうと認めなくてはなりませんし、その逆もまた然りです。

私自身の問題意識は「李下に冠を正さず」「もう少し加計学園の話」で綴ってきました。週明けには衆参両院の予算委員会で閉会中審査が予定されています。加戸前知事のような説明で疑惑は晴れるという姿勢で安倍首相らが臨んだ場合、与野党の論点はかみ合わないような気がしています。キーパーソンと目されている参考人には「記憶にない」という言葉を発しないという誠実さを期待したいものです。ちなみに最近、石破前大臣が掲げた4条件を巡り、自民党内で下記のような軋轢があったようです。

自民党石破派は、同党幹事長室が学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題を巡る産経新聞の連載記事を所属全議員にメールで送ったことに抗議した。同派の平将明衆院議員らが21日、記者会見で明らかにした。17日付の記事によると、石破茂元幹事長は地方創生担当相だった2015年9月、日本獣医師会幹部に「(獣医学部新設条件は)誰がどのような形でも現実的には参入が困難との文言にした」と説明したとされる。幹事長室は20日、「ご参考」として一連の記事を送信した。平氏は会見で「石破氏が獣医学部新設を阻止したような印象を与える。党内対立をあおるような形でメールを出すのは不適切だ」と批判。同派の古川禎久事務総長は「この記事が党の見解だと誤解を招く恐れがある」と撤回を要求した。古川氏は20日、党幹事長室を訪れたが、二階氏は訪米中。【毎日新聞2017年7月21日

新規記事のタイトルを「マスコミの特性と難点」としながら加計学園の問題の記述が膨らんでしまいました。たいへん長い記事になっていますので、そろそろまとめなければなりません。マスコミからの情報に限らず、情報の受け手側のリテラシーを鍛えていくことがたいへん重要です。マスコミやSNS、それぞれの特性や難点を的確に理解した上、一つの経路からの情報だけを鵜呑みせず、意識的に幅広く多面的な情報に触れていくことが強く求められています。より望ましく、より正しい「答え」を見出すためには欠かせない心構えだろうと考えています。

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