2020年5月23日 (土)

時事の話題、いろいろ思うこと Part2

前回記事は「時事の話題、いろいろ思うこと」でしたが、たった1週間で状況が大きく変わっています。よりいっそう個人的な思いが募る週末を迎え、「Part2」として書き進めています。

検察庁法改正案を束ねた国家公務員法改正案の今国会での成立を見送るという判断が明らかにされたのは月曜のことでした。さらに週刊文春のスクープによって、渦中の人物だった黒川検事長が辞職するという事態に至っていました。

東京高検の黒川弘務検事長(63)は21日、緊急事態宣言発令下の1日と13日に新聞記者らと賭けマージャンを行ったことを認め、辞表を提出した。22日の閣議で承認される。安倍晋三首相は黒川氏の辞表提出について記者団に対し、「首相として当然責任がある。批判は真摯に受け止める」と語った。

これを受け、政府は後任の人選に着手し、名古屋高検の林真琴検事長(62)の起用を軸に最終調整に入った。林氏は黒川氏と司法修習同期で、早くから将来の検事総長候補と目されてきた。黒川氏をめぐっては、1月末に検事長としての勤務延長を閣議決定。法解釈を変更する異例の手続きを取って黒川氏を重用してきただけに、辞任は政権にとって大きな打撃となる。

首相は新型コロナウイルス対策に全力を挙げ挽回を図る考えだが、求心力の低下は避けられない情勢だ。黒川氏は21日、「緊急事態宣言下における私の行動は緊張感に欠け、軽率に過ぎるものであり、猛省している」とするコメントを発表した。森雅子法相は、黒川氏の勤務延長を決めたことに関し、「閣議請議をしたのは私なので、責任を痛感している」と記者団に表明。黒川氏を訓告処分としたことも明らかにした。

法務省は衆院法務委員会理事懇談会に黒川氏に関する調査内容を報告。黒川氏は賭けマージャンだけでなく、記者側が用意したハイヤーを費用を支払わずに利用したことも認めた。黒川氏に関しては、内閣の判断で検察幹部の定年延長を可能とする検察庁法改正案が同氏の人事を後付けで正当化するものとして野党が批判を強めていた

政府・与党は同改正案の今国会成立を断念。秋の臨時国会での仕切り直しを目指すが、黒川氏の辞任は今後の議論に影響を及ぼしそうだ。21日発売の週刊文春は、新型コロナに対応する緊急事態宣言が発令され、外出自粛が求められる中で黒川氏が賭けマージャンを行ったと報道。野党からは首相や法相の責任を問う声が上がっている。 【JIJI.COM2020年5月21日

いろいろな思いが錯綜し、どこからコメントすべきか迷うほどです。まず何よりも国会審議で黒川検事長の名前が連日取り沙汰され、まして緊急事態宣言のもと様々な行動が規制されている中、重責のある方が極めて軽率な行為を重ねていたことにたいへん驚いています。

懲戒処分ではなく、退職金の減額等を伴わない監督上の措置としての訓告処分にとどまったことも意外でした。6千万円以上と見られている退職金が一切受け取れない「懲戒免職でもおかしくない」という声も耳にしています。

金曜の衆院法務委員会で、賭けマージャンは違法であることを前提としながらもレートが千点百円だったため、法務省の刑事局長は「社会の実情から見て必ずしも高額とは言えない」と答えていました。つまり訓告処分にとどめたことの理由の一つとして説明しています。

このあたりの問題意識について以前の記事(農水省の「ヤミ専従」疑惑)の中で、場合によって個々の案件に対して法律の解釈や運用面において社会通念上の幅があることを記していました。今後、厳格化をはかっていくのであればマージャンの楽しみ方を見直すべき人たちは相当な数に上るのではないでしょうか。

確かに懲戒免職では重すぎるのかも知れませんが、訓告処分が妥当だったという話にはつながりません。国家公務員倫理法でマスコミ関係者は利害関係者に当たらないと規定されています。それでも「職務の公正さを疑われるような接触は厳に慎むべきである」とも記されています。そのため、特定のマスコミ関係者と頻繁にマージャンを重ねていたことの問題性を軽視できません。

さらに緊急事態宣言下での問題行動であり、たいへんな信用失墜行為だったと言えます。そのような問題性が重なり合っているため、これまでの実績等を加味したとしても戒告以上の懲戒処分に至らなかった点が意外でした。「2月に定年を迎えさせておけば…」という温情や内情を熟知した当事者を追い込みすぎないための政治的な配慮が働いたのではないかと疑われかねません。

この問題を受け、安倍首相は特例的に定年延長を閣議決定したことについて「厳正なプロセスを経て請議がなされたと思っております」と述べた上で「法務省そして検察庁において、この人事について請議がなされた訳でありますが、最終的には内閣として決定を出しますので、総理大臣として当然責任があると考えております。ご批判は真摯に受けとめたいと考えております」と語っていました。

これまで様々な場面で安倍首相から「総理大臣として責任がある」「ご批判は真摯に受けとめたい」という言葉が数多く発せられています。他にも「丁寧に説明していきたい」という常套句がありますが、そのような言葉の後、何か具体的な対応や変化があったという記憶はありません。そのため、残念ながら重い言葉の中に「軽さ」を感じ取ってしまいがちです。

同じ日、検察庁法改正案について問いかけられ、安倍首相は「公務員制度改革にあたっては、国民の皆様の意見に耳を傾けることが不可欠であります。国民の皆様の理解なくして前に進めることはできないだろうと思います。そんな中で参議院の世耕幹事長もご自身の考えを述べられた訳でありまして、社会的な状況も厳しい状況にある。この法案を作った時とは状況が違っているのではないかと述べておられ、党にもそうした意見があるとも承知しております。そうした面も含めて検討していく必要があると考えています」と答えていました。

世耕幹事長の発言に違和感を抱いていましたが、その発言を受け、安倍首相まで「公務員の定年延長が国民から理解を得られない」という話を持ち出したことに本当に驚きました。検察庁法改正案と国家公務員法改正案などを一本化した「束ね法案」そのものを廃案にするという方針を耳にして、あまりにも身勝手な論点のすり替えにあきれています。

そもそも問題視されていたのは内閣や法相が必要と判断すれば、検察官の定年が最長3年延長でき、63歳の役職定年制も例外となるという規定です。検察は準司法機関という位置付けがあり、例外規定を一般の国家公務員と同じように設けることの問題性が指摘されていました。検察官も含め、国家公務員の定年を65歳まで延長することに反対意見が目立っていた訳ではありません。

数年前から公務員の定年延長の話は取沙汰されていました。公務員の制度を変更する際、いつも二通りの考え方が浮上します。民間に比べて公務員は優遇されているという批判を避けるため、先走った変更は控えるという考え方があります。その一方で社会全体の流れを作るため、公務員の制度を先行して変更していくという考え方もあります。

上記は3月末に投稿した記事「定年を迎える週に思うこと」の中の一節です。2月には「定年延長の話」という記事を投稿し、進展する少子高齢化による労働力不足を補うため、政府主導のもと70歳までの雇用延長が課題になっていることを記していました。これまでは使用者側に対して65歳までの安定的な雇用確保が求められていました。

今後、高年齢者雇用安定法が改正された場合、70歳までの雇用確保が「努力義務」として求められるようになります。このような動きの中で国家公務員の定年延長が法案化されていました。もし公務員が先行することに大きな批判を受けるのであれば、それはそれで後発になることも仕方ないのかも知れません。

しかし、検察庁法改正案に向かった強い批判を避けるため、公務員やその組合へ批判の矛先を誘導するような意図があった場合、たいへん残念な振る舞い方だと言わざるを得ません。最近の報道によれば安倍首相自身、黒川検事長の定年延長も、検察庁法改正案の例外規定に関しても主体的に判断していなかったようです。

前回記事の中で、評論家の八幡和郎さんの『検察定年法、混乱の全真相』という記事に「黒川検事長の定年延長が森雅子法相の判断である」と書かれていることを紹介していました。ただ私自身の感想として森法相や法務省だけの判断で、官邸の関与があったかどうかは読み取れなかったことも書き添えていました。

すると今朝の読売新聞には「(黒川検事長は)菅官房長官を筆頭に官邸の覚えはめでたく」と伝え、官邸主導で東京高検検事長に昇格したという話が掲げられていました。さらに昨年末以降、検事総長の後任人事にも官邸が強く関与していることも綴られています。このような動きを生々しく伝えられるのは首相側近の官邸官僚からリークがあったのかも知れないと推測してしまいます。

週刊朝日のオンライン限定記事『「懲戒免職でもおかしくない」検察庁先輩の忠告を聞かなかった黒川元検事長の自業自得』には「黒川氏を『法務顧問』と言っていた菅官房長官」という話をはじめ、何人もの検察庁関係者が黒川氏に「政治と近づきすぎるな、もう辞めろ」と進言したところ黒川氏は苦笑いして「(安倍政権が)辞めさせてくれない」「他に人がいないそうです」と語っていたという話まで掲げられています。

「余人をもって代えかだい」と評価されていた黒川前検事長ですが、趣味のマージャンから致命傷を負ってしまいました。特に問題のない行動だと考えていた場合も、それとも発覚するはずがないものと考えていた場合も、社会的な影響に対する想像力の欠如や危機管理の甘さが厳しく問われる行為だったと言えます。

最後にもう一つ、やはり非常に驚いた時事の話題を紹介します。新型コロナウイルスに感染して自宅待機中に県から休業要請されているパチンコ店に3時間も、その利用者が金沢市議会議員という報道に接し、耳を疑いました。黒川前検事長も同様ですが、それぞれギャンブル依存症という視点でとらえることも必要なのかも知れません。

新型コロナウイルスに感染し、自宅待機を求められていた金沢市議会議員が19日、県から休業要請が出されていたパチンコ店を利用していました。議員は取材に対し「安易な気持ちで動いてしまい、非常に判断がよくなかったと反省している」と話しています。金沢市議会の松村理治議員(69)は19日午後2時ごろ、県から休業要請が出される中で営業していた市内のパチンコ店を訪れ、3時間程度、利用していたということです。

議員は先月、新型コロナウイルスへの感染が確認されて入院し、今月7日に退院しましたが、医師から2週間程度の自宅待機を求められ、この間にあった市議会の委員会を欠席していました。松村議員は取材に対し「緊急事態宣言が解除され、パチンコ店の休業要請も解除されたと勘違いし、中の状況が気になり、入ってしまった。議員という立場なのに、安易な気持ちで動いてしまい非常に判断がよくなかったと反省している」と話しました。議員辞職については否定しました。【NEWS WEB2020年5月21日

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