2017年1月21日 (土)

配偶者控除や扶養手当の見直し

このブログは週に1回、土曜か日曜に更新しています。コメント欄も土曜と日曜に限って対応し、難しい問いかけは記事本文を通してお答えするように努めています。そのため、コメント欄との絡みから当初予定した新規記事の題材を差し替える時が多くなっています。今回の題材も昨年末に投稿を予定したものであり、紹介する新聞記事の内容の鮮度が少し落ちているかも知れません。それでも「配偶者控除見直し」というキーワードをネット検索した際、愛媛新聞の社説『配偶者控除見直し迷走 「壁」取り除く政治の責務果たせ』が現在の状況や論点を分かりやすく解説していたものだったため、下書きに残していた当該の記事をそのまま掲げさせていただきます。

廃止から拡大へ。2017年度税制改正の焦点だった所得税の「配偶者控除」の見直しが迷走している。安倍政権が力を入れる「働き方改革」の目玉政策のはずが、また掛け声倒れに終わりかねないことを危惧する。政府税制調査会が、所得税改革の中間報告をまとめた。専業主婦世帯などの所得税額を軽減する配偶者控除について「見直しが適当」と明記はしたが、当初意気込んでいた「廃止」案は早々に断念。代わりに、控除になる配偶者の年収要件を現行の「103万円以下」から「150万円以下」程度に引き上げ、控除を残して適用対象を広げる案を軸に、今日から詰めの検討を始めるという。

55年前に創設された配偶者控除は、パートで働く主婦らが控除の年収要件を意識して労働時間を抑える「103万円の壁」を生じさせ、女性の働き方を制約しているとされる。既に20年前には共働き世帯が専業主婦世帯数を上回っており、時代に合致しない税制の柔軟な見直しは喫緊の課題には違いない。今回は配偶者控除を廃止し、共働き世帯に恩恵が及ぶ「夫婦控除」への転換が検討された。だが税収減を避けようと他で補う「税収中立」を目指せば幅広い世帯が負担増になるため、過去の見直し議論同様、選挙への影響を心配する与党内がまとまらなかった。

「所得税大改革の柱」(自民党の宮沢洋一税制調査会長)と大見えを切りながら抜本見直しに至らなかったことには、失望を禁じ得ない。現行制度を逆に拡充する形で上限を引き上げても、結局「別の壁」に変わるだけ。どの年収水準で線引きするかといった小手先の数字合わせに終わっては改革の意義は失われよう。加藤勝信働き方改革担当相は「家庭での配偶者の貢献をどう評価するべきかという議論もある」と述べた。しかし、現実には共働きでも多くの女性が家事負担を担っており、育児や介護も含めた多様な「貢献度」を、国が税制で決めつける制度は決して望ましいとは言えない。「女性の就業拡大を促す」という目的にしても、税だけでは限界がある上、「労働力確保」「成長戦略ありき」では進むはずもない。

旧態依然の与党内の考えをまず改め、多様な支援策を整えつつ、個人の生き方に中立的で、格差是正や税の再分配に資する改革を求めたい。中間報告はまた、企業の「配偶者手当」の見直しも求めた。経団連は来年の春闘で会員企業に要請する方向。女性の就業調整への影響は手当の方が大きいとの指摘もあり、減額して浮いた原資を子育てや介護手当に振り向ければ、より必要な人に届きやすくなろう。単なる人件費削減、年収減で終わらぬよう、丁寧な制度設計が欠かせない。男女や就労形態を問わず、働きたい人が働きやすくなるよう「壁」を取り除くことこそが、政治の責務。一つの控除に透ける、その姿勢を注視したい。【愛媛新聞2016年11月21日

ブックマークしている朝霞市議会議員の黒川滋さんのブログ「きょうも歩く」では「11/17今検討されている配偶者控除の見直しは身分的特典となる改悪です」という記事を投稿されていました。その中で「元々は、不合理な配偶者控除の全面廃止が課題だったはずのこの話が、いつの間にか配偶者控除の拡大が検討されて、かつてあった配偶者特別控除の復活、つまり女性はいつまでも従の立場で働きに出ることを固定化させる話になっています」と批判されていました。

前々回記事「働き方改革の行方」の中で掲げていましたが、働き方改革実現会議が検討している9項目のうちの一つが「働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備」でした。そもそも配偶者控除を廃止するだけで女性の社会進出が劇的に進むのかどうかは疑問です。控除の壁がなくなり、もっと働きたいと希望しても必ずフルタイムの勤務形態に移れるのかどうか、まして希望したからと言って容易に正規雇用になれるものではないはずです。

配偶者控除が廃止された場合、結果として世帯収入だけを減らす見直しに繋がっていたのかも知れません。結局、控除になる配偶者の年収要件を現行の「103万円以下」から2018年から「150万円以下」に改める法案が提出される運びとなっています。これまで年収103万円の壁によって、年末に近付くと収入の額を調整するパートの方々が増えています。企業によっては毎年11月から12月の時期、パートの方々のシフトを組むのに苦慮している現状が見受けられます。

このような現状を解決するためにも、壁を103万円から150万円に改めることが望まれていたのではないでしょうか。「選挙への影響を心配する与党内がまとまらなかった」という話もどうかと思いますが、「女性の活躍」が非正規雇用の枠内での勤務時間拡大という見直しにとどまりかねないことを憂慮しています。紹介した黒川さんのブログでの批判をはじめ、愛媛新聞が「掛け声倒れ」と指摘しているとおり配偶者控除の見直しは迷走していたと言わざるを得ません。

いずれにしても配偶者控除見直しの動きが安価な労働力確保という企業側の思惑に偏った目的に陥らないよう留意していかなければなりません。さらにドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の中で女性の家事労働に焦点が当てられましたが、「女性の就業拡大を促す」が家事労働を軽視した発想に繋がりかねないことも問題です。それこそ愛媛新聞の「多様な支援策を整えつつ、個人の生き方に中立的で、格差是正や税の再分配に資する改革を求めたい」という言葉がそのとおりだろうと思っています。

愛媛新聞の社説の最後のほうでは企業の配偶者手当見直しにも触れています。配偶者控除の年収要件が引き上げられても配偶者手当があることで、働く時間を変えないほうが世帯として有利であれば女性の就労を促進できません。昨年8月に「人事院勧告の話、インデックス」を投稿していましたが、その記事の中で綴ったとおり公務員の賃金や手当に大きな影響を及ぼす人事院勧告で配偶者手当の削減が示されていました。

妻の就業意欲をそぐという指摘があり、安倍首相が見直しの検討を求め、人事院は政府の要請に応えるかたちで配偶者手当をはじめとした扶養手当の見直しの勧告に至っていました。このような動きは第三者機関としての人事院の役割を損ねるものであり、民間企業の支給実態から乖離した拙速な見直し勧告でした。その時に投稿したブログ記事の中でも次のような問題意識を書き添えていました。

親の介護などの事情で働きたくても働けないような場合、配偶者手当の削減は世帯収入を純減させるだけの結果を招きます。さらに税金の控除や社会保険の被扶養者等の支給要件そのものが女性の就労抑制の一因となっているという見方も疑問です。今回の配偶者手当削減も女性の就労促進の一環として考えられているようですが、果たして「女性活躍」に向けた実効ある方策に繋がっていくのかどうか分かりません。まずは雇用環境の全体的な改善をはじめ、待機児童や介護離職の対策が先行した上で、ライフスタイルの多様さを保障していく方向性が求められているはずです。

上記のような問題意識は基本的に変わっていません。しかしながら人事院勧告と同様、東京都人事委員会も扶養手当の大幅な見直しを勧告していました。そのため、賃金改定交渉の中で扶養手当の見直しが大きな争点となっていました。年末までには決着に至らず、年が明けた先週水曜夜に扶養手当の問題で団体交渉を再開しています。もともと私どもの扶養手当の額は都より上回っていたため、この機会にすべて都と同じ額に改めたいという意向を市側は強く持っています。

しかし、地域手当に関しては都が20%に対し、私どもの市は12%であり、たいへん大きな開きがあります。したがって、組合は都と必ずしもすべて同じではない点を指摘しながら扶養手当の見直し協議に臨んできています。とは言え、たいへん残念ながら公務員全体の制度として扶養手当の抜本的な見直しが進む中、私どもの市だけ配偶者手当の額を今までと同じ水準で維持していくのは難しい現状であることも認めざるを得ません。

したがって、水曜夜の団体交渉で、組合は配偶者手当を引き下げた原資を子の額に積むという人勧等の趣旨を踏まえれば最低限、子に関しては独自な上積みをはかるべきと強く主張しています。それに対し、市側は子の手当を手厚くしていく社会的な流れも理解しているが、都を上回る自治体が見当たらない中、独自な上積みは難しいと釈明しています。今後、決着期限を1月末とし、子の額を最大の争点として労使協議を進めていくことになっています。組合員の皆さんには組合ニュースでもお伝えしていきますが、このブログでも取り急ぎ取り上げさせていただきました。

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