2026年4月11日 (土)

高市総理に願うこと

前回記事「新年度に入り、多忙な日々」の冒頭でも、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃に関わる緊迫した情勢について触れていました。何とか2週間の停戦が合意され、とりあえず安堵したところですが、次のような報道のとおり予断を許さない緊張状態が続いています。

米国とイランの戦闘終結に向けた協議が11日、仲介国パキスタンの首都イスラマバードで開かれる。トランプ米大統領が停戦の条件としたホルムズ海峡の即時開放が実現しない中、事態打開に向けて双方が歩み寄れるかが焦点となる。イランはレバノンが停戦対象から除外されているのは合意違反だと反発しており、予定通りに協議が開催されるか予断を許さない状態だ。

米国はバンス副大統領が代表団を率い、スティーブン・ウィトコフ中東担当特使、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が参加する。イランはモハンマドバゲル・ガリバフ国会議長、アッバス・アラグチ外相らの出席が見込まれる。米側は協議が現地時間11日午前に開始予定と説明している。

米国とイランで合意した2週間の停戦は、双方の主張が食い違い、揺らいでいる。停戦合意がレバノンに適用されるかどうかを巡り、「含まれない」と主張する米イスラエルに対し、イラン側は合意違反と反発。ホルムズ海峡の「再封鎖」に言及するなど揺さぶりをかけている。協議では停戦の認識をすりあわせ、着実な履行に向けた方策を話し合うとみられる。

米側は敵対関係を終わらせるための包括的な合意を目指している。最大の要求はイランの核開発計画の放棄だ。第1次トランプ政権は2018年、イランの核開発を制限する合意から一方的に離脱した。今回はそれに替わる、より強力な合意を交わしたい考えで、ウラン濃縮の完全停止や核施設の解体などを要求しているとされる。

イランが事実上封鎖しているホルムズ海峡の扱いも議論される見通しだ。トランプ氏は9日、自身のSNSで、封鎖状態が続く海峡について「我々の合意とは違う」と不満を示した。イランが船舶から通航料金を徴収している「報道」があるとし、「あってはならないし、もしそうなら今すぐやめるべきだ」と主張した。【読売新聞2026年4月10日

今回の記事タイトルは「高市総理に願うこと」としていますが、イラン情勢を巡る問題は極めて密接な事例として取り上げていくことになります。少し前の記事「高市総理のカタログギフトの問題」で伝えているとおり当ブログでは「誰が」ではなく、「何が」問題なのか、具体的な言動や事例を指摘した上で「批判ありき」ではない丁寧な説明を加えていくように心がけています。

例えば、このブログでは安倍元総理に対する批判的な論評を数多く投稿してきています。それでも率直に評価すべき点は肯定的に綴っていました。より望ましい「答え」を見出すためには「誰が」に重きを置かず、二項対立的な発想は避けるべきものと考えているからでした。

2月に投稿した記事「36年ぶりの真冬の総選挙 」の中では「総理の座に返り咲いた第2次政権以降、安倍元総理は中国との関係をそれまでよりも柔軟な対応ぶりに変えていたように受けとめています」と評価し、中国に対しては頑なな姿勢を貫きがちな高市総理との違いを記していました。

2019年6月、 トランプ大統領の要請を受け、安倍元総理は緊迫するアメリカとイランとの関係の仲介役としてイランを訪問しています。現職の総理大臣としては1978年の福田赳夫元総理以来41年ぶりで、1979年のイラン革命後は初めてのことでした。日本とイランとの伝統的友好関係を活かし、緊張緩和と武力衝突回避をめざした訪問でした。

今回、パキスタンが仲介役として2週間の停戦合意などに尽力しています。『「日本の船舶はホルムズ海峡を通過させるよう調整」イラン駐日大使が語る―戦争を終わらせるために友好国・日本に求めること』(読売テレビ)という報道のとおり本来であれば、1953年の「日章丸事件以降イランと友好関係を築いてきた日本ならではの役割を発揮して欲しいところでした。

高市総理が安倍元総理を信奉されていることは有名な話ですが、決定的に異なる資質が浮かび上がりつつあります。ディリー新潮の『高市首相と「安倍元首相の側近」大ゲンカが勃発! 官邸の内幕をレポート「秘書官たちは、総理を支える気がなくなっている」』という見出しの記事の内容が衝撃的です。

側近とは内閣官房参与の今井尚哉氏のことです。経産省出身の今井氏は安倍元総理の懐刀として知られ、総理秘書官や総理補佐官を歴任し、内政のみならず外交の重要政策にも関与して「影の総理」と評されてきました。

その記事の中で、先月の日米首脳会談を前に高市総理がトランプ大統領への手土産として、ホルムズ海峡に自衛隊派遣を行なう腹積もりだったことを伝えています。それを知った今井氏が総理執務室に怒鳴り込んで猛反対し、激論の末に派遣は見送られていました。この結果に高市総理は恨み節を吐き「つらい」と弱音を漏らしながら退陣をほのめかしたことまで記されています

これまでも今井氏は高市総理に対し、昨年秋の台湾有事を巡る存立危機事態の総理答弁の明確な軌道修正を求め、アメリカによるイラン攻撃が発生した直後には首都テヘランに特使を派遣して親書を渡すよう進言してきたそうです。しかし、高市総理から一切無視されていることを今井氏は嘆かれていました。

安倍政権時代から一貫して今井氏は自らの意見をハッキリ主張し、政策判断に関与するタイプの人物だったそうです。安倍元総理は聞く耳を持っていましたが、高市総理は強い意見をぶつけてくる人物を好まず、ことごとく今井氏の進言を黙殺し、邪険に扱ってきているようです。その記事では、秘書官ら官邸官僚とまったく会話がないことも伝えています。

FRIDAYデジタルには『”令和の女帝” 高市早苗首相  ″能面の笑顔″に隠された「不安と孤独」』という見出しの記事がありました。高市総理が同僚議員や官僚とあまり交流、話さないのは自身の能力や知識レベルを知られることを懸念しているのではないかという辛辣な見られ方もささやかれ始めています。

より望ましい「答え」を見出すためには幅広い情報や考え方に触れていくことが欠かせません。そのような意味で、高市総理には今井氏の進言や部下である秘書官らの声にも率直に耳を傾けて欲しいものです。2年前の記事「総理をめざす政治家に望むこと」の最後には次のように記していました。

総理をめざす政治家に対し、「あらゆる人を “敵” と “味方” に分断する政治」とは真逆な政治的な姿勢や立場性を望んでいます。寛容さであり、包摂さです。自分自身の「答え」の正しさに自信を持っていたとしても、異なる考え方や立場も認め合いながら、最適な「答え」を見出す努力を尽くして欲しいものと願っています。

今回、自衛隊のホルムズ海峡への派遣を見送った判断は妥当だったはずです。日本のトップリーダーに上り詰め、衆院選挙に大勝した高市総理に直接苦言を呈せる人物は希少化しています。したがって、今井氏が内閣官房参与を更迭されないよう願わざるを得ません。

長い記事になっていますが、もう一つ、高市総理に願うことを書き添えなければなりません。正直であって欲しいという当たり前な願いです。高市総理は総務大臣時代「私の放送法に関する発言が事実だった場合は議員を辞める」と述べながら事実を裏付ける公文書が見つかると、その文書は「捏造」だと決め付けていました。

高市総理の「捏造」という見方を支持された方々も皆無ではなかったようですが、つい最近、既視感のある報道に接しています。高市総理はXで「参議院予算委員会の集中審議に応じない意向を示していた」と伝えられていたことなどを「事実とまったく異なる報道が増え過ぎている」と批判していました。

ただ関与を否定している「サナエトークン」の問題をはじめ、高市総理は一方通行となるXでの情報発信にとどめ、記者会見を開くなどして公に説明を行なう場は設けていません。高市総理が一貫して正直に事実関係を説明しているのであれば、このように疑惑の目を向けてしまうことは甚だ失礼なことだと猛省しなければなりません。

しかし、最近の報道全般に言えることですが、火のない所に煙は立たないという言葉があります。さらに朝日新聞の記者だった政治ジャーナリストの鮫島浩さんのブログ『高市首相、SNSでブチギレ!でも本当にヤバい報道はスルーした理由』に綴られている「反論できる案件だけを選んで否定」という見方のとおりだとも言えます。

紹介した鮫島さんのブログの最後に「高市政権は、総選挙で大勝し、高い支持率を維持している。外から見れば盤石に映る。しかし、その内実では、党内の不満や官邸内の緊張が蓄積しているとの指摘も少なくない」と書かれています。そのような現状だったとしても、高市総理がトップリーダーである限り、最適な「答え」を出し続けて欲しいものと願っています。

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