2018年4月22日 (日)

JR東労組の組合員が大量脱退

前々回記事「突然、横田基地にオフプレイ」のコメント欄には様々な論点の提起や指摘がありました。まずnagiさんからの直接的な問いかけにお答えするため、前回は「放送法第4条撤廃の動き」という記事を投稿しました。今回も前々回記事のコメント欄で示されていた話題を踏まえ、新規記事を書き進めさせていただきます。

4月10日、「東洋経済ONLINE」のサイトに『JR東労組、組合員2.8万人「大量脱退」の衝撃 民営化から30年、大きな転機を迎えている』という記事が掲げられました。この動きに対し、組合が政治活動に関わっているため、大量脱退に至ったという見方を示したコメントが寄せられていました。下っ端さんからは「管理人さんはあれこれ理由を述べていますが、結果は出ましたね。そして、この流れは確実に他の組合にも波及することでしょう」という指摘を受けています。このようなコメントに対し、取り急ぎ私から次のようにレスしていました。

組合と政治との関係性は下記の記事などを通して、私なりの「答え」を明らかにしています。その「答え」が下っ端さんらからは賛同を得られないため、今回のような問いかけが続くこともやむを得ないことだと考えています。したがって、機会を見て改めて取り上げていくべき論点だろうとも認識しています。

下記の記事とは「自治労の4つの目的」であり、私なりの「答え」の詳細はリンク先の記事をご覧いただければ幸いだと考えていました。ただ「機会を見て」と記しながら、あまり間を置かないほうが望ましい題材であり、今週末に投稿する新規記事で取り上げることとしました。たいへん長い記事でしたが、まず「東洋経済ONLINE」のサイトに掲げられていた全文をそのまま紹介させていただきます。

JR東日本(東日本旅客鉄道)の最大労働組合「東日本旅客鉄道労働組合」(JR東労組、以下労組)に異変が起きている。今年2月中旬以降、この1カ月余りの間に約2万8000人もの組合員が脱退しているというのだ。今年1月時点では約4万6000人(社員の約8割が加入)もいた組合員が半減以下になるという、かつてない異常事態だ。昨年、30周年を迎えたJR東日本。ほぼ同時期に発足した労組。30年を節目に労使関係は大きな転換期を迎えている。

スト権行使の予告がきっかけ

大量脱退のきっかけとなったのは、労組による「スト権行使」の予告だ。労組関係者によると、昨年2月の臨時大会でスト権を確立した労組は、今年の春闘では「格差ベアの永久根絶」を求め、2月19日にスト権行使を予告。これは、本来の業務以外の研修などに参加しない「非協力スト」の予告だったが、要求が認められない場合は指名された組合員が業務を拒否する「指名スト」も計画していた。

労組の言う「格差ベア」とは、個々人の基準給の何%という定率での定期昇給を指す。この定率方式では組合員の給与格差が拡大していくとの理由から、すべての組合員一律に同じ金額にする「定額ベア」を求めていた。しかし会社側は20日、この労組の要求を拒否。「争議行為を実施することは、お客様にご心配や迷惑をかけ……また労使共同宣言の精神を否定するもの」として、争議行為の中止を申し入れた。同時に、経営幹部による職場訪問を順次実施。大量脱退が始まったのはこの時期からだ。

そして26日に労使対立が決定的になる。社長名で「労使共同宣言の失効」を労組に通知したのだ。この「労使共同宣言」は、1987年8月に締結され、その後2001年8月の第4次「21世紀労使共同宣言」まで3回再締結されている。ストライキによらず平和的手段で紛争を解決することを労使間で確認する内容。会社側は今回の事態によって、「会社との信頼関係を破棄し、『労使共同宣言』の趣旨・精神を否定」「すでに失効したものとみなさざるをえない」とした。

昨年まで4年連続でベア

労組側の動きに疑問を抱く関係者は少なくない。今回の要求は「格差ベアの廃止」だったが、その交渉手段としてスト権を立てる必要が本当にあったのか。実はJR東日本は昨年まで4年連続でベアを実施している。組合員の平均年収は600万円を超える水準。「いわば高給取りが、さらに高い給料を求めてストを実施し、お客様に迷惑をかけることなど到底認められない」。ある労組関係者はそう憤る。

そもそもJR東日本には、ストに対して大きなアレルギーがある。スト権は憲法で認められた労働組合の重要な権利。だが、旧国鉄は争議行為を連発して利用者が離反、それがもとで経営破綻に追い込まれた経緯がある。労組関係者の間では、労組の委員長、会長、顧問など、長きにわたり事実上のトップだった松嵜明氏(故人)が提唱した「いつでもたたかえる体制」を具現化する動きだったという見方がある。松嵜氏は革マル派(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)創設時の副議長でもあった人物だが、その松嵜理論に回帰する動きではないか、というのだ。

今回は、労組の上部団体「JR総連」が1990年にスト権を確立しようとした動きに似ているとの指摘もある。しかし、ある労組OBは「松嵜時代は結局、一度もスト権を確立していない。松嵜氏が言う『いつでもたたかえる体制』とは、スト権を指しているのかどうか」と疑問を呈する。別の労組元幹部は「今の執行部にはストの経験がない。組合員の多数意見を無視して、経験のないことをやろうとしてもダメだ。結局、読みを間違ってしまった」と指摘する。

組合員からは労組に対する不満の声も聞こえてくる。毎月給料から天引きされる組合費は「基本給×2.2%」で、年2回のボーナス月を含む14カ月分が徴収される。基本給30万円の場合、年間9万2400円。1カ月で7700円の計算になる。組合員平均は8000円程度で、上限はないという。一方、JR連合系のJR東海(東海旅客鉄道)は基本給30万円なら月5600円(上限は6000円)、JR西日本(西日本旅客鉄道)では月6500円(上限7000円)だ。

おカネの問題だけではない。休日にもかかわらず勉強会だ、デモだと駆り出され、参加しないと批判される。開かれる大会もJR総連のスローガンが色濃く反映されることがある。「憲法改悪反対」「安保法制廃止」「仲間とたたかい抜いた国鉄改革を再検証し・・」。確かに平和主義は大切なことだが、一部の組合員からは「これって労組?」と疑問の声も聞かれた。

平成29年版「治安の回顧と展望」(警察庁警備局)では、「革マル派が相当浸透しているとみられる」として、JR総連と労組は警察庁・公安調査庁の監視対象となっている。会社との対立が表面化していた今年2月23日には、参議院議員の質問に対して、政府が答弁書を閣議決定。「労組内には、影響力を行使し得る立場に革マル派活動家が相当浸透していると認識している」とした。

妥結後も組合員の脱退が止まらない

結局、スト権は行使されなかった。会社側は3月16日に、基本給に0.25%を乗じた額という定率ベアを回答(ほか初任給の引き上げなども実施)。一律定額ベアではなかったものの、労組側は「大きな成果を勝ち取る」「基準内賃金平均1328円の改善」と評価、即日妥結した。「労組側の主張はこの間、微妙に変わっていった」と会社側は振り返る。ただ、労組側には「大きな成果」と言わざるをえない事情があったのかもしれない。組合員の大量脱退は、労組側に大きな衝撃を与えたようだ。

止まらない組合員の脱退に対して労組は3月9日、会社側から組合員に対して脱退を働きかける不当な行為があったとして、各都県の労働委員会に不当労働行為からの救済を申し立てている(東京、八王子、水戸の各労組地方本部)。この申立書は、経営幹部が職場訪問を始めた直後から脱退者が出たと指摘。非協力ストは通常業務に影響を与えるようなものではないのに、あたかも列車運行に支障を来すかのような虚偽の喧伝をした、勤務時間内に個別に面談し、脅しと利益誘導で脱退を強要したなどとも申告している。会社側は「こうした事実はない」と否定している。

職場では組合員の不安・動揺が広がっており、ベア妥結後も「組合員の脱退は同じペースで続いている」(会社側)。4月12日、労組は35回目となる臨時大会を開催する予定だ。一方、会社側は、4月末に36協定(時間外・休日労働に関する協定届)が期限を迎える。そのため、事業所ごとの人数の把握とその代表者の確認など、運行に支障が起こらないよう対応に追われている。大量脱退の余波はまだ続きそうだ。

あらかじめ申し上げなければならないことがあります。他の産別組合の内情について詳しく知らない外部の立場から踏み込んだ論評は避けなければなりません。加えて、たいへんな局面を迎えている当該の組合役員の皆さんに対し、他産別の組合役員が「評論家」のような意見や感想を漏らすことは失礼なことに当たるものと考えています。

その上でメディアが取り上げ、インターネット上から把握できる上記の情報をもとに今回の記事を書き進めていくつもりです。下っ端さんの「この流れは確実に他の組合にも波及することでしょう」という指摘が現実化しないよう「対岸の火事」としない機会として、私なりの問題意識を綴ってみます。その際、客観的な事実として、私どもの組合の現状とJR東労組との違いを紹介していくことになります。

まず「対岸の火事」と記しましたが、オープンショップ制の労働組合にとって他人事にはできない憂慮すべき事態だと見なければなりません。「自分の組合はそうならない」とは決して言い切れないものと考えています。「組合は絶対必要。だから加入するのは当然」と思われている組合員の皆さんばかりではない現状が少なからず進んでいるのではないでしょうか。

組合によって差があるのかも知れませんが、「組合に入っているメリットが感じられない」という声が潜在化しているはずです。そのように思っていても組合を脱退しない大きな理由は「皆が入っているから」であり、組合に入っていないと「職場の中で少し浮いた存在になってしまう」という意識があるため、踏みとどまっている方も少なくないように見ています。

そのため、今回のJR東労組のような事態が生じた際、それこそ絶好の機会として脱退を考えた方々が続出してしまったのではないでしょうか。加入するかどうか本人の自由意思となるオープンショップ制の場合、どこの組合も大なり小なり抱えているリスクだろうと思っています。このようなリスクがあることを組合役員側は認識し、組合活動はどうあるべきかという自問自答を重ねていかなければならないはずです。

組合が政治活動に関わるから大量脱退に至ったという指摘を受けていましたが、切っかけは労働条件の改善を求めたストライキ予告でした。以前「ストライキ批准投票」という記事を投稿し、「ストライキは決行することが目的ではありませんが、労働組合の切実な要求を前進させるためには有効な手段であることも事実です」と記し、「一方で、バスや鉄道など公共サービスを提供する労働組合のストライキは地域社会に及ぼす影響もはかり知れません」とも綴っていました。

さらに組合員の中には「ストライキの配置自体が問題だ」とする見方から「ストライキも構えず、妥協するのか」というような対照的な意見があることも紹介していました。今回、JR東労組が労働条件向上のため、労働組合としての本来の趣旨に沿った「伝家の宝刀」を抜こうとした結果、大量脱退の事態に至っていることを非常に悩ましい構図だと感じています。

結局は脱退するタイミングを見計らっていた組合員が多かったという現状だったのかも知れません。私どもの組合費は常勤職員の場合、基本給の1.3%で上限が3,500円(別途自治労共済掛金300円)ですので、比較的低額な水準です。政治活動に関しては当ブログを通して情報を発信しているとおり一定の方針化をしているため、JR東労組の事態を踏まえて足元を検証していく機会につなげなければなりません。

たいへん長い記事になりつつありますので少し駆け足な記述となってしまいますが、政治活動も「組合員のため」につながることを目的に方針化しています。ただ「組合員のため」と説明しても、その関係性の共通理解が不充分であれば組合執行部と組合員との信頼関係を高めていくことは困難です。さらに万が一、ある特定の団体や政治家のためになることを第一義的な目的として組合活動が展開され、貴重な組合費が投入されるようであれば重大な問題だろうと思っています。

一定の範囲で必要とされている組合の政治活動とは言え、組合員の政治意識が多様化している中、例え組織的な手続きがはかられていたとしても運動の押し付けは避けなければなりません。「なぜ、取り組むのか」という呼びかけを基本とし、組合方針に対する理解を高めていくことに組合執行部側は注力すべきだろうと考えています。

「東洋経済ONLINE」の記事には「休日にもかかわらず勉強会だ、デモだと駆り出され、参加しないと批判される」と書かれています。そのようなことが事実だった場合、組合費を払いながら自分自身の意図に反した行動を休日にまで強要されるものであり、脱退する機会をうかがっていた組合員が相当数に上ることも分かるような話だと言えます。

JR東労組の関係者の方に直接確かめることなく、報道されている内容をもとに個人的な感想を掲げてしまいました。事実誤認があった場合はたいへん申し訳ありません。あくまでも一般論の話として、労働組合の政治活動について私自身が日頃から留意している点について一言添えさせていただいています。

実は私どもの組合も以前は「職場動員」という仕組みがあり、テーマを問わず学習会や反基地の集会などに各職場から割り当てた人数の参加を要請していました。このような組合執行部からの要請に対し、しっかり割り当てられた人数を送り出すことに努力されていた組合役員や職員委員も少なくありませんでした。その結果、嫌々参加していた組合員や参加しないと批判されていたケースも多かったかも知れません。

なお、すでに労働委員会に提訴されているようですが、経営幹部の職場訪問と組合員の大量脱退が関連しているのであれば不当労働行為そのものです。事実であれば、このような経営側の動きは絶対認められるものではありません。今回のスト権行使に関して組合員との意思疎通に問題があったのかどうか、組合執行側も反省すべき点は反省しなければなりませんが、経営側の対応も焦点化すべき重大な問題だと考えています。

思っていた以上に書き始めると書き残したい内容が頭に浮かび、まとまりのない記事内容となって恐縮です。いずれにしても組合員の皆さんから「組合は絶対必要」と思われ、組合費の負担に見合った日常活動が評価され、一定の政治活動の必要性に対する共通理解を進めることが重要な時代になっているものと受けとめています。

かなり前の記事「組合に入らないデメリットは?」に寄せられたichiさんからの「組合なんてあってもなくても一緒なんじゃないの?」という問いかけを意識した内容まで広げるつもりでしたが、ここで今回の記事は区切りを付けさせていただきます。疑問を持たれている皆さんに対し、スッキリ氷解できるような内容ではなく、論点自体がかみ合っていない点があるのかも知れません。

それでも分かり合えなくても 基本的な考え方や立場の異なる者同士が率直に意見交換できる機会は大切なことだと考えています。私自身、記事本文を通し、立場の異なる皆さんから「なるほど」と思っていただけるような言葉を探しています。ぜひ、このような関係性についてもご理解いただきながら、また何か指摘したい点がありましたらお気軽にコメント投稿をよろしくお願いします。

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