2017年6月25日 (日)

20時完全退庁宣言

前々回記事「もう少し加計学園の話」の冒頭に「そろそろ政治の話から離れた身近な職場課題を取り上げるつもり」と記しながら、前回も政治の話(いわゆる「共謀罪」成立)でした。金曜日には東京都議会議員選挙が告示され、7月2日に投票日を迎えます。政治の話題は尽きない時期ですが、今回は久しぶりに職場課題を取り上げます。ただ少しだけ自民党を離党した女性代議士の「絶叫暴言」報道に関わる話に触れさせていただきます。

リンクをはった先のサイトに自民党の「魔の2回生」の問題が紹介され、中選挙区時代を知る自民党重鎮の「小選挙区制は大嫌い。振り子のように振れるから育つ人も育たないし、追い風が続くと淘汰されるべき人も淘汰されない」と苦い表情で語っていることが掲げられています。都議選は1人を選ぶ選挙区と複数名当選する選挙区が混在していますが、その時々の国政の動きなどを反映した「風」が選挙結果に大きな影響を及ぼしたケースも少なくありません。

地方自治体の選挙とは言え、注目を集める選挙であればあるほど直近の民意が都議選の結果に影響を与えることも必然です。しかし、「魔の2回生」と揶揄されるような「追い風」頼みの都議会議員が誕生していくことだけは避けなければなりません。そのためには有権者一人ひとりが、各候補者の属性よりも候補者自身の主張や資質を吟味していく心構えが重要です。特に都民ファーストの会という新たな政治勢力が登場しているため、これまで以上にそのような心構えが求められているものと考えています。

さて、本題から離れた話だけで3段落費やしてしまいましたが、今回のブログ記事を書き進めるにあたって『週刊朝日』の記事『都庁、電通でも悲鳴が…働き方改革の裏で「ジタハラ」が急増中』に注目していました。その記事の内容はネット上で調べてみたところ「アエラドット」から閲覧できるようになっていました。リンク先のサイトに飛ばれる方は少ないものと思いますので、たいへん長くなりますが掲げられていた全文をそのまま紹介させていただきます。

「ジタハラ」なる言葉をご存じだろうか?時短ハラスメント、つまり労働時間短縮にまつわるハラスメント(嫌がらせ)を指す新しい造語だ。多くの企業が時短に踏み切る昨今、ジタハラに苦しむ従業員の増加を懸念する声があがっている。なぜ時短が労働者を苦しめるのか?2015年12月、電通の新入社員・高橋まつりさん(当時24)が過労自殺した事件を機に、「時短」に踏み切る企業が相次いでいる。渦中の電通は、昨年10月から全館22時消灯を宣言。同時期に、東京都庁が小池百合子都知事の鳴り物入りで20時完全退庁を開始したことも記憶に新しい。

「そのころから、長時間労働を是正したいという企業からの相談が急増しました」 こう言うのは、経営コンサルタントの横山信弘氏(株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長)だ。「時短の相談は昨年の秋から増え、以前の5倍くらいになっています。長時間労働の問題じたいは何年も前から言われていますが、電通の事件以降、あまりにメディアが騒ぐので、経営陣も動かざるを得なくなったのでしょう」 横山氏によると、このような状況が「ジタハラ」の増加を招くのだとか。たとえば、企業が「残業禁止」という方針を打ち出せば、管理部門は現場にそれを徹底させようとする。

しかし現場では、残業をしなければ仕事が終わらない。仕事が終わらなければ、当然のことながら顧客に迷惑がかかる。にもかかわらず、残業しようとすると、上司や管理部門から「帰れ、帰れ」と責めたてられる──このように時短を強要しプレッシャーを与える行為がジタハラだという。「今、多くの企業が時短を推進していますが、残念ながら、管理部門は現場の状況をわかっていないことが多い。そのため、仕事が回らなくて現場がパニックに陥るというパターンが増えています。

責任感の強い真面目な人ほど、『帰れ、帰れ』と言われることをプレッシャーに感じます。精神的に追い詰められ、うつ病に発展するケースも出てくるでしょう」(横山氏) 今回の働き方改革で政府は労使協定により残業は月60時間までを上限としているが、経団連は繁忙期のみ月100時間上限を認めるよう主張。3月28日の働き方改革実現会議(議長・安倍晋三首相)では、残業規制は繁忙期の上限を「2~6カ月平均でいずれも月80時間」とすることなどを定めた。このような状況で、時短に踏み切る企業が増えているのは、連合にとって良いニュースと思えるが?連合東京の組織化担当・古山修氏に聞いた。

「今盛んに行われている時短は、一見、悪しき慣習を是正する動きのように見えますが、そうとは限りません。労働基準監督署がうるさいから、あるいは企業イメージが良くないから、見せかけとして残業を減らしているだけという企業も多い。単に残業を削減するだけでは、本当に長時間労働を是正することにはつながりません」 時短にするだけで人員を増やさなければ、仕事はたまる一方だ。となると、従業員は仕事をこっそり家に持ち帰り「隠れ残業」をするか、早朝勤務をするしかない。それでは長時間労働が是正されたとは言えないし、隠れ残業は情報流出のリスクが大きい。そのリスクを避けるために、企業はアウトソーシングを増やすことが予想される。

「下請け業者に外注するのであれば、時間外労働も何も関係なく、いくらでも働かせられます。企業側が従業員にやみくもに『帰れ、帰れ』と言うのは、アウトソーシングを増やし、最終的には雇用関係をなくすためではないか、と私には思われてなりません。『働き方改革』という名のもとに、正社員を減らす政策と結局は同じです」(古山氏) 安倍政権の働き方改革は、「副業などダブルワークを良しとすることで正社員を減らす政策」だと古山氏。正規雇用を減らす代わりに非正規雇用や個人事業主が増えるが、彼らの立場では交渉力が弱く、長時間労働を押しつけられかねない。結局、「長時間労働の温床になる」と警鐘を鳴らしているのだ。

では、時短を進める企業では何が起こっているのか。Tさん(52)の勤める金融系リース会社では、数年前から時短を取り入れている。それまでは毎日21~22時まで残業していたのだが、労基署の監査が入ったことをきっかけに、20時以降は原則残業禁止となった。「時短になると聞いたときは、早く帰れてラッキーと思いました。が、実際に始まると大変でした。明日までにやらなければならない仕事があるのに、帰れと言われるのです。仕事がどんどんたまっていき、お客さんとのアポを延期してもらうという、本来あってはならないこともしていました。当時は周りもみんな同じで、時短なんてやめて残業させてほしいと思っていましたね」(Tさん)

しかし、3カ月もすると20時退社のペースに慣れてきた。仕事の優先順位を考えて、無駄な作業を極力排除したのだ。たとえばお客さんのところへ4回顔を出していたのを3回にする。自分がしなくていい仕事は人に代わってもらった。昨年10月から「20時退庁」に踏み切った東京都庁でも、総務部などに懸念の声が寄せられている。「午後8時を過ぎたら15分おきに消灯されるので、都議会の資料作成などで仕事が山のように増えても残業できなくて困る」「クオリティーはある程度犠牲にせざるを得ない」「早朝出勤や休日出勤が増えないか懸念」「年度後半は業務量が大幅増になるので継続が心配」 

同じく1年前から定時退社を導入したある企業は、サービス残業、休日出勤、持ち帰り残業も厳禁という徹底ぶりだったが、社員によると、残業できなくなったからといって増員されることはなかった。「上司は時間内に終わらせられるように配慮して指示を出さなければならなくなり、部下にたとえばプレゼン用に三つ案を作れとは言えなくなった。部下からも提案が減り、最低限、言われたことしかやらなくなる。皆で意見を出し合うミーティングは時間がかかるので廃止となり、コミュニケーションが悪くなった」(関係者) 終わらない仕事は、アウトソーシングにすればひとまず解決かと言うと、そうでもない。連合東京の古山氏はこう言う。

「本人が好きでやっている仕事であれば、部分的にアウトソーシングをすることでモチベーションが下がってしまいます。仕事というのは、楽しければ長く働いても疲れません。楽しく仕事をしている人間にとって、『帰れ』と言われるのはつらいものです。また、本人にしかできない仕事もあり、物理的にアウトソーシングが不可能という場合もあります」 確かに、自分に任されたプロジェクトは最後まで責任を持ってまっとうしたいと思う人が多いだろう。そういう仕事の「やりがい」の面を無視するのも、ジタハラの一種と言えそうだ。前出のTさんが言う。「切りの良いところまで仕事ができないのは非効率的と感じます。提案書を書いている途中で時間切れになると、翌日、また一から考え直さなければならない。かえって時間がかかってしまいます」

メディア、広告会社などクリエーティブな要素のある仕事は、単純に時間で区切ることができない。「突然、22時消灯に踏み切った電通の現場は、おそらく今パニック状態に陥っているのではないでしょうか」(横山氏) 古山氏もこう指摘する。「かつては、企業によって研究職の人を自由に遊ばせておくという風土がありました。そうすると、画期的なアイデアが生まれることがある。世紀の発見とか大ヒット商品の発明などといったものは、時間に縛られていては生まれません。こういう仕事は、賃金体系から見直す必要があります」一方で、労働時間の長さでしか成果を測れない仕事もある。

「店舗スタッフや事務作業員、物流スタッフなどは、働いた時間の分だけ加算されるという考え方の仕事です。そういう仕事をする人たちは、残業代で収入を保っている面があるので、残業削減などしてほしくない。これが時短が進まない大きな理由のひとつです」(横山氏) 長時間労働は、賃金体系の差や個々人の意識の差などが複雑に絡んだ根深い問題なのだ。時短を進めるにしても、すべての従業員に一律に適用するのではなく、個々の仕事内容や状況に合わせて斟酌するのが理想と言える。(ライター・伊藤あゆみ)【週刊朝日2017年4月14日号抜粋

これまで当ブログでは昨年10月に電通の高橋まつりさんの事件を取り上げた「電通社員が過労自殺」以降、「働き方改革の行方」や「36協定について」など長時間労働に関する記事を投稿していました。それらの記事を通し、36協定は締結そのものが目的ではなく、重要な目的は労働者が健康を害さないよう長時間労働を規制するためのものであるという点を綴っていました。使用者側だけの都合による恣意的な時間外労働を防ぐための制度であり、36協定を締結していても電通のような実情に至ってしまっては論外な話です。

決められたルールを職場の中で守っていくという当たり前な意識を使用者側も労働者側も徹底し、36協定を実効あるものにしていくためには労働組合を有名無実化させないことが重要であることを記してきました。『週刊朝日』の記事に掲げられているとおり東京都では昨年10月から20時完全退庁を始めています。都庁職員からは「帰りやすい雰囲気ができた」という肯定的な声がある一方、「仕事が山のように増えても残業できなくて困る」「クオリティはある程度犠牲にせざるを得ない」「早朝出勤や休日出勤が増えないか懸念」という声が上がっていました。

民間企業でも同様な動きがあり、「残業禁止」という方針を打ち出せば現場の管理部門はそれを徹底させようとします。急ぎの仕事があって残業しようとすると上司から「帰れ、帰れ」と責め立てられ、責任感の強い真面目な人ほどプレッシャーを感じがちです。時短を強要する行為をジタハラ(時短ハラスメント)とも呼ばれていることを『週刊朝日』の記事で初めて知りました。このような動きが強まる中、私どもの市でも5月31日に20時完全退庁宣言を行ない、6月から実施に移されています。

残業縮減の具体策を検討してから宣言すべきという意見が幹部の中から示されたようですが、市長には「精神疾患、過労につながってしまう問題」という強い危機感がありました。そのため、まず宣言することで職員の意識啓発に努め、具体的な取り組みは走りながら検討していくという判断に至っていました。5月31日水曜のノー残業デーの就業時間終了後、市長自ら本庁職場を巡回し、時間外勤務縮減の協力を求めるとともに残業中の職員に事情を聞いて回られていました。

そもそも長時間労働の是正は労使でめざすべき共通した課題ですが、この宣言によってサービス残業を増やすような悪影響が出てしまっては問題です。組合は宣言がされる前、5月29日に緊急の申し入れを市当局に行ないました。組合からは本来、すべての職場で完全退庁できる職場体制を確立した後に宣言すべものではないか、この宣言によって時間外勤務の未申請が増えないか、様々な懸念点を訴えました。この申し入れを通し、宣言したから一律に現状を改めることを強要するものではない、都のような一斉消灯は行なわないことなどを確認していました。

通常、労使交渉の窓口は副市長が担当しています。この申し入れの後、市長とも直接話す機会があり、私から「いろいろな意見もありますから」と伝えていました。市長ご自身もそのような声があることを理解され、これからの取り組みが重要であるという認識を共有できました。ちなみに5月末の時点で、組合から今回の問題に絡んだ具体的な要求書を提出することを伝えていました。市当局も職員の働き方改革に関する検討を進めていく際、労使で協議していくことが不可欠であることを認識しています。

20時完全退庁宣言がされ、よりいっそう時間外勤務のあり方が問われる局面を迎え、5月末に発行した組合ニュースの見出しは「20時に完全退庁できる職場体制の確立こそが急務」でした。6月に入ってから発行したニュースでも時間外勤務の問題を大きく取り上げ、働き方改革が「働かせ方」改革になってしまうようでは問題であり、職員一人ひとりの健康を第一に働きがいのある職場をめざすことを記していました。あわせて次のとおり具体的な例示をもとに注意喚起する機会にもつなげていました。

「19時までの残業は残業とは認めない」などという誤った運用があった場合、即刻改めてください。短時間の時間外勤務となった場合、事後でも問題ありませんので必ず実施申請してください。午後8時までの予定が長引いた場合も同様です。翌日以降、実態に合わせた申請をしてください。実施申請しないとサービス残業に該当します。業務に関連した地域団体等との会議や出張も時間外勤務に当たります。必要な旅費等が自己負担だった場合は問題です。このような問題が強いられた場合、ただちに組合まで連絡してください。

先週木曜、6月22日には「時間外勤務縮減に関する要求書」を市当局に提出しました。要求書では欠員による時間外勤務の影響や職場ごとの時間外勤務縮減策の提示を求めています。また、特別時間外勤務申請手続きや代休制度の運用がサービス残業を助長している状況に対し、是正するよう要求しています。日程が調整できれば6月末までに団体交渉を開き、交渉の場での回答を求めています。

都政新報』の取材に人事課長が「実際の仕事がある中で、いかに折り合いを付けていくかが改革の本丸。人事課が先行的に改善策を打ち出すよりもボトムアップで意見を吸い上げ、改革につなげたい」と語っています。問題意識のスタートラインは同じであり、労使協議の本格化に向け、職場実情や各自のライフスタイルを踏まえた組合員それぞれの率直な声の把握が欠かせません。ぜひ、お気軽に組合までご意見や要望をお寄せください。このような労使協議を通し、組合は誰もが20時までに完全退庁でき、健康でいきいきと働き続けられる職場の確立をめざしていきます。

最後に、20時完全退庁宣言に際し、組合が迅速に対応し、市当局に懸念点を率直に申し入れたことが組合員の皆さんから思っていた以上に評価されています。ある組合員の方からは「いつも組合をやめようと考えていたけれど今回のような動きがあると、やっぱり組合は必要だなと思いました」と話していただけました。労働組合の存在感が問われがちな中、たいへん有難い励みとなる言葉を頂戴できたものと考えています。

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