2018年1月14日 (日)

憲法を生かす全国統一署名

年末年始、のんびり読書できる時間が多く取れました。そのうちに読もうと思って買いだめしておいた書籍数冊を読み終えました。その中の一冊に『ヒトラーの試写室』があります。このブログで書籍を紹介する際、よくAmazonのサイトにリンクをはっています。特にアフリエイトしている訳ではなく、いつも検索すると真っ先に目に付くからでした。今回はKADOKAWAがトップだったため、そのサイトにリンクをはっています。

1935年、20歳の柴田彰は活動写真の俳優を夢見るが、大工の父親は猛反対し勘当されてしまった。家を飛び出しオーディションを受けるが箸にも棒にもかからずあえなく挫折。だが、人手不足だった日独合作映画「新しき土」の特殊撮影助手の仕事にありつく。主任の円谷英二の情熱に触れるうち彰も仕事にのめり込み映画は見事に完成。ベルリンにも運ばれ、映画で人心の掌握と扇動を狙っていたナチス宣伝大臣ゲッベルスの心に刻み込まれる。

日本は41年、ついに太平洋戦争に突入。軍部の要請から戦意高揚をねらった映画「ハワイ・マレー海戦」が製作されることになり彰も特殊撮影で参加。この作品もベルリンに運ばれ、丁度イギリスの権威を失墜させる為に映画「タイタニック」を製作したが、どうしてもクライマックスの沈没シーンが上手く撮影できないことを悩んでいたゲッベルスが目をつけ、彰がドイツに招聘されることになる。環境の違いから撮影は苦戦。日本に残した妻子を想う柴田だったが、ベルリンは戦火に……。意外すぎる歴史秘話に基づく、一気読みと感動必至の傑作エンタメ小説。

上記はリンク先のサイトに掲げられた内容紹介です。たいへん面白く、戦争やプロパガンダのあり方などをいろいろ考えさせられる小説でした。『ゴジラ』や『ウルトラマン』で有名な円谷英二監督をはじめ、実名の登場人物が多く、史実から発想されたという興味深いストーリーが展開されます。どこまでが史実で、どこからフィクションなのか、線引きに戸惑うほどリアルティを感じさせる物語だったと言えます。

「すでに80年近く昔の話とはいえ、ネット上に巧妙につくられたフェイクニュースが流布している現在、映像によるプロパガンダは古くて新しい問題だと言える。この物語が単なる歴史を題材にした小説に終わっていないのは、このテーマに今日性があるからだ。」 タカザワケンジ(書評家) (解説より)

「特撮の舞台裏を描くことで戦争の舞台裏を描く、その試みには明らかに「ポスト・トゥルース」に象徴される現代社会の潮流――信じたいものを信じるために、事実に目をつぶる――が反映されている。あるいは、先の大戦を語ることへの過剰な情熱、過剰なフォビア(恐怖症)が渦巻く日本の空気が、ありありと。この小説が2017年の今書かれたことには、意味がある。」吉田大助(ライター)(「本の旅人」2018年1月号より)

上記の文章もKADOKAWAのサイトに掲げられている書評です。なかなか興味深い切り口での話につなげられそうですが、今回のブログ記事はタイトルを「憲法を生かす全国統一署名」としています。したがって、『ヒトラーの試写室』に関しては、ある一場面を紹介するための長い前振りとして位置付け、そこから全国統一署名の話につなげていくつもりです。その一場面とは次のようなものでした。

ゲシュタポ幹部の「中立国のスイスのバーゼルで、ヨーロッパじゅうの記者を集め、会見をおこなう。敵国側の特派員も来る」というセリフがあり、「夕暮れの街並みはドイツによく似ているが、空襲を受けた痕跡はない。ドイツとフランスの国境に限りなく近い場所ときかされたが、中立国には平和がひろがっていた」と綴られていた一場面が目に留まっていました。

敗色濃厚となっていたナチスドイツがプロパガンダ工作のため、中立国であるスイスの地を利用した場面です。スイスは永世中立国として有名です。『ヒトラーの試写室』の中の記述に触れることで第2次世界大戦中、スイスがドイツからの侵略を免れていた事実関係に改めて思いを巡らす機会となっていました。中立国と言っても「我が国は中立政策をとります」と宣言するだけでは実効性が伴いません。

実際、第2世界大戦時に中立国のノルウェーとデンマークはドイツに侵略されました。その時のドイツ外相は「中立国のノルウェー、デンマークを英仏の侵攻から守るために保護占領を行なう」という声明を発していました。以後、中立宣言国に対する武力侵攻の際、洋の東西を問わず、このような詭弁が弄されるようなっていました。

第2次世界大戦中から現在もスイスは中立国を貫くため、軍備を整え、徴兵制が布かれています。大戦中、ドイツに比べればスイスの軍事力は弱小でした。しかしながら「武力侵攻すれば占領は困難ではないが、こちらの損害も大きい。戦争を継続する消耗は避けられず、スイス侵攻は得られる成果が見合わない」というドイツ側の判断が働き、『ヒトラーの試写室』に描かれているような「平和」がスイスには広がっていたようです。

さらに中立国のスイスのような存在は地域全体の利益にかなう場合があります。『ヒトラーの試写室』にあるとおり敵味方を問わない共同記者会見の場所に選ばれています。ただ第2次世界大戦中も中立を貫けたスイスを評価する見方がある一方、ドイツから逃れてきたユダヤ人に対して冷淡な態度を取ったことは批判されています。どちらの陣営にも協力しないという中立国の義務だったのかも知れませんが、人道上の批判は免れません。

中立国は戦争に巻き込まれない代わりに他国に守ってもらうこともできません。時には友好国を見捨てることや人道上の対応を充分発揮できず、国際的な批判を招く場合もあります。しかし、スイス国民がそのような中立政策を選択し、現在も支持しながら努力を重ねている「特別さ」を誇っている国家だと言えます。念のため、今回のブログ記事を通し、スイスのような中立国を日本もめざすべきという主張につなげるものではありません。

それぞれの国の歴史や現状を踏まえ、国柄や憲法が築かれているものと考えています。誇るべき「特別さ」があれば、そのことを効果的にアピールし、国民の利益や国際社会への貢献につなげていければ望ましいことです。スイスが永世中立国として有名であるのと同様、戦争放棄を謳った憲法を持つ日本も国際社会の中で異色な存在だったはずです。その「特別さ」を積極的にアピールすることよりも、残念ながら逆に「特別さ」を削ぐことに力を注ぐ現状から日本は国際標準の「普通の国」に見られていきがちです。

記事タイトル「憲法を生かす全国統一署名」の本題に入る前、前振りがたいへん長くなりました。このブログでは「憲法の話、インデックス」をはじめ、「改憲の動きに思うこと」「改憲の動きに思うこと Part2」など憲法を巡る記事を数多く投稿しています。安倍首相が政権に返り咲いた以降、改憲の動きが現実味を帯びていることも大きな理由の一つです。現在、このような情勢に危機意識を持っている方々や団体が結集し、「安倍9条改憲 NO!憲法を生かす全国統一署名」に取り組んでいます。

安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかけ団体となり、内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長あての請願署名です。署名用紙に記された内容と請願事項2点は下記のとおりです。ブックマークしているブログ「澤藤統一郎の憲法日記」の最新記事『自衛隊違憲論者も専守防衛論者も、ともに「アベ9条改憲NO!」』『「安倍9条改憲NO!3000万署名」推進スタート文京集会』に詳しく綴られていますが、安倍首相が企図している改憲に対して問題意識を持った方々が広く賛同できる署名となっています。

2017年5月3日、安倍晋三首相は突然、「新たに憲法9条に自衛隊の存在を書きこむ」「2020年に新憲法施行をめざす」と述べました。この発言を受けて、改憲への動きが急速に強まっています。戦後70年以上にわたって、日本が海外で戦争をしてこなかった大きな力は憲法9条の存在と市民の粘り強い運動でした。いま、9条を変えたり、新たな文言を付け加えたりする必要は全くありません。私たちは、日本がふたたび海外で「戦争する国」になるのはゴメンです。私たちは、安倍首相らによる憲法9条などの改悪に反対し、日本国憲法の民主主義、基本的人権の尊重、平和主義の諸原則が生かされる政治を求めます。

  1. 憲法第9条を変えないでください。
  2. 憲法の平和・人権・民主主義が生かされる政治を実現してください。

自治労も「憲法を生かす全国統一署名」の取扱い団体となり、私どもの組合も取り組むことを執行委員会で確認しています。組合員の皆さんの政治意識の多様化を踏まえ、この署名活動を本格的に始める際は「なぜ、取り組むのか」「なぜ、安倍首相の進める改憲に反対するのか」という理由を丁寧に説明していく必要性も押さえていました。そのため、再来週に開催する職場委員会の中で、そのような説明を加えた上、組合ニュースで取り上げながら署名用紙を配付していく運びとしています。

その「なぜ」に対する私自身の「答え」は改憲に絡む以前の記事に綴っているとおり詳しく説明することができます。ただ組合員の皆さん全体に周知する際、長い文章よりも端的な言葉のほうが伝えやすいことも確かです。端的な言葉、今回の記事の中で改めて整理してみようと考えていましたが、たいへん長い記事になっていることもあり、もう少し熟考してみるつもりです。機会があれば次回以降のブログ記事を通し、組合員の皆さんに示した端的な言葉を紹介させていただきます。

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